【絵本の紹介】「ふくろうくん」【220冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「おひとりさま」という言葉をよく耳にする昨今。

カラオケでも焼肉でも、一人で楽しもうというある意味前向きな考え方。

 

今回紹介するのは究極の「一人上手」絵本「ふくろうくん」です。

作・絵:アーノルド・ローベル

訳:三木卓

出版社:文化出版局

発行日:1976年11月20日

 

作者は我が家の息子にも大好評の「がまくんとかえるくん」シリーズで有名なアーノルド・ローベルさん。

訳文も同じ三木卓さん。

5話からなる短編集という構成も同じ。

 

≫絵本の紹介「ふたりはともだち」

 

でも、温かい交流が描かれる「がまくんとかえるくん」とは違い、この「ふくろうくん」は孤独です。

脇役さえ登場しません。

最初から最後まで独りぼっち。

 

そんな孤独をユーモラスに楽しむふくろうくんの優雅な日常……と言えば聞こえはいいのですが、彼の思考と行動ははっきり言ってかなり病的です。

家のドアを叩く風の音を、「ふゆくん」が入りたがっているんだな、と解釈して迎え入れてやった結果、吹雪に家じゅうをめちゃくちゃにされてしまう「おきゃくさま」。

 

布団の中で盛り上がる自分の足を「へんな こんもりくん」と呼び、その正体を探して半狂乱になる「こんもり おやま」。

悲しいことを次々に思い浮かべ、その涙でお茶を沸かす「なみだの おちゃ」。

 

一階と二階、異なる空間に同時に存在することはできないか」という哲学的思索に取り憑かれて、猛スピードで階段を上り下りする「うえと した」。

夜空に浮かぶお月様が、ずっと自分についてくる「いい ともだち」だと感動してみせる「おつきさま」。

 

分厚い本を手に、蝋燭をかがける表紙絵のふくろうくんの目が、ちょっぴり怖く思えるのは私だけでしょうか……。

 

★      ★      ★

 

普通なら考えもしないようなことを、どこまでも深く考える哲学的姿勢。

そして突飛な行動を大真面目にやってしまう可笑しさは、「がまくん」にも通じるものですが、「がまくん」が「かえるくん」によっていかに救われているか、この絵本を読むとよくわかります。

 

これは「一人を楽しむ」なんて生易しい表現では追いつかないと思いますが、しかし一方、誰だって一人の時には、こういう妙なことを考えたりしてるのかもしれません。

 

他人の前で同じことをやってたら、すぐに病院に連れて行かれそうなふくろうくんですが、「一人だからこそ」気兼ねなしにこういう「遊び」ができるとも取れます。

 

ふくろうくんが病的に思えるのは、この絵本において彼が「子ども」としては描かれていない(私の印象ですが)からです。

もしふくろうくんが子どもなら、こういうどこまでも広がってしまう、まとまりを欠いた思考にふけったり、実際に行動したりすることはごく自然でもあります。

 

けれど、ふくろうくんは一人で生活している点で子どもではない。

ゆえに「変人」に見えてしまうわけです。

 

しかし、歴史的な哲学者や科学者たちは、このふくろうくんのように、普通の大人がもう考えもしなくなったようなことをどこまでも考え抜くことを止めなかった人々なのでしょう。

彼らはやはりどこか孤独ではありますが、その孤独は崇高な光を帯びてもいます。

 

それは「幼児性」ではなく「童心」を抱いたまま大人になった人間だけが纏う種類の「孤独」であるように思います。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

天才肌度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ふくろうくん

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「パイがふたつあったおはなし」【215冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久しぶりに名作「ピーターラビットの絵本」より、私も息子もお気に入りの一冊を紹介しましょう。

パイがふたつあったおはなし」です。

作・絵:ビアトリクス・ポター

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1988年6月25日

 

昨年、ピーターラビット展へ行き、そのレビューや第一作「ピーターラビットのおはなし」についての記事を書きました。

作者のポターさんの生涯などについても詳しく触れておりますので、ぜひそちらも併せてお読みください。

このシリーズの魅力について語り出すと、いつまでたっても絵本紹介に辿り着けないので。

 

≫「ピーターラビット展」に行ってきました。

≫絵本の紹介「ピーターラビットのおはなし」

 

この「パイがふたつあったおはなし」は、息子にとって(そして私自身にとっても)初めて触れたポターさんの世界です。

「ピーターラビットの絵本」は、作者の生まれ育ったイギリスの田園風景を舞台に、そこで生活する様々な動物を描いた作品です。

作品ごとに主人公は変わりますが、ピーターやこねこのトムのように複数の作品に登場するキャラクターも大勢います。

 

この絵本では「ダッチェス」という黒い犬と、「リビー」という猫を中心に物語が展開されますが、リビーは「ひげのサムエルのおはなし」にも登場した、こねこのトムのおばさんにあたるキャラクターです。

シリーズを読み進む上で、こういう人物相関図が出来上がってくるところも、ピーターラビットの絵本の楽しみのひとつでしょう。

 

さて、「パイがふたつあったおはなし」は、64pもあり、小さい子に読み聞かせるにはなかなか長い物語です(だから、初めて読んだ時に息子が最後まで聞いたことに驚きました)。

 

それに、難しいんですね。

文章自体は易しいんですが、「含み」がたくさんある。

ダッチェスとリビーの、表面上は上品で丁寧な会話の裏を、自分の想像力で補わなければ、このお話は読めません。

自分で本が読めるようになった子どもでも、古典的な児童書を手に取ったことがなければ、ちょっと読解に苦しむかもしれません。

 

しかしそれだけに、大人が読んでも面白い物語です。

ユーモアと、そしてちょっとした皮肉とからかいが込められた、よく出来た落語のようなお話です。

 

それでは内容を読んでいきましょうか。

ダッチェス(♀)のもとに、リビー(♀)からお茶会の招待状が届くところからお話が始まります。

とてもおいしいものを ごちそうします」と書かれたその手紙に、ダッチェスは「よろこんで、4じ15ふんに おうかがいいたします」と返事をしたためます。

 

けれど、ダッチェスは内心、リビーが用意しているのが「ねずみのパイ」ではないかと気が気ではありません。

実はダッチェスも、リビーを招くつもりで、「小牛とハムのパイ」を用意していたのです。

 

ねずみのパイなんて、とても とても たべられない! でもたべなくちゃ! およばれなんだもの

ああ、あたしのパイが たべたい! ねずみのパイなんかじゃなくて!

 

ダッチェスは葛藤を繰り返した末に、ある計略を思いつきます。

それは、リビーが出かけている隙を狙って、自分のパイをリビーのオーブンに入れてきてしまうという大胆なもの。

 

リビーが自分ではそのパイを食べないつもりらしいこと、パイ皿もダッチェスのとおそろいであること、リビーがマフィンを買いに出かけるであろうことなどを、手紙から読み取っての策です。

一方、リビーはねずみのパイをオーブンに入れます。

そのオーブンは二段式になっており、パイを入れた下の段は、開けるのに力がいるのです。

 

そうして部屋をきれいにしてから、リビーは自分が食べるマフィンを買いに出かけます。

途中、ダッチェスとすれ違いますが、会釈だけで会話はしません(話はこれからお茶を飲みながらするからです)。

 

さあ、ダッチェスはリビーの姿が見えなくなるや、一目散にリビーの家に駆けて行き、侵入し、オーブンの上の段に持参してきたパイを入れます。

しかし、ダッチェスはオーブンに下の段があることに気が付かず、リビーのパイを見つけることができません。

 

そうしてるうちにリビーが帰ってきて、ダッチェスはねずみのパイを始末できないまま、退散します。

リビーは家の様子が変だと思いつつも、ダッチェスのパイには気が付きません。

 

ダッチェスは改めてリビーの家を訪問します。

そこでダッチェスは、リビーがオーブンからパイを出す瞬間を見逃してしまいます。

さあ、ダッチェスは自分のパイだと思い込んでねずみのパイを食べ始めます。

とても上品に会話を交わす二人ですが、二人とも食欲は旺盛。

特にダッチェスはあっという間にパイを平らげてしまいます。

 

しかし、ダッチェスは妙なことに気が付きます。

自分が入れておいたはずの焼き型(パイが型崩れしないように入れておく金属)が出てこないんですね。

 

リビーの方は「焼き型なんか パイにいれては ありませんよ」と言います。

リビーの親類のおばさんは、クリスマスのプディングに入れる「幸運の指ぬき」を呑み込んで死んだので、自分はパイやプディングに金気のものは入れないのだ、と主張(また出ました、ピーターラビットシリーズにおける事故死ネタ)。

 

これを聞くとダッチェスは自分が誤って焼き型を呑んでしまったのだと思い込み、唸り出します。

リビーの方では焼き型なんか最初から入ってない、と言い、ダッチェスは何しろ自分のパイだと信じてるわけですから、確かに焼き型が入っていたのだ、と言い、不毛なやり取りが繰り広げられます。

 

気分が悪くなってしまったダッチェスに、リビーは医者を呼びに行きます。

一人残されたダッチェスは、オーブンの音で、焼き上がった自分のパイに気づきます。

真相を理解したダッチェスは、「こんなこと とても きまりわるくて、リビーには はなせない」と思い、自分のパイは裏庭に出しておいて、後で持って帰ることにします。

 

やがてリビーが「カササギ先生」を連れて帰ってきます。

この先生が実にぶっ飛んだキャラクターでして、喋ることは何故か「ばきゃたれ」とか「うすのろ」とか、悪い言葉ばっかり。

(表向きは)上品なリビーとダッチェスと、誠に対照的です。

 

ダッチェスはもう具合が良くなったから、と逃げるようにリビーの家を後にし、それから例のパイを回収しに裏庭へ回ります。

ところが、パイはカササギ先生が食べてしまった後でした。

 

ダッチェスは自分のしたことが恥ずかしくなり、うちへ駆けて帰るのでした。

 

★      ★      ★

 

このシリーズの魅力は「現実とファンタジーの究極の結合」にあると以前の記事に書きましたが、ここでもダッチェスたちは動物としての特性は保ったまま、実に人間臭く描かれています。

 

この物語の核は登場人物たちの「本音と建て前」です。

ダッチェス、リビー、タビタはそれぞれ表面上は仲良く、上品に振る舞っていますが、所々で本音を覗かせます。

これはお高く止まった上流階級の婦人たちの社交生活を皮肉っている点で、鳥獣戯画のような可笑しみを生んでいますが、ポターさんの筆には辛辣さはほとんど感じられません。

 

むしろ、登場人物に対するあたたかみすら感じられるのですね。

考えてみれば、リビーたちのような「本音と建て前」は、社会で生きて行く上で、誰しもが使い分けているところかもしれません。

 

その人間理解とリアリティゆえに、この話は「難しい」わけです。

はっきりとした悪人が出てきたり、わかりやすい教訓が示されるわけではないからです。

 

そしてやっぱり、絵の美しいこと。

花でいっぱいのダッチェスの家は素敵だし、リビーはおしゃれだし。

タビタさんは割と登場回数の多いキャラですが、彼女の子どもたち(トム、モペット、ミトン)は、今回は絵のみの登場となります。

 

トムたちの出てくるお話も大変面白いので、いつかまた取り上げたいと思っております。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

カササギ先生には診てもらいたくない度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「エルズワース 犬になった犬」【214冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はちょっと変わった犬の絵本を取り上げます。

エルズワース 犬になった犬」。

作・絵:ジョン・アギー

訳:なだいなだ

出版社:ミキハウス

発行日:1988年11月20日

 

ポップな色使いと丸みを帯びたキャラクター造形。

とても可愛らしい絵です。

 

しかしその内容はちょっと普通の絵本とは違います。

ある意味哲学的なのですが、全然深刻さはなく、ユーモアたっぷり。

でもナンセンスな悪ふざけ絵本なのかと言えば、わりと深い。

 

子供服ブランドのミキハウスは、こうしたちょっと毛色の違った絵本を出版しています。

 

まず、主人公のエルズワースという犬は本文にもある通り、「ふつうの犬ではなくて」、なんと大学でケイザイガク(経済学)を教えています。

スーツ姿で自転車通勤の途中、スタンドで経済新聞を買うエルズワース。

洗練された都会の知識人たる彼は、トチモンダイイインカイ(土地問題委員会)では座長を務め、周囲から尊敬を集めています。

 

本人もまんざらではないのですが、エルズワースには秘密がありました。

実は、ひとたび家に帰れば、犬としての本能を抑えきれなくなり、まるっきりの犬になってしまうのです。

猫をおっかけ

クルマにほえつき

家にかえるひとのあとをつけ」……。

 

いちにちじゅう きょうだんなんかに立ったあとでは おもいっきり犬になりたくなる。ただそれだけ

 

しかしある時運悪くその姿を仲間の先生に見られ、噂が広まり、エルズワースは大学をクビになってしまいます。

次の職のあてもなく、途方に暮れたエルズワースは公園のベンチで眠り込みます。

目が覚めると、目の前には「プードルのかわいこちゃん」。

ありのままの犬として楽しげに振る舞う彼女を見て、エルズワースは「あたまをガーン」。

 

もちろんだ、これっきゃない

いぬになろう!

 

エルズワースは衣服を脱ぎ捨て、プードルと一緒に四つ足で走り出すのでした。

 

★      ★      ★

 

とにかく、なだいなださんの訳文の洒落ていて軽快なこと。

大人が読んでも面白いです。

 

というより、小さな子どもには、このオチはちょっと意味不明かもしれませんね。

実際、うちの子に読んだ時も(2歳半くらいだったかな)、キョトンとしていました。

 

「犬になる」ったって、最初っからエルズワースは「犬」とはっきり言明されているのにね。

しかし、そこは最後の

そして、そういうこと

の一文で気持ちよく強引に納得させられていたようでした。

 

内容は理解できずとも、色々と耳慣れない言葉がテンポよく飛び出すのは、なかなか刺激的で楽しい体験のようです。

 

「本当の自分」を見失っている大人は、一度固定概念を捨てて、ありのままの「子ども」の姿を見てみるといいでしょう。

エルズワースのように、「あたまをガーン」とやられるかもしれませんよ。

私はしょっちゅうです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

訳文の楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「11ぴきのねことあほうどり」【181冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「11ぴきのねこ」シリーズで知られる絵本作家・馬場のぼるさんが生前に描いたスケッチやアイディアを記したノートなどが大量に残されていることが発見され、ニュースになりました。

 

それら創作資料の中には、「11ぴきのねこ」に関する構想や考察も多く含まれていたそうです。

「猫の歴史」について書かれたページには、猫がいつ日本に来たのか、どんな模様の猫が多かったのか、など、文献を調べてわかったことが実に詳細に記述されていました。

 

あの独特のフォルムの「11ぴきのねこ」が、けっして適当に描いたわけではなく、膨大な情報と知識に基いて描かれていることがわかります。

たかが子どもの本、と絵本を侮る人には理解できない真摯な仕事ぶり。

 

今回は馬場さんへの敬意を込めて、「11ぴきのねことあほうどり」を紹介します。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1972年11月10日

 

シリーズ第一作については、以前の記事をご覧ください。

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

 

大ヒットとなった「11ぴきのねこ」。

ぜひ続編を、と読者や編集者に熱望され、構想に取り掛かったものの、完成までに実に5年を要した苦労作。

 

馬場さんが最初に思い描いたのは、「11ぴきのねこがあほうどりの背に乗って空を飛んでいる」カットだったそうです。

しかし、そこに行き着くまでが出てこない。

 

最終的には表紙のように、11ぴきは気球に乗ることになりました。

 

前作ではいつも腹を空かせたノラネコだった11ぴき。

なんと今作では商売をしています。

11ぴきのねこのコロッケ屋さんは大繁盛。

結構楽しそうに働いています。

売れ残りのコロッケも食べられて、お腹も満足そう。

 

……が、毎日毎日コロッケばかり食べているうちに、11ぴきは、

もう コロッケはあきたよ

おいしい とりのまるやきが たべたいねえ

と言い出します。

 

前回は魚で、今回は鳥というわけです。

とりのまるやき」を思い浮かべている11ぴきの前に、一羽のあほうどりが現れ、コロッケをせがみます。

11ぴきは舌なめずりをしながら、あほうどりをもてなします。

このあほうどり、「3」までしか数えられない上に、11ぴきの下心にも気づかず、

ホー しあわせ、わたしはもう しんでもいい

などと隙だらけなセリフを吐きます。

 

さすが、捕まえ易すぎて絶滅危惧種になったといわれるあほうどり。

前回の巨大魚とはえらい違いです。

 

このあほうどりも11ぴきの胃袋に収まってしまうのか……と思ったら、あほうどりは故郷に兄弟がいることを明かします。

その数、「3ばと 3ばと 3ばと 2わ」。

つまり、「11ぴき」!

 

11ぴきはあほうどりの兄弟にもコロッケをご馳走すると言って、気球に乗り込みます。

やってきた南の島で、11ぴきはあほうどりの兄弟を紹介されますが……。

だんだん大きくなるあほうどり。

最後の「11わあっ」は、入り口を破壊してしまうほどの巨大さ。

 

11ぴきは「とりのまるやき」にありつくどころか、あほうどりたちのためにひたすらコロッケを作り続けるハメになってしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

映画などでも、ヒット作が出ればすぐにシリーズ化の流れになりますが、どの世界でも二番煎じは難しいもの。

1作目の出来が良ければ良いほど、2作目でそれをさらに超えるのが困難になります。

設定だけを受け継ぎ、かえって自由な発想を制限され、ほとんどの場合、シリーズ2作目は駄作となりがちです。

 

馬場さんがそうした難しさに正面から向き合ったからこそ、この「11ぴきのねことあほうどり」は完成までに5年もかかったのでしょう。

こぐま社の創業者である佐藤英和さんと馬場さんは何度も打ち合わせを繰り返し、悩み抜き、苦しみ抜いて、もう「11ぴき」はやめようという話にまでなったそうです。

 

そうした日々の末に馬場さんは「だんだん大きくなる」というアイディアを閃き、数を数えられないあほうどりと組み合わせて、あの越えがたい「11ぴきのねこ」のラストシーンに勝るとも劣らぬクライマックスに辿り着いたのです。

うちの息子も、「11わあっ」のシーンが大好きです(このページを書き写して壁に飾るほど)。

 

どうせ子ども用の本なんだから」そこまで悩まなくてもいいじゃない、という大人もいるでしょう。

 

けれど、馬場さんは子どもの本だから「こそ」、一切の手抜きや妥協を認められなかったのです。

大人相手なら騙せるんだけどねえ。子どもは騙せないからなあ

生前、馬場さんはそんな風に語られていたそうです。

 

子どもの本を作ること、子どもを楽しませることの難しさを誰よりも知っていた馬場さん。

その一方で、本当に面白いものを作れば、子どもは必ずそれを選んでくれるのだということも知っていた馬場さん。

 

誕生から50年経った今でも、馬場さんが生み出した「11ぴき」は子どもに支持され続けています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

あほうどりの無警戒度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「11ぴきのねことあほうどり

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【絵本の紹介】「ジャイアント・ジャム・サンド」【180冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

息子はほぼ毎日絵を描きます。

だいたい一日にスケッチブック一冊以上は消費します。

 

同時に、私にも絵をリクエストしてきます。

私はさほど絵心のある方ではないのですが、小さな人間や機械がいっぱい出てくる漫画的な絵を描いてやったら息子が大喜びします。

一枚の絵の中で、色んな人間が色んな行動を取っているのが面白いらしいのです。

 

そうした楽しみは絵本の絵にも通じるところがあります。

「物語る絵」の歓びです。

 

今回はとにかくたくさんの人物が動き回る、絵本のひとつの醍醐味とも言える楽しさに溢れた一冊を紹介しましょう。

ジャイアント・ジャム・サンド」です。

作・絵:ジョン・ヴァーノン・ロード

訳:安西徹雄

出版社:アリス館

発行日:1972年

 

絵の楽しさはもちろん、安西さんによる、歌のようにリズムある訳文も秀逸です。

そして物語の発端は、ある村に突然蜂が大量発生するというもの。

 

虫の異常発生による被害って相当怖いんですが、そこはコミカルに描かれています。

ブンブン ワンワン ウォンウォン チクッ!

蜂の数はなんと「400まんびき」。

どうにも こうにも もう たまらん」ということで、村人たちは緊急集会を開きます。

 

そこでパン屋のおじさんが一計を案じます。

蜂の好物のイチゴジャムでジャイアント・ジャム・サンドを作り、罠を張って一網打尽にするというのです。

 

このぶっ飛んだ作戦に、村人たちは「やんやの だいさんせい」。

賛成するのか……。

それからは村人総出の大仕事。

巨大な食パンを焼き、運び、ジャムを塗り……。

 

さらに「サンド」するために、ヘリコプターで上空にパンを吊り下げます。

読み通り、400万匹の蜂の群れは、地上のパンに群がってきます。

 

そこで空からパンを落とすと……。

ジャイアント・ジャム・サンドの出来上がり!

 

作戦大成功で、村人たちは大喜び。

うたって おどって わらって さわぐ」。

 

サンドは鳥たちが運び去り、「100しゅうかんも だいえんかい」をしたというオチ。

 

★      ★      ★

 

スケールの大きいストーリーも面白いですが、上で書いたようにこの絵本の何よりの楽しみは、細部まで描かれた絵をじっくりと見ること。

 

大掛かりな仕掛けに、大勢の登場人物。

よくよく見ると、その中にユーモアがいっぱい。

 

ダンディな農夫さんは何をするにも農具を駆使し、最後はトラクターをヘリコプターに改造してしまいます。

みんなが仕事に駆り出される中、ひたすら蜂と格闘し続ける3人のおじさん。

蜂に囲まれながら巨大パンを切る大変な作業の中で、律儀にコーヒーを配る人。

 

残ったパンもちゃんと有効利用されていて、食べ物を粗末にしません。

ちなみに作者のロードさんはパン屋の息子だったそうで、なるほどと妙に感心してしまいました。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

蜂と戦うおじさん3人の不屈の闘志度:☆☆☆☆☆

 

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