【絵本の紹介】「トプシーとアンガス」【386冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ずっと以前に紹介した「アンガスとあひる」をご存じでしょうか。

 

≫絵本の紹介「アンガスとあひる」

 

古典名作として取り上げられることの多い作品ですので、読んだことのある方も多いと思います。

けれど、この知りたがり屋で好奇心旺盛なスコッチテリアの「アンガス」の絵本が全5作のシリーズであることを知っている人は少ないかもしれません。

 

今回はシリーズ最終作である「トプシーとアンガス」を紹介しましょう。

作・絵:マージョリー・フラック

訳:まさきるりこ

出版社:アリス館

発行日:2008年3月15日

 

実はこのシリーズ、「アンガスとあひる」「アンガスとねこ」「まいごのアンガス」の前3作は瀬田貞二さん訳で福音館書店から発行されていましたが、後2作「ベスとアンガス」そしてこの「トプシーとアンガス」は長い間翻訳されないままだったのですね。

 

ゆえにアンガスがシリーズ連作であることを知っている人でも、3部作だと思っていた人も多かったのではないでしょうか。

かくいう私もその一人です。

 

近年になってアリス館から間崎ルリ子さんの翻訳により、ようやくすべてのアンガスシリーズが日本語で読めるようになったのですが、悲しいことに現在のところアリス館出版の2作品はすでに絶版重版未定です……。

こういう時こそ古本屋。

 

宣伝はおいといて、第一作があまりにも完成されすぎていて2作目以降が埋もれてしまう現象はシリーズ絵本あるあるですが、「アンガス」は5作全部それぞれ違った面白さが維持されています。

その上で、後2作は前3作とやや毛色が違い、特に「トプシーとアンガス」はテキストが多く、ドラマに比重を置いた作りとなっています。

これは、「アンガスとあひる」を読んで育った子どもの成長を作者が計算に入れているのかもしれません。

物語の中心になるのはアンガスではなく、コッカー・スパニエルの「トプシー」です。

ペットショップで寂しい思いをしているトプシーを見かけた少女「ジュディ」がトプシーを欲しがりますが、母親は許してくれません。

 

くまのコールテンくん」を思い出す展開ですが、結局トプシーはジュディではなく「サマンサ・リトルフィールド」という名の老婦人に買われることになります。

 

≫絵本の紹介「くまのコールテンくん」

 

婦人はお金持ちで、トプシーに様々なものを買ってやりますが、トプシーはしつけのできていないいたずらっ子で、それらをみんなめちゃくちゃにしてしまいます。

サマンサ婦人はトプシーを大変可愛がってはいるけれども、少々手を焼き始めます。

きちんと整えられた家の中まで荒らされて、とうとう婦人はトプシーを地下室に閉じ込めます。

 

地下室から抜け出したトプシーは、外を走り回り、そこで子犬のアンガスに出会います。

前回アンガスの友だちとなった「ブルンブルンベス」も加わり、楽しく駆け回っているところへ、ペットショップで毎日トプシーを見に来ていたあのジュディが現れます。

ジュディとトプシーはしっかり抱き合い、互いに喜びます。

ジュディはトプシーを家に連れ帰りますが、次の日にはサマンサ婦人がトプシーを探しにやってきます。

 

悲しむジュディを見て、婦人はトプシーをジュディに譲ると言ってくれます。

ジュディの母親も犬を飼うことを認めてくれ、それからはジュディとトプシー、それにアンガスとベスも一緒に毎日楽しく遊ぶようになるのでした。

 

★      ★      ★

 

作者のマージョリー・フラックさんが発表した絵本はこのアンガスシリーズを含め、「おかあさんだいすき」など9冊。

絵本作家としては決して多作ではありませんが、どの作品も創意工夫にあふれており、構図や場面転換などの表現方法は後進の作家に大いに影響を与えました。

 

まだ絵本というものの価値や可能性が低く見られていた時代に、フラックさんの残した功績は小さなものではありません。

それゆえに彼女はワンダ・ガアグさんと並んで、アメリカ絵本の礎を築いた存在だと言われているのです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

犬好き絵本度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「トプシーとアンガス

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「ワニくんのレインコート」【380冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

大阪では梅雨らしい天気が続いています。

昨日も雨だったんですが、夕方になって息子が突然公園へ行きたいと言い出しました。

しかも自転車に乗ると言うので、傘も差せないし、ずぶ濡れになるからやめとけと説得しても聞きません。

 

渋々雨の中を出て行きました。

当然息子はぐしょ濡れになり、水たまりの泥を跳ね散らかしながら、しばらく走り回ってから帰ってきました。

 

こんな時にレインコートがあればいいのかもしれませんが、持ってないんですね。

よく考えたら私も長いことレインコートを着てません。

大人になるとそもそも雨の日は出かけたくなくなります。

でも、子どものころはレインコートで雨の中を歩くというのは独特の楽しさがあったように思います。

雨を待ち望むという気持ちも、新鮮な気持ちで空を見上げるということも、ずっと忘れていました。

 

今回は人気シリーズから「ワニくんのレインコート」を紹介しましょう。

作・絵:みやざきひろかず

出版社:BL出版

発行日:1989年6月1日

 

みやざきひろかずさんを取り上げるのは初めてですね。

第一回ニッサン童話と絵本のグランプリに応募した「ワニくんのおおきなあし」で絵本大賞を受賞したのを契機に絵本作家生活に入り、その後「ワニくん」は人気シリーズ化されます。

 

独特の淡い水彩画と、輪郭線のはっきりしないゆるいタッチにぬくもりを感じます。

内容も絵柄同様ほんわかしたもので、今作ではレインコートを買ってもらったものの雨が降らなくて着る機会がないワニくんが、雨を求めて東奔西走するというお話。

確かに着たくなる気持ちもわかる、とっても可愛いレインコートです。

だけど天気予報はずっと晴れ。

 

ワニくんはレインコートでシャワーを浴びたり、公園の噴水に入ったりしますが、当然感じは出ません。

しまいには雨を求めて遠くの町や山にまで出かけますが、そこでも雨は降らずにがっかり。

 

でも、ある朝起きるとついに念願の雨。

ワニくんは大はしゃぎでレインコートを着て外へ飛び出します。

雨はじきに上がってしまいますが、ワニくんは「とっても しあわせな きぶんさ」。

 

最終ページでは水彩画を活かした美しい虹がかかります。

 

★      ★      ★

 

雨具を使いたくて雨を待ち望む子どもというのは絵本のひとつの王道ともいえる話型でして、古典ではこのブログでも取り上げた八島太郎さんの「あまがさ」があります。

 

≫絵本の紹介「あまがさ」

 

この王道を逆発想して「雨具を大切にするあまり雨の日でも使わないおじさん」というユニークなキャラクターを生み出したのが佐野洋子さんの「おじさんのかさ」。

 

≫絵本の紹介「おじさんのかさ」

 

いずれにしても大人が忘れかけている瑞々しい童心を呼び覚ましてくれる点は共通です。

 

絵本の場合、同じような話であっても絵が違えばまったく違う作品になることもあり、それぞれに味わい深いものがあります。

絵の力と重複するところもありますが、キャラクター造形も魅せどころです。

 

このほのぼのした「ワニくん」、どういうキャラクター設定かといいますと、身長は84兮僚釘横沖圈足のサイズ43僉◆両親のもとを離れ学園都市クロコシティの郊外で、ひとりで学生生活(小学校4年生)をおくっている」(作者HPより)そうです。

しっかりしてますね。

 

あと、個人的にこの絵本で好きなポイントは水たまりに映りこむ景色や裏表紙の傘から滴る水滴の描写です。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

足が可愛い度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ワニくんのレインコート

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【絵本の紹介】「かさ」【378冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年は新型コロナウイルス感染症の話ばかりしている間に、気づけばもう6月です。

花見もGWも入学式や卒業式すらまともにできず、季節を感じることも薄いままに梅雨ですか。

花粉症だけは感じましたけど。

 

今回は太田大八さんの「かさ」を紹介します。

作・絵:太田大八

出版社:文研出版

発行日:1975年2月20日

 

太田さんの作品は、自身の子ども時代をモデルにした「だいちゃんとうみ」をこのブログで取り上げたことがありますね。

≫絵本の紹介「だいちゃんとうみ」

 

素朴で力強い色使いが素敵な太田さんですが、この「かさ」ではあえてモノクロに赤一色だけを効果的に用いる手法を取っています。

また、テキストを排し、すべてを絵によって語らせるまさに「絵本」というスタイルの作品でもあります。

 

主人公の女の子が、雨の日に傘を持って駅まで父親を迎えに行くというお話。

引いたアングルで雨の街並みを描写し、少女の傘だけがぽつんと赤の配色をなされています。

この印象的な赤色によって、読者はすぐに主人公の位置を確認することができます。

女の子は何も語りませんが、何を見、何を感じているのかは容易に伝わります。

駅前の街並みは、時代を感じるところもありますが、今見てもそこまで古臭くはありません。

この絵本が出た当時ではかなり都会的な描写だったのでしょう。

 

女の子は友だちとすれ違いざまに挨拶を交わし、犬に水をかけられそうになり、ドーナツ屋や人形屋のショーケースを覗き、駅前の交差点を渡り、父親に会って持っていた傘を手渡します。

そして帰り道、先ほど見ていたドーナツ屋で父親にドーナツを買ってもらい、今度は父親が少女の傘を持ち、二人は一本の傘に入って帰ります。

 

表紙・扉絵から始まって裏表紙の後ろ姿まで物語は続いています。

 

★      ★      ★

 

地味なように感じるかもしれませんが、読んでみると非常に印象深い絵本です。

そして不思議と温かい気持ちになります。

 

個人的に太田さんの作品にノスタルジーを刺激されることが多いのですが、この絵本も昭和後期を感じさせる描写がとても懐かしく心に残ります。

ま、実際には私は「傘を持って駅へ親を迎えに」という経験はないんですけど。

今ではもう見ることもないでしょうね。

携帯電話もあればコンビニでも駅でもビニール傘売ってますし。

 

「雨降ってるから迎えに来て」とか父親が言ったらフルボッコにされそうですしね。

だいたい子どもも塾や習い事で忙しいし。

 

確かにここで描かれているような光景は、現在では旧弊な家父長制の象徴として映るかもしれません。

どうしていつも「父親」なんだ、迎えに行くのが当然のように「女の子」なんだ、と言われれば、返す言葉がありません。

 

こういう絵本をあっさりと「古き良き時代」ということにためらいを覚えてしまうのが現代です。

でも、この絵本を読んで「いいなあ」と思うのは、すでに希薄になってしまった人同士の繋がりを感じるからです。

そういう心情は普遍的なものです。

別に家父長制を懐かしんでいるわけではない(そういう人もいるかもしれませんけど)。

 

いくら懐かしもうとも、時代は逆戻りしません。

そして現在でさえも、未来には懐かしく「いい時代」だったと思い返す人がいる一方に「あんな古臭い思想がはびこっていた時代」と身震いする人がいるのでしょう。

 

そういうものだと思います。

そのどちらが正しいとか悪いとかいう問題ではなく、今自分がどういう時代を生きていて、そこにどういう問題があり、自分自身が時代の空気によって考え方を規定されている事実を自覚することが大事なのです。

 

一冊の絵本を読んだとき、そこから何を吸収し、何を排出するのか。

それは個人的な力に左右されます。

 

子どもにとって「いい絵本」と「悪い絵本」があるのだと論じる大人たちは、まず自分自身が子どもに与える影響の大きさを自覚するべきです。

「いい絵本」がいいからといって、その一冊を読んだ子どもたちすべてに良い影響を及ぼすほどの力を発揮できるかと言えばなかなかそうはいかないでしょう。

同様に一冊二冊の絵本が「害」を与えるようなこともまたないと私は思うのです。

 

子どもに影響を与えるほどの力を発揮させようと思えば、やはり数多くの、本当にたくさんの絵本を読むことが重要です。

そして審美眼や真実を見抜く目というものは、そうした多くの読書経験によって育まれるものなのです。

 

また作品紹介から遠ざかってしまいましたが、「かさ」は1975年以来、現在でも重版が続くロングセラーであり、それは時代を超えて子どもたちが支持し続けている名作であることを証明しています。

作品の良し悪しを決めるのに子どもの目ほど確かなものはありません。

それだけは時代が変わろうとも確かなことです。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆(文字なし)

紙袋のデザインとかさりげないところも注目度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「かさ

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【絵本の紹介】「あおくんときいろちゃん」【377冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

今回紹介するのは絵本界の哲学者、レオ・レオニさんの処女作「あおくんときいろちゃん」です。

作・絵:レオ・レオニ

訳:藤田圭雄

出版社:至光社

発行日:1967年

 

レオニさんに関してはもう何度もここで取り上げています。

彼の流浪と波乱の生涯や、弾圧と攻撃の中で培われた思想については、過去記事を併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「さかなはさかな」

≫絵本の紹介「アレクサンダとぜんまいねずみ」

≫「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。【伊丹市立美術館】

≫文化芸術の危機を「フレデリック」から考える

 

さて、レオニさんの処女作とは書きましたが、この「あおくんときいろちゃん」が出版された1959年には、レオニさんはすでにアメリカでデザイン界の第一人者として認められていました。

有名な話ですが、彼が孫のために雑誌の広告ページを切り抜いて即席で作ったおはなしが「あおくんときいろちゃん」の原型であり、出版関係の友人がこれを絵本化したことで、レオニさんは初めて絵本の道へ入ったのです。

 

「あおくんときいろちゃん」はレオニさんの最初の絵本であり、彼の作品の中でもシンプルの極致というべき構成であり、圧倒的なデザインセンスと独特の物語性を併せ持つ傑作です。

その後の素晴らしい絵本作品を生み出した作者の創造力は、この時点ですでに限りなく高いレベルで完成されていたことがわかります。

 

ことにそのエッセンスが凝縮されているのが、最初のページだと思います。

丸くちぎった青い紙のコラージュと、「あおくんです」のテキスト。

 

絵だけを見ればただの青い模様が中心に描かれているようにしか感じられません。

この青い模様こそが作品の主人公であり、生き生きとしたキャラクターであり、物語の中心であることを、レオニさんはたったひとこと「あおくんです」という削りに削った一文のみで読者に納得させてしまうのです。

 

レオニさん自身が、このページこそが自分のさまざまな作品のなかで最高の出来だと語っています。

 

あおくんはやはり色紙のコラージュで描かれた家に両親と住み、学校に通い、他の様々な色のお友だちと遊びます。

そして印象的な「きいろちゃん」との抱擁シーン。

あおくんときいろちゃんが一つになることで色が混ざり合い、「とうとう みどりに なりました」。

 

みどりになった二人はたくさん遊んでから家に帰りますが、あおくんの両親もきいろちゃんの両親も、みどりの子を見てうちの子じゃないと思います。

あおくんときいろちゃんは悲しくなって青と黄色の涙をこぼします。

するとふたりはもとの青と黄色に別れ、両親もやっとわけを理解します。

その後、互いの両親も抱き合うと嬉しくて「みどりになる」ことに気づくのです。

 

★      ★      ★

 

この絵本が出版された当初、多くの批評家たちはその優れたセンスを高く評価しましたが、同時に子どもには受け入れられないであろうとも評しました。

あまりにも抽象的すぎるというのがその理由でした。

 

ところが、実際には子どもたちはすぐにこの絵本を理解し、大いに喜び、好意的に受け入れたのです。

子どもたちに対する大人の目の不確かさ、当てにならなさというものを再認識させることにもなった「あおくんときいろちゃん」は、その後の絵本に少なくない影響を与えたランドマーク的作品となりました。

 

前述したように、この絵本が生まれたのはいわば偶然の要素が強いのですが、にもかかわらず、そこには後のレオニ作品に通じる深い思想を認めることができます。

「あおくん」と「きいろちゃん」が「色の違い」、それはつまり人種や文化の違いを超えてひとつに結ばれる喜びと素晴らしさが、「みどり」の部分に込められています。

 

子どもたちの「遊び」を出発点として、あおくんたちの両親もまた、「みどりになる」喜びと嬉しさに気づきます。

その感情を通して世界に平和が広がっていくイメージが読者に到来します。

 

そこがこの作品の魅力ですが、一方でそうした思想的部分が作品に入り込むことを煙たがる人々もいます。

特に現代の日本ではそういう面が強いかもしれません。

 

しかし思想とはその人間が生きてきた中で必然的に構築される要素であり、作品を作るとは作り手の思想を形にする行為でもあります。

レオニさんのような人生を歩んできた芸術家が作るものには、それがたとえ偶然生まれたものであったとしても、そこに自然と彼の魂が注入され、結晶化されるのでしょう。

 

また、そこに何の思想もメッセージも読み取れない作品ですら、「私は作品に何らの思想やメッセージを持たせない」という作者の思想が投影されているとも言えます。

創作者は作品にどんどん自分の魂を入れて構わないし、鑑賞者はそこにどんなメッセージを読み取っても自由です。

その当たり前のことを、「あおくんときいろちゃん」を読むたびに再確認させられます。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

完璧な無駄のなさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ウィリーとともだち」【376冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

何度も書いていることですが、私の息子には友だちと呼べる相手がひとりもいません。

同年代の子どもと遊ぶ機会はほとんどなく、親以外の大人とコミュニケーションする機会もありません。

別にそれを問題と思ってはなくて、小学校に通いだしてから徐々に他者との関わりを学んでいけばいいと考えていたのですが、休校状態が続く現状ではそれも叶わなくなってしまいました。

 

しかし、そもそも友だちとは何か、なぜ必要なのか、そういう根本的なことを考えてみてもいいかもしれません。

友だち、友情をテーマにした絵本はたくさんありますが、そうした意識も時代とともに変化するものであり、我々は自分自身の価値観を前提にして「子どもにとって友だちは絶対に必要不可欠なものだ」と決めてかかるべきではないような気もします。

 

特に、いわゆる友だちを作るのが苦手な子、一人遊びのほうが好きな子を見るとすぐに心配して手を回そうとする大人たちは、一度よくその子どもを観察するべきです。

そもそも大人たち、世間のそうした価値観が無言の同調圧力となって、まるで友だちがいないことは人間的劣等であるかのように子どもに思わせてしまうのではないでしょうか。

 

さて、今回紹介するのはアンソニー・ブラウンさんの「ウィリーとともだち」です。

作・絵:アンソニー・ブラウン

訳:あきのしょういちろう

出版社:童話館

発行日:1996年9月10日

 

ブラウンさんといえばゴリラ、そしてサル好きで有名です。

デフォルメはされているけど毛の一本一本までリアルな絵は実に特徴的。

そしてモダン。

 

その性質上、超時間的作品が多くなる絵本の中に、意図的に現代的要素を描くというのは割に難しいものです。

それは単に絵の中に現代的な物(スマホとか)が登場するとかいう話ではなくて、登場人物の内面に普遍的な、別の言い方をすれば無難な性質だけを付与するのではなく、時代の気分を含ませるかどうかということです。

 

この「ウィリーとともだち」の主人公ウィリーは作者の別作品にも登場するキャラクターですが、その造形は従来的な絵本の主人公としては異質です。

シャツにネクタイ、カーディガン、コーデュロイパンツに革靴という学生スタイルに身を包み、ポケットに手を突っ込み、伏し目がちで背中を丸めて歩くウィリー。

 

学校では孤立しており、他のみんなには友だちがいるのに、自分はひとりぼっちであることに思い悩んでいます。

そんなある日、ウィリーは公園でひとりのゴリラとぶつかります。

彼の名は「ヒュー・ジェイプ」。

 

ヒューは大きな体ですが優しいゴリラで、ウィリーと互いにぶつかったことを謝り、ベンチに座って会話をします。

そこに「バスター・ノーズ」というえらいファッションをしたゴリラが現れ、ウィリーに向かって凄みます。

でも、ヒューのひとにらみで退散。

 

仲良くなったウィリーとヒューは動物園や図書館へ行き、楽しい時を過ごします。

図書館を出ようとしたとき、ヒューは机の上に蜘蛛を発見し、慄きます。

蜘蛛が大の苦手なんですね(おそらく、公園で走っていたのも蜘蛛から逃げていたのでしょう)。

ウィリーは蜘蛛を捕まえ、離れたところに移してやります。

 

ヒューは喜び、そしてウィリーも自分が友だちの役に立てたことに深い喜びを見出します。

二人は握手を交わし、次の日も会うことを約束するのでした。

 

★      ★      ★

 

ウィリーの繊細な劣等感や承認欲求は別作品「こしぬけウィリー」でも顕著であり、シティボーイ的なやさしさと弱さを持つ主人公が、周囲のマッチョイズムに圧を感じるという構図は「ウィリーとともだち」と共通しています。

 

登場人物がみんなゴリラである中で、ウィリーだけがチンパンジーであることも効果的です。

ファッションを含め、上記のようなウィリーのキャラクターの大部分を絵によって語らせる作者の力量とセンスは瞠目に値します。

 

絵本を注意深く読まない大人たちは、この作品を単に「互いに協力し合える友だちがいるのは素晴らしいことだ」という定型に落とし込みたがりますが、重要なのはウィリーが感じる「圧」なのです。

 

ウィリーはもちろん寂しさを感じ、友だちを求めてはいるのですが、彼にそれを欲望させているものは何かと考えると、それは「だれにも、友だちがいるように みえました」という劣等感なのです。

そして自分の学生時代などを思い返せば、実のところ友だちを求める気持ちの少なくない部分に「友だちがいない・少ないと周囲に見られたくない」という圧力が加わっていたような気がします。

 

現代人は何でも一人でやるほうが気が楽であることを隠さなくなってきており、無理に友だちを作ったり人付き合いをしたりしない若者が増えてきています。

恋愛や結婚も然りです。

 

その是非は別問題として、この流れは人々がこれまでの圧力や精神的不自由さから解放されたがっていることの現れだと思います。

人間は過去に戻ろうとしたり、現状に留まろうとしたりしながらも、「自由になること」を志向します。

 

自分を知り、押し付けられた価値観や道徳から自由になったとき、それでもなお残る「他者と繋がりたい」という気持ちに気づいたときこそ、本当の友だち関係を築くチャンスなのではないでしょうか。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

動物園のシーンが衝撃的すぎる度:☆☆☆☆☆

 

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