2024.02.26 Monday
【絵本の紹介】「郵便屋さんの話」【472冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのはカレル・チャペックさんの童話原作絵本「郵便屋さんの話」です。
作:カレル・チャペック
訳:関沢明子
画:藤本将
出版社:フェリシモ出版
発行日:2008年3月21日
カレル・チャペックさんはチェコを代表する劇作家・小説家で、画家・評論家の兄ヨゼフさんと共にチャペック兄弟として広く親しまれています。
「ロボット」という単語の創始者であるともされています。
SFから童話まで様々な作品を残しましたが、彼らが生きた時代は大戦の最中で、チャペックさんは作品内でナチズムを痛烈に批判し、そのためにゲシュタポから敵認定され、狙われたこともあります。
この「郵便屋さんの話」は1932年に発表された童話集の中の一篇に、イラストレーターの藤本将さんが新たに挿絵を書き下ろして出版された絵本です。
主人公のコルババさんは郵便配達人。
このところ自分の仕事にうんざりし始めております。
「毎日、二万九千七百三十五歩も歩かなければならないし」「そのうちの八千二百四十九歩は階段をのぼったり、おりたり」と、具体的な数字を持ち出して嘆くユーモアのあるおじさん。
ある時郵便局で居眠りしてしまい、仲間たちが帰ってしまった夜更けに目を覚ますと、何やら気配がします。
様子を窺うと、そこには郵便局に住む妖精の小人たちが忙しく働いていたのです。
小人たちは仕事が一段落するとカードゲームを始めます。
カードとして用いられるのは郵便局にある手紙。
不思議な遊びに思わずコルババさんは小人たちに話しかけますが、小人たちは悪びれもせずコルババさんをゲームに誘います。
手紙には何の数字も書いてませんが、小人たちは中にある手紙の種類によって札の強さを決めているのです。
一番強いエースは愛情のこもった手紙という風に。
そして小人たちは封を切らなくても中の手紙の内容を温度で知ることができるというのです。
そんなことがあってしばらく後、郵便局に宛名のない手紙が届きます。
差出人も不明で、配達もできないけれど、コルババさんはなんとなくその手紙が温かく感じられ、きっと心のこもった手紙のはずだと思います。
かといって勝手に中を開けることは郵便局員としてやってはならないこと。
そこでコルババさんは小人の助力を頼みます。
小人は封を切らずして中の手紙を読みます。
それは若者が恋人にあてた手紙でした。
若者の名はフランチーク、職業は運転手。恋人の名はマジェンカ。
ただそれだけの手がかりをもとに、コルババさんはこの手紙をマジェンカのもとに届けてあげようと決意します。
長い長い旅を続け、探し回りますが見つかりません。
一年以上も探し回って、疲れ果てたコルババさんが座り込んでいると、立派な紳士が車を止めてコルババさんを送ってあげようと声をかけます。
コルババさんはありがたくその車に乗ります。
そして話をするうち、車の運転手の素性がわかります。
彼こそ探し求めていたフランチークだったのです。
彼は愛する恋人から手紙の返事がこない悲しみに沈んでいました。
そこでコルババさんは手紙を預かっていることを打ち明け、自動車は一路マジェンカの家を目指して走り出します…。
★ ★ ★
冒頭ではいわゆる靴屋の小人的な童話かと思いますが、そうではない。
人生や仕事の喜びについて、人の想いについて、色々なことを考えさせてくれるハートフルなお話です。
コルババさんは実に粋でチャーミングなおじさんですが、そこは藤本さんのイラストの力も大いに作用しています。
センスがあって人物が本当に可愛い。
異国情緒もあり、チェコで描かれた絵本だと言われても違和感がありません。
チェコと言えば絵本大国としても知られており、なおかつチャペックさんのような童話作家も生み出した素晴らしい国です。
まだまだ翻訳されてない名作はありそうですね。
推奨年齢:7歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
一年がかりの配達の報酬が切手代だけのコルババさん男前度:☆☆☆☆☆
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