2023.10.17 Tuesday
【絵本の紹介】「3びきのかわいいオオカミ」【465冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
古典絵本といえば昔話や民話。
昔話や民話のいいところは数々ありますが、著作権が無いこともその一つに数えられると思います。
王道と言われる昔話絵本でも、時代時代の要請に応えて微妙にその形を変えていますし、そうやって変化し続ける性質があるからこそ、長久の時を超えて昔話が生き残り続けられるのだと言えます。
そしてまた、著作権がなく、なおかつ誰でも内容を知っているからこそ様々なパロディを楽しめるのも昔話の特徴です。
今回は大人から子どもまで楽しめる極上のパロディ絵本「3びきのかわいいオオカミ」を紹介します。
文:ユージーン・トリビザス
絵:ヘレン・オクセンバリー
訳:こだまともこ
出版社:冨山房
発行日:1994年5月18日
元ネタは言わずもがな、「3びきのこぶた」です。
このブログでは過去何作かこの王道絵本のユニークなパロディを取り上げています。
上記2作品いずれも作者の独創性や遊び心が満載の傑作ですが、今作はお話の筋そのものに関してはいわゆる逆転ものでして、オオカミとこぶたの役割を入れ替えた内容になっています。
こう書くとさほど特徴的ではないように見えますけど、そのインパクトは他パロディに勝るとも劣らず。
お母さんから独り立ちを促された3びきのかわいいオオカミたちは、レンガで家を作ります。
最初からレンガ。そしてバラバラではなく3びき一緒に暮らします。
そこへ「わるいおおブタ」が通りかかります。
いや、顔。これは悪い。
おおブタはオオカミたちの住居に侵入しようとしますが、レンガ造りの家は息を吹いたくらいでは壊れません。
するとおおブタはハンマーを持ってきて家を叩き壊してしまいます。
この力業。
オオカミたちは逃げ出し、次はコンクリートでさらに頑丈な家を建てます。
おおブタの悪事はさらにエスカレートし、今度は電動ドリルで家を破壊。
次にはオオカミたちは鉄条網や南京錠を使い、さらに厳重なセキュリティハウスを建築。
もはや家と言うより要塞。
それでも諦めないおおブタは、とうとうダイナマイトを持ち出して家を吹き飛ばしてしまいます。
もうめちゃくちゃ。
いくら頑丈な素材で家を作っても、それを超える兵器とのイタチごっこが繰り返されるだけだという現実に、オオカミたちは発想を改め、今度は花で家を作ってみます。
すると今度もやってきたおおブタは、花のいい香りを吸い込んで気分が良くなり、だんだん優しい心になっていき、ついには踊り出します。
改心したおおブタはオオカミたちと仲良くなり、4ひきで幸せに暮らすようになるのでした。
★ ★ ★
おおブタの突き抜けたワルっぷりと破壊行動が面白過ぎる。
ヘレン・オクセンバリーさんによる絵の力も大きいです。
おおブタの表情や躍動感も見事だし、クロッケーやバドミントンに興じるオオカミたちの描写もおしゃれ。
あれだけ極悪非道のワルだったおおブタがあっさり改悛してしまうラストを含めてユーモラスですが、ここには社会から犯罪を減らすためにはセキュリティよりも花々に象徴される人の心の余裕こそが有効なのだというメッセージが見られます。
作者のユージーン・トリビザスさんは作家であると同時に著名な犯罪学者でもあるそうで、なるほどと納得。
それにしてもやっぱりおおブタのインパクトがほとんど持って行ってますけどね。
それもまたよし。
面白ければメッセージは後から伝わります。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆
おおブタの迫力度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「3びきのかわいいオオカミ」
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「400冊分の絵本の紹介記事一覧」
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com