絵本の紹介「葉っぱのフレディ ―いのちの旅―」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもがはじめて「死」を意識するのは何歳ごろでしょうか。

私の場合は、4歳くらいだったでしょうか。

死ぬことの恐怖に取りつかれていた時期があります。

 

何もかもが無に帰すという恐怖。

誰もがいつかは必ず死ぬという事実が受け入れがたく、どうして大人たちは自分よりもいっそう「死」に近いのに、平気な顔で生きていられるのかと不思議に思ったのを覚えています。

 

今回紹介するのは、アメリカの哲学者・レオ・バスカーリアさんが「死」そして「いのち」について子どものために書いた「葉っぱのフレディ ―いのちの旅―」です。

作:レオ・バスカーリア

絵:島田光雄

訳:みらい なな

出版社:童話屋

発行日:1998年10月22日

 

大変話題になった作品ですので、読んだことはなくてもタイトルに覚えがある方も多いのではないでしょうか。

 

大きな木の枝に生まれた葉っぱのフレディ。

同じ葉っぱ仲間のダニエルたちと一緒に、春、夏、とても楽しく過ごします。

やがて秋が来て、葉っぱは紅葉します。

そしてだんだんと寒くなり、ダニエルは、

引っこしをする時がきたんだよ

ぼくたちは ひとり残らず ここからいなくなるんだ

と告げます。

フレディはその言葉に衝撃を受けます。

ぼくはいやだ! ぼくはここにいるよ!

 

しかしとうとう冬が来て、仲間たちは次々と枝から離れていきます。

死ぬのが こわいよ

というフレディに、ダニエルが語ります。

 

まだ経験したことがないことは こわいと思うものだ。でも考えてごらん。世界は変化しつづけているんだ。変化しないものは ひとつもないんだよ

死ぬというのも 変わることの一つなのだよ

自分は生まれてきてよかったのだろうか、とフレディは尋ねます。

ダニエルは深くうなずき、これまでの楽しかったこと、幸せだったことを肯定的に語ります。

 

フレディは、静かに枝から離れて地面に落ちます。

フレディは雪解け水に混じり、土に溶け込んで、木を育てる力となるのです。

 

★      ★      ★

 

この絵本では、「自然は変化しつづける」こと、「いのちは永遠に生きている」ことなど、東洋の輪廻転生的な死生観を展開していますが、「死」「生きる意味」というのは哲学の永遠のテーマであり、ここに書かれたようなことは、先人たちの膨大な思考作業のほんの一部に触れているに過ぎず、「答え」などと呼べるものではありません。

 

これは自分の人生を「考える」きっかけです。

 

実際に死の恐怖に怯えている子どもが、この短いおはなしを読んで、すぐにそれを克服するようなことはないと思います。

自分自身の経験から考えれば、それはもっと長い物語を必要とします。

 

言葉は時に、長い熟成期間を経なければ、その真の意味に到達できないことがあります。

 

何年もかけて、様々な経験をしてから、ふと「あの時の言葉の意味」に気づく。

そんな風にして、人は成長していくのでしょう。

 

そのためには、自分の心の土を耕し、種をまき、水をやり、きれいに整えておく必要があります。

子どもへの読み聞かせは、そうした根気のいる作業だと思います。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

葉っぱに人格があるように見えてくる度:☆☆☆☆

 

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