【絵本の紹介】「11ぴきのねことぶた」【282冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ずいぶん間が開いてしまいましたが、「11ぴきのねこ」シリーズを取り上げたいと思います。

これまでに「11ぴきのねこ」「11ぴきのねことあほうどり」を紹介しましたので、そちらも併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

≫絵本の紹介「11ぴきのねことあほうどり」

 

馬場のぼるさんの妥協を許さない姿勢ゆえに、シリーズ続編までに5年かかり、そして今回紹介する3作目「11ぴきのねことぶた」の完成までにはやはり4年を要しています。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1976年12月15日

 

つまり、「11ぴきのねこ」誕生からここまでですでに10年近く経過していることになります。

絵柄は安定していますが、印刷技術の向上か、色彩はこれまでに比べて格段に鮮やか。

 

ストーリーはシリーズ通しての特徴である人間心理・集団心理をより濃く描き出したものになっています。

それでいて楽しさは少しも失われていない点が素晴らしい。

 

お腹を空かせていた11ぴきは、コロッケ屋を経て、それなりに生活の余裕が生まれたのか、今回はトラックを所有しており、旅をしています。

田舎の丘で、一軒の古い家を見つけた11ぴき。

廃墟らしいその家を綺麗に掃除して、自分たちの家にすることにします。

するとそこに、旅のぶたが訪ねてきます。

このへんに、ぼくのおじさんのいえがあるんだが、こちらですかな

 

どうやらここはこのぶたのおじさんの家だった模様。

11ぴきも(壁の肖像画から)そのことは思い当っているはずなんですが、今さら明け渡すのは惜しい。

で、ぶたを追い出してしまいます。

 

ぶたは仕方なく、材木を集めて自分で家を建て始めます。

雨が降り、仕事のできないぶたを見ているうちに11ぴきは気の毒になってきて、ぶたを家に招き入れてやります。

 

親切をしていい気持ちになった11ぴきは、ぶたの家づくりも手伝ってやることにします。

設計図を描き、トラックで資材を運び、てきぱき働く11ぴき。

ぶたも喜びますが……。

出来上がった立派な家には「11ぴきのねこのいえ」の看板。

あげるのが惜しくなっちゃったんですね。

 

結局ぶたは11ぴきのねこが占拠していた家に住むことになります。

温厚なぶたは別に腹も立てず、「まあ、いいさ。もともと ここは ぼくのおじさんのいえなんだ」。

 

さて、夜が明けると、台風がやってきて……。

11ぴきは家ごと空へ吹き飛ばされてしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

相変わらず11ぴきはずるくて欲が深いけれども、憎めません。

あの幸せそうな笑顔のせいでしょうか。

 

ある種の人間の業を現している11ぴきの哀れで滑稽な末路を、子どもたちは笑いながらも、どこかで彼らと自分自身の心を重ね合わせています。

そこで何が生まれるでしょうか。

自分自身の客観視です。

 

11ぴきの無責任さ、不道徳さは、典型的な集団心理です。

行為の責任を自分自身の個において引き受けなくてもよい気楽さが、彼らを支配しています(とらねこたいしょうだけは少々責任感を持ち合わせている様子ですが)。

 

それは幼い子どもたちの「グループ」にも見て取れる光景です。

隣の子がやっていることなら、いい悪いを判断する前に真似をし、隣の子が泣くと一緒になって泣く。

そこからは本当の倫理観や道徳心は生まれません。

 

そうした集団的自我から、人間はいずれは自由に解き放たれなくてはなりません。

個としての有責性を引き受けた時に、初めて人間は独立性を確保するのです。

 

もっとも、だからと言って幼い子どもたちを性急に独立させようとするのは間違っています。

すべてには準備期間が必要であり、成長にはある程度の時間をかけなくてはなりません。

子どもたちがいずれ自由な個我に目覚めるためには、焦らずに、心の土を耕し、未来の種をまかなければなりません。

 

その種が「自分自身の客観視」です。

この絵本を「教訓」だと思うべきではありません。

馬場さんはそんな物語は作りません。

 

この絵本が素晴らしいのは、子どもたちが心から笑えるからです。

教訓に対しては、子どもは笑いません。

反発するだけです。

 

大笑いしながら、同時に自己を見つめるきっかけになる。

それらを両立させることは口で言うほど容易い作業ではありません。

馬場さんだからこそ、その困難な物語を作ることに成功したのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

今年の台風被害を思うと、ラストはちょっと怖い度:☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「11ぴきのねことぶた

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「おばけリンゴ」【272冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年の夏は酷暑が続いたり、大雨や台風や地震の被害もあって、農家の人々も大変だったと思いますが、そろそろ実りの秋ということで、こんな絵本はどうでしょうか。

おばけリンゴ」です。

作・絵:ヤーノシュ

訳:矢川澄子

出版社:福音館書店

発行日:1969年3月31日

 

作者のヤーノシュさんは1931年ポーランド(当時はドイツ領)の工業都市に生まれます。

錠前屋とか織物学校とかを転々とした後、ほとんど独学でデザインを学び、1960年に初めての絵本「うまのヴァレクのはなし」で絵本作家デビューします。

 

200冊を超える作品を発表し、ドイツ児童文学会では最も成功した作家と言われています。

が、実は美術学校を「才能がない」という理由で中退しているのですね。

 

絵本の絵というものは一見子どもが描いたようなラフなタッチのものも多く、この「おばけリンゴ」に代表されるヤーノシュさんのイラストも、「へた」と取られることもあるのかもしれません。

しかし、この表紙の主人公の表情など、じっと見ていると何とも言えない深い味があります。

 

また、ヤーノシュさんの作る物語はユーモラスで可愛らしい中に、どこか「大人の寂しさ」を感じさせる部分があり、そこが魅力にもなっています。

大人でも、つい引き込まれてしまう人も多いのではないでしょうか。

 

さて、内容を見て行きましょう。

主人公はワルターという名のヒゲの男。

貧乏ですが、リンゴの木を一本持っています。

ところが、この木はまだ一つも実が生ったことも花が咲いたこともないのでした。

 

ワルターはベッドで悲しみに暮れながら、心を込めて祈ります。

ひとつで いいから、うちのきにも リンゴが なりますように

すると、その小さな願いは叶えられ、ワルターの木に花が一つ咲きます。

ワルターは喜び、その花を大切に守ります。

花の成長を見守るワルターは幸せで、生き生きとしてきます。

 

ついにリンゴの実が生り、大きく育ちます。

が、ここでワルターにちょっとした欲が芽生えます。

リンゴが日増しに大きくなるので、取り入れを先送りし続けるのです。

 

そうするうちに、リンゴは化け物みたいな大きさになってしまいます。

そうなると、ワルターはこれを誰かに取られないかと心配になり、リンゴの番をするようになります。

やっとリンゴを市場に売りに行く気になったワルターでしたが、おばけリンゴは汽車にも積めず、背負って歩くことに。

おまけにあまりに常識外れの大きさのおばけリンゴは、買い手もつかないのでした。

ワルターは落ち込みます。

 

一方このころ、この国を脅かす一匹のリュウがいました。

国じゅうの作物を食い荒らすリュウを退治するか、贈り物で大人しくさせるか、王様が秘密警察(マフィアにしか見えない)に命じます。

 

秘密警察(マフィアにしか見えない)たちは、ワルターのおばけリンゴを思い出し、それをリュウに差し出すことにします。

リュウはおばけリンゴに猛然とかぶりつき、そしてリンゴをのどに詰まらせてあっけなく死んでしまいます。

国に平和が戻り、そしてワルターも悩みが解消されて元気を取り戻します。

そして今度からは「ふたつで いいから」、かごに入るくらいの小さなリンゴが生るようにと祈るのでした。

 

★      ★      ★

 

リンゴが生ってあんなに喜んでいたワルターが実はリンゴが嫌いだったとか、やたら悪そうな王様とか、あまりにも情けない竜とか、後半の超展開は突っ込みどころ満載で、笑っていいのやらなんやらわからなくなりますが、ワルターの心情の変化は、人間の欲望や期待について普遍的な真理を衝いています。

 

願いというものは叶いつつある時が最も幸せで、実際に叶ってしまうと何故か不幸になってしまったり。

また、何も持っていなかった時のワルターの願いは純粋でささやかなものだったのが、手に余るものを持ってしまってからは打算的な欲に変わり、そして持つことによって不安や心配まで抱え込んだり。

 

人間の幸福とは何ぞや、と、都会を離れて創作活動を続けた作者は問うているような気がします。

ヤーノシュさんの作品に漂う寂しさは、彼自身の人生に関係しているのかもしれません。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

リュウの恐ろしさ度:☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「おばけリンゴ

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【絵本の紹介】「海は広いね、おじいちゃん」【259冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

酷暑が続いておりますが、皆様お元気で過ごされていますか?

特に高齢の方は熱中症にお気を付けください。

毎日街を走る救急車の数が半端ないです。

 

今回紹介するのは「海は広いね、おじいちゃん」です。

作・絵:五味太郎

出版社:絵本館

発行日:1979年3月

 

五味太郎さんによる「老人と海」絵本。

五味さんの描くおじいちゃんとかおじさんって、他にない味がありますよね。

 

毎回実験的な絵本を作る五味さん。

彼の作品の特徴は、「構造的なしかけ絵本」とでも言えるでしょうか。

この絵本もまた、独特な在り方を示しています。

 

表紙から続いて、おじいちゃんと孫の男の子が、海へ遊びに来たところ。

テキストは左ページに男の子、右ページにおじいちゃんのセリフ。

二人の掛け合いのみで物語は進行します。

はしゃいでいる男の子に対し、おじいちゃんは背を向けて読書。

男の子はなんと海に降りてくるUFOと泳いでくる宇宙人を発見しますが、おじいちゃんは振り向きもせず、生返事ばかり。

 

男の子が次々に変身する宇宙人と楽しく遊んでいるのに、おじいちゃんは気づきもしない。

宇宙人が女の人に変身して、クッキーを差し出した時にだけは振り向きますが、それでも異常事態を認識してはいません。

しかし、星型のクッキーを齧ったおじいちゃんに異変が。

 

遊び終わった宇宙人は男の子に別れを告げて飛び去って行き、それすら見ていないおじいちゃんは、

ぼちぼち 帰るとしようか・・・

と、パラソルを引っこ抜いて……。

パラソルをひっくり返して、

はやく乗りなさい、これで帰ることにしたんだ

 

なんと、二人は本当にパラソルに乗って飛んでいきます。

衝撃的なラストですが、

なに考えてるの、おじいちゃん?

ちょっとしたことさ・・・

という二人の会話には、不思議な親密感や連帯感が感じられます。

 

★      ★      ★

 

全然噛み合っていないようで、どこかで通じ合っているような、おじいちゃんと孫の関係。

おじいちゃんが熱心に読んでいた本のタイトルも、ニヤリとさせます。

 

男の子が見たものは現実か、それとも「なみにきをつけて、シャーリー」のような空想でしょうか。

≫絵本の紹介「なみにきをつけて、シャーリー」

 

もし空想だとすると、ラストの展開は、孫の果てしもない想像のお話を、一見素っ気なく聞いていたおじいちゃんの中に芽生えた化学変化のようなものと捉えることもできます。

 

おじいちゃんと男の子の孫、という関係には、どこか特別なものがあります。

それは孫娘との関係とも違うし、おばあちゃんと孫の関係とも違う。

うまく言葉にできませんけど。

 

私の場合、おばあちゃんとの関係は深かったんですが(母方の祖母はまだ存命ですし)、おじいちゃんとの思い出というのはほとんど皆無に近いです。

おじいちゃんというのは、おばあちゃんに比べてなんと近寄りにくい存在か、と子ども心に思っていましたね。

 

世間には色々なおじいちゃんがいて、この絵本のように孫と二人きりで海に行くような素敵なおじいちゃんもいることを知った今では、もっともっと「おじいちゃん」と関わっておけばよかったかな、と、思ったりもします。

 

しかし、私の父も妻の父も、全然孫と遊ぼうとしない「おじいちゃん」であることは残念至極です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

クッキーの味が気になる度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「だってだってのおばあさん」【248冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

説明不要のロングセラー「100万回生きたねこ」の出版40周年を記念した「佐野洋子の世界展」が山梨県立美術館で開催されています(行きたいのに行けない絵本展が多すぎる)。

 

佐野さんの絵本は読者年齢を問わないのが特徴ですが、今回紹介する作品も大人が読んでも面白い、むしろ大人になったからこそ読むべき絵本です。

だってだってのおばあさん」。

作・絵:佐野洋子

出版社:フレーベル館

発行日:1975年

 

ちいさな家で、猫と暮らす御年98歳のおばあさんが主人公。

「加齢」がテーマになった作品ですが、「100万回生きたねこ」にしろ、「おじさんのかさ」にしろ、佐野さんの絵本の主人公は子どもでないことも多く、広い視点で読めば同様のテーマを扱っているとも言えます。

 

そして、このおばあさんもまたチャーミング。

98歳とは思えない矍鑠としたおばあさんと、孫のような存在の男の子猫。

 

ねこは魚釣りにおばあさんを誘いますが、

だって わたしは 98だもの、98の おばあさんが さかなつりを したら にあわないわ

と断るおばあさん。

さて、おばあさんの99歳の誕生日、ねこは99本のろうそくを買いに出かけます。

その間におばあさんはケーキを焼きます。

だって わたしは おばあちゃんだもの、おばあちゃんは ケーキを つくるのが じょうずなものよ

 

ところが、ねこはろうそくを川に落としてしまい、泣きながら帰ってきます。

残ったろうそくはたった5本。

おばあさんはねこを慰め、5本のろうそくをケーキに立てます。

そして、自分に

5さいの おたんじょうび おめでとう」。

そして次の日から、おばあさんは5歳のおばあさんになります。

ねこが魚釣りに誘うと、

だって わたしは 5さいだもの……、あら そうね!

 

おばあさんは溌溂と魚を釣り、川を飛び越え、川に入って魚を捕まえます。

5さいって なんだか ねこみたい

おばあさんは夢中になり、来年も誕生日には5本のろうそくを買ってきておくれ、とねこに頼むのでした。

 

★      ★      ★

 

「だって……だもの」

ネガティブに聞こえるフレーズを、魔法のように素敵な言葉に変えてしまう、佐野さんの手腕。

 

あえて98歳「らしさ」の中に自分をとどめていたおばあさんですが、たった一言、自分にこの言葉をかけるだけで生まれ変わったような楽しみや歓びに触れることができるのです。

 

年相応というのは別に悪いことだとは思いませんが、時には自分で自分にかけた呪縛から解放されてみるのもいいと思います。

幼児的な大人は醜悪ですが、童心を忘れない大人は素敵です。

 

「自分が何歳であるか」が重要なのではなく、「今、自分が何がしたいか」が大切。

そんな爽快なメッセージが軽妙な会話の中に感じられる作品です。

 

ちなみに、あとがきがさらに素敵です。

だって、おばあさんは一番たくさん子どもの心を持っているんですもの」。

 

「おばあさん」だけでなく「人間」に対する佐野さんの温かい視線こそが、彼女の作品の芯をなしているのでしょう。

 

関連記事≫絵本の紹介「100万回生きたねこ」

≫絵本の紹介「おじさんのかさ」

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

99歳の足腰壮健度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」【240冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは五味太郎さんの「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」です。

作・絵:五味太郎

出版社:偕成社

発行日:1984年5月

 

きんぎょがにげた」のような幼児向け探し絵絵本、「まどからおくりもの」のような穴あきしかけ絵本、ユニークなアイディアの詰まった様々な絵本を発表している五味さん。

 

≫絵本の紹介「きんぎょがにげた」

≫絵本の紹介「まどからおくりもの」

 

非常に多作で、よくあんなに次々と独創的な発想が生まれるものだと感心します。

彼の絵本は物語そのものよりも構造的な部分に試行錯誤が見られます。

五味さんの絵本と言えばユーモアやナンセンスといったイメージが先行しますが(事実そうですが)、そういう意味では、非常に知的な作品が多いとも言えます。

 

この「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」も、「実験的かつめちゃくちゃ笑える」五味さんらしい作品です。

 

虫歯のわにさん、渋々歯医者さんへ。

ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃ いけないね

 

一方、趣味の機械いじりをしていた歯医者さん、患者さんの来訪に、

ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃ いけないね

 

そしてわにさんは歯医者さんの手のドリルとペンチを見て、歯医者さんは患者さんがわにであることを見て、互いに

どきっ

お互いに

こわいなあ……

 

もうこの絵本の仕掛けがわかりますね。

つまり、わにさんと歯医者さんはそれぞれの立場・心情がありながら、セリフだけは全く同じなんです。

いたい!

とわにさんが思わず口を閉じると、腕を噛まれた歯医者さんも

いたい!

 

もう ひどいじゃないか

もう ひどいじゃないか

 

もうすこし がんばれ

もうすこし がんばれ

治療が終わると

ほっ

ほっ

 

いやいや もう にどとは あいたくないね

いやいや もう にどとは あいたくないね

 

だから はみがきはみがき

だから はみがきはみがき

 

★      ★      ★

 

なるほどこうきたか、という感じです。

ラーメンズのコントにこういうのがあったのを思い出します。

 

この絵本の笑いを理解するには、表面の言葉を読むだけでなく、その裏の登場人物の心理を想像するという作業が要求されます。

こういうと難しそうですが、そこは絵本らしく、至って易しい内容ですから、幼児にもちゃんと理解できます。

 

我が家の息子も、2歳ごろにこれを読んでげらげら笑っていました。

まあ、単に「同じ言葉が二回繰り返される」だけで面白かったのかもしれませんけど。

 

それにしても、五味さんの描くオジサンは味がありますね。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

歯医者さんの人間臭さ度:☆☆☆☆☆

 

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