【絵本の紹介】「たんじょうび」【338冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

お店が3年目、息子が6歳を迎えたというわけで、今回は古典名作「たんじょうび」を紹介します。

作・絵:ハンス・フィッシャー

訳:大塚勇三

出版社:福音館書店

発行日:1965年10月1日

 

ハンス・フィッシャーさんを取り上げるのは初めてですね。

スイスを代表する絵本作家で、スイスの教科書にも彼の絵が使用されているのだとか(羨ましい……)。

世界中で訳され、愛されている彼の絵本は、もとはすべて自身の子どもたちのために作ったプライベートなもの。

 

まず、流麗な線が目を引きます。

表紙・扉絵を見てください。

一見ラフな線の動きが、実に活き活きとしたキャラクターの躍動感を生み出しています。

 

一筆書きで描いたように見える鶏や兎の絵、手を取り合って跳ねまわっている様子がありありと想像できる3匹の犬猫の絵。

フィッシャーさんの雄弁で勢いのある線は、全編通してリズミカルで、読者の目を離しません。

 

真似してグルグルと描いてみたくなりますが、どうしてどうして、フィッシャーさんのように描くのは物凄く難しい。

途中で線が止まったり迷ったりするとすぐわかります。

「崩して描く」絵本の絵はたくさんありますが、それは当然ながら「下手」とは違い、基礎としての画力がしっかりできていないと美しく崩せません。

その辺は書道と同じです。

 

さて、内容に入りましょう。

たくさんの動物たちに囲まれて暮らす「リゼッテおばあちゃん」。

犬の「ベロ」と猫の「マウリ」「ルリ」は家の中で寝、手伝いもしますがいたずらもします。

リゼッテおばあちゃんは動物たちみんなに愛情をもって接してくれます。

動物たちもリゼッテおばあちゃんが大好きです。

 

そんなリゼッテおばあちゃんは今日で76歳。

村へ買い物へ行き、牧師さんとお話をしようと、おばあちゃんは留守をベロたちに任せて出かけます。

 

そこでベロはおばあちゃんのためにサプライズバースデーパーティーを計画します。

マウリやルリ、その他の動物たちも一致団結。

でも、基本的に子どもそのものの動物たちですので、見ている読者をハラハラさせます。

 

焦がしてしまったケーキは砂糖をたっぷりかけて誤魔化します。

そしていよいよおばあちゃんが帰ってくると……。

素敵なパーティーの支度が整っています。

おたんじょうび おめでとう!

リゼッテおばあちゃん感涙。

 

さらにお芝居やイルミネーションといった演出もあり、最後は屋根裏に隠しておいたとっておきの贈り物を披露します。

それは(おそらくマウリとルリの間に生まれた)猫の赤ちゃんたちでした。

 

★      ★      ★

 

ラストシーンでは真夜中に子猫の一匹だけが起きて考え事をしている……という不思議な終わり方をしています。

これがあの「こねこのぴっち」へと続く伏線となっているのです。

 

「こねこのぴっち」は「たんじょうび」の続編として描かれたロングセラーですが、日本では「たんじょうび」よりも先に翻訳出版されています。

岩波書店の小さい絵本で読んだ方も多いのではないでしょうか。

 

「たんじょうび」「こねこのぴっち」とも、フィッシャーさんが末娘のために作った絵本です。

どちらの作品も、父親の甘やかな愛情に包まれたような幸せな世界を感じられます。

 

壁画などでも素晴らしい作品を遺したフィッシャーさんですが、健康には恵まれず、58歳にして永眠しました。

 

ちなみに作中登場する(焦がした)ケーキは「クグロフ」という種類のお菓子。

華やかで可愛らしい山のような独特の形が人気です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

誕生日プレゼントにオススメ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「たんじょうび

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

【絵本の紹介】「ぽちのきたうみ」【331冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休みに入った子どもたちも多いでしょう。

大人になってからの7〜8月なんてあっという間に過ぎ去ってしまいますが、同じ時間なのに子どもの頃は物凄く長く感じたものです。

 

今回はいわさきちひろさんの「ぽちのきたうみ」を紹介します。

作・絵:岩崎ちひろ

案:武市八十雄

出版社:至光社

発行日:1974年

 

いわさきさんについては過去記事も併せてお読みください。

≫【いわさきちひろ特別展】「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」に行ってきました。

 

案:武市八十雄」となっていますが、案とは作品のテーマとか方向性のようなものを示すことでしょうか。

作家にインスピレーションを与えるような意味かもしれません。

 

武市八十雄さんは有限会社至光社という出版社を創設された方で、松居直さんや佐藤英和さんらと共に戦後絵本界を支えた重鎮です。

絵本に魅せられて」(佐藤英和・こぐま社)で、上記の三名の座談会で、武市さんが目指す絵本の方向性について語られています。

 

「こどものとも」などを手掛ける松居さんが物語性を重視するのに対し、武市さんは感覚的な印象を重視し、絵本でなければできない表現にこだわります。

いわさきさんと共に生み出した志光社のシリーズでは、「考えさせる絵本よりも感じさせる絵本」を作ろうとした武市さんの信念が如実に反映されています。

 

それはもちろんいわさきちひろという類まれな才能によるところも大きいでしょう。

特にこの「ぽちのきたうみ」は、いわさき絵本の一つの到達点と呼べると思います。

それくらい絵の完成度が高い。

 

主人公の「ちいちゃん」が夏休みにお母さんと一緒におばあちゃんのいる海へ遊びに行くのですが、愛犬の「ぽち」を置いて行くことが気がかりで、心から楽しめないでいます。

すると、後から来たお父さんがぽちを連れてきてくれて大喜び。

それだけのストーリーですが、短いテキストから子どもの心情が切ないほどに伝わります。

淡い色彩によって描かれる、いわさきさん独自の輪郭のない黒目だけの子ども。

物理的存在感をぼかすことで、子どもの微細な感情や心魂が際立ちます。

そしてこの海の絵。

色彩の重なりや掠れ、滲みなどの変化によってこれほど雄弁な海辺の情景が描き出されるのは圧巻の一言。

 

しかも、空と海の色を変化させることで時間の流れも表現しています。

ぽちが到着してからの生き生きとしたちいちゃんの様子は、手足の動かし方の大きさで表現されています。

 

★      ★      ★

 

志光社のシリーズ絵本は同じ「ちいちゃん」を主人公にした「あめのひのおるすばん」「となりにきたこ」「ゆきのひのたんじょうび」などがありますが、どの作品も晩年のいわさきさんの完成された画力に圧倒されます。

いわさきさん自身も愛犬家として知られており、ちいちゃんは彼女自身のようです。

 

上で触れたように武市さんと松居さんの方向性は違いますが、二人はお互いを認め合い、それぞれ別の道を歩むことで日本の絵本界の可能性を拓いて行ったのです。

武市さんは座談会の終わりに「われわれはいちおうベースキャンプを作ったんだから、それから先へ上がるのは次の時代のエディターだ」と、次世代の絵本を担う人々への期待を込めて語っています。

 

それからもう40年近い月日が経ち、武市さんも2年前に逝去されましたが、果たして今の時代を天国からどう見られているのでしょうか。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

表現力度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ぽちのきたうみ

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【絵本の紹介】「あまがさ」【320冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

梅雨入りして、今年もじめじめした季節がきました。

ああ、うっとうしい……と不機嫌になる前に、こんな絵本を読んでみてはいかがでしょう。

 

あまがさ」。

作・絵:八島太郎

出版社:福音館書店

発行日:1963年8月25日

 

1960年代から増刷され続けているロングセラー。

今もって色あせない、眩しい光を放つ絵。

 

主人公の「モモ」は、三歳の女の子。

両親とも日本人ですが、ニューヨークに住んでいます。

 

誕生日にもらった赤い雨傘と長靴を早く使いたくてそわそわしています。

ところがあいにく天気のいい日が続き、なかなかモモは傘をさすことができません。

やっと雨が降った時、モモは慌てて長靴を履き、傘をもって外へ飛び出します。

 

ニューヨークのにぎやかな通りを、モモは大人になった気分で歩きます。

雨傘の上では雨が、聞いたこともない不思議な音楽を奏でていました。

幼稚園に行っても、モモは外の雨を見ていました。

 

帰り道も、来た道と同じテキストと絵で物語られます。

今では大人になったモモは、この時のことを覚えていません。

おぼえていても いなくても、これは、モモが うまれて はじめて あまがさを さした ひだったのです

 

★      ★      ★

 

子どもにとって、雨はわくわくするようなイベントです。

子どもはいつも何かが起こることを待ち望んでいます。

私たちにもそんな瑞々しい感性があったことを思い出させてくれる絵本です。

 

海外で暮らす日本人という設定は、海外旅行が一般的でない当時としては非常にモダンで、見返しや本文に描かれたニューヨークの街並みは、子どもたちに異国への憧れを生じさせたと思われます。

 

作者の八島太郎さんは実際にニューヨークに渡って活躍し、この「あまがさ」は「Umbrella」としてアメリカで発表され、コールデコット賞次席となった作品です。

華々しい経歴のように見えますが、八島さんは日本の軍国主義に反対したため10回にもわたって投獄されているのです。

 

第二次世界大戦時には、命の重要さを説き、日本兵に投降を呼びかけるビラを製作したことでも知られています。

当時としてはそうした行為は「非国民」扱いされ、非常な勇気のいることだったはずです。

 

八島さんの絵と作品、そして生き様は、戦後の日本絵本界を担った作家や編集者たちに多大な影響を与えました。

彼の絵に込められているのは、厳しい環境の中で、それでも平和を祈り続けた力です。

 

現代の絵本にそうした魂を揺さぶるような力があるかと言えば、とてもないでしょう。

それが悪いことだとは言いません。

芸術はすべて時代の中から生み出され、時代の影響を受けるものです。

 

しかし、それぞれの時代に生み出された絵本を読むとき、その時代そのものを感じ、考え、次世代に残していくことは大切な作業だと思います。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

モダン度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「あまがさ

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【絵本の紹介】「ぐりとぐらとくるりくら」【315冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

お久しぶりにあの2匹に登場してもらいましょう。

大人気ロングセラーシリーズ「ぐりとぐら」より、「ぐりとぐらとくるりくら」を紹介します。

作:中川李枝子

絵:山脇百合子

出版社:福音館書店

発行日:1992年10月31日

 

いや、本当に久しぶりですね。

これまでに紹介した彼らの活躍も併せてごらんください。

 

≫絵本の紹介「ぐりとぐら」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおきゃくさま」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおおそうじ」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのかいすいよく」

 

あの天才・宮崎駿監督をして映像化不可能と言わしめた独特の世界。

大人が読むとツッコミどころ満載で、何だかモヤモヤ。

でも、素直に楽しめる子どもたちには圧倒的人気。

まさに子どものための聖域絵本。

 

毎回平和でのんびりとした展開の中に、何とも不思議なゲストキャラ(サンタに見えないサンタ、人間にしか見えないうみぼうず……)が登場するシリーズですが、今作登場の「くるりくら」はその中でも特に奇妙です。

 

「くるりくら」、これ名前です。

もうネーミングセンスが一世紀くらい時代を先に行ってます。

一体何者かと言いますと……。

 

春の朝、例によってぐりとぐらは朝ごはんを作って原っぱで食べようと出かけます。

にんじん ピーマン ゆでたまご チーズ たまねぎ ほうれんそう キャベツ じゃがいも ぐりぐらサラダ

このリズム感こそぐりぐらワールドの真骨頂。

 

さて、原っぱへ到着すると、二匹の帽子が引っ張られます。

とりかな

かぜかな

さにあらず、現れたのは「てながうさぎ」の「くるりくら

一緒に朝ごはんを食べると、くるりくらは二匹を肩に乗せて木に登り、さらに雲を集めてボートを作り、乗り込みます。

その異様に長い手を使ってボートをこぐくるりくら。

自分の家までくるとお母さんに手を振ります。

でもお母さんは普通のうさぎ。

くるりくらを見て、「おまえのては どうして そんなに ながいの!」と驚きます。

 

実はくるりくらは元から「てながうさぎ」だったのではなく、「おまじないたいそう」によって一時的に手を伸ばしていたのです。

何を言ってるかわからないかもしれませんね。

私もわかりません。

 

三匹は10時のおやつを食べ(本当によく食べる絵本です)、くるりくらのお母さんが毛糸で作った縄跳びをもらって、ぐりとぐらは歌いながら飛び跳ねて帰って行きました。

 

★      ★      ★

 

「てながうさぎ」なんて、一体どうやってそんなもんを思いついたんでしょうか。

真面目に深く考えるとさっぱり意味の分からない物語に思えてしまいます。

 

この絵本の謎を解きたい大人は、とにかく一度声に出して読んでみましょう。

ぐりとぐらとくるりくら」。

何だか耳に残って、不思議としっくり馴染みます。

 

はるかぜ そよかぜ くるりくら

とびたい はねたい おどりたい

ぐりぐら ぐりぐら くるりくら

 

心が弾んで、じっとしていられなくなります。

これが絵本の魔法です。

音読した時に初めて本当にぐりぐらワールドに遊びに行けるのです。

 

文法とか意味とか以前に、言葉と言う「音」の持つ生命力を感じて、子どもたちは手を叩くのです。

我々大人はすでにそんな根源的な言葉の力を失っているように思います。

 

まあ、私もこの絵本の魅力に気づけたのはわりと最近です。

やっぱりそれまでは物語の内容とか意味とかばかり考えてしまって、楽しめていませんでした。

 

だって内容も絵も、あまりにも謎めいてますもの。

いまだにわからないのは、くるりくらが座っている椅子に結びつけられたぐるぐる巻きの「何か」の正体です。

最初凧かと思いました。

野菜かもしれません。

床に広げてある絵本には、うさぎが巨大なニンジンを紐で引っ張っているイラストがあります。

それと関連しているのでしょうか。

 

……などとしょうもないことを気にしているから素直に楽しめないんでしょうね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

とびたいはねたいおどりたい度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「さかな1ぴきなまのまま」【309冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私の息子も5歳半。

幼稚園にも保育所にも通っていないし、同じ年ごろの子どもがいる近しい親戚もないので、「友だち」と呼べる相手はひとりもいません。

限りなく自己中心的であり、たまに公園なんかで他の子と遊ぶ形になっても、ほんの短い時間だけのことです。

一緒に遊ぶことは楽しい時もあるけれど、むしろ邪魔に思っていることのほうが多そうです。

 

果たしてこれで大丈夫なのか、とたまに考えもしますが、しかし「大丈夫か」とは何が「大丈夫か」なのかと問うてみると、自分でもくだらない心配をしてる気にもなります。

 

友だちなんか成長するうちに自然にできるものだし、できなかったからといってそれが寂しいかどうかは当人の問題です。

考えてみれば小学校に入ったところで、たかだか30人程度の、それも同じ年の人間ばかり集めた集団の中で、必ず友だちを作らなければならないというのもちょっと無理のある話です。

 

それなのに大人たちは躍起になって「友だちを作りましょう」「友だちは素晴らしいもの」「友だちの輪」なんてお節介を焼きたがります。

その結果、友だちがいないことは恥ずかしいことであり、異端であるというような、おかしな偏見が子どもたちに植え付けられます。

休み時間に一人でトイレに行けないような、わけのわからない友だち関係ができたりします。

 

自分の本当の欲求より先に、「友だちがいない」(と思われる)ことへの恐れから、とにかく友だちが欲しいと焦ったり。

まるで結婚しない若者へのプレッシャーみたいな状況が発生するわけです。

実に不自由な国です。

 

今回は「友だち」について考えさせられる佐野洋子さんの作品を紹介します。

タイトルが実に粋ですね。

さかな1ぴきなまのまま」。

作・絵:佐野洋子

出版社:フレーベル館

発行日:1978年12月

 

 

キャンバス地の凹凸を生かした絵。

ねこの表情が凄まじく、謎のタイトルと相まって、いったいどんな内容の本かと手に取らずにはいられません。

そして読んでみないとどんな絵本かさっぱりわかりません。

 

おばあさんと暮らす「げんきな おとこの ねこ」。

この設定、同じ佐野さんの作品「だってだってのおばあさん」と一緒ですが、かと言って同一世界ではなさそう。

作者は「猫とおばあさん」の組み合わせを好んでいるみたいです。

 

≫絵本の紹介「だってだってのおばあさん」

 

さて、このねこの男の子が、「ほんとの ともだち」を探しに行こうとするところから物語は始まります。

ほんとの」なんて言ってるあたり、このねこも自意識過剰でありながら主体的ではなく、いかにも思春期の不安定な動機で友人を求めているようです。

 

おばあさんはあまり感心せず、さりとて止めもせず、「きょうの よるは、 おまえの すきな さかなの しおやき」と言うだけ。

複雑なおばあさんの感情には何も気づかず、ねこは元気に出発します。

 

途中、地面に落ちている縄を見つけますが、それが縄にあらずへび。

ねこはへびが苦手らしく、ぞっとしてその場を立ち去ろうとしますが、このへびはやたら友好的かつ積極的。

とにかくへびを避けたいねこに、礼儀正しい態度のまま、どこまでもついてきます。

 

ちゃんとした」友だちを探しているねことしては、「ひもみたいな」へびは相応しい相手とは思えません。

仲良くなろうとする気配をぐいぐい出してくるへびを振り切って、やっと見つけた二匹の娘のねこに話しかけます。

ところが、勇気を出して話しかけたのに、ねこは笑われ、相手にもされません。

ひどく傷ついたねこに、いつの間にか追いついてきたへびがまた話しかけ、慰めます。

 

それでもねこは一人で歩き出そうとしますが、「なにか」が襲い掛かってきて慌てて逃げ出します。

へびのアドバイスに従い、木の上に上って「なにか」をやり過ごします。

少しずつねこはへびに対する嫌悪や偏見を和らげていきます。

なんとなく離れがたくなって、とうとうへびを家に連れて帰ります。

 

魚の塩焼きを準備していたおばあさんは「こんやは かえらないかと おもった」。

ねこはもじもじしながら、「さかな 一ぴきは やかなくて いいんだ」。

へびは魚は生のまま食べるのです。

 

そこでおばあさんは「さかな一ぴき なまね」。

と台所に戻ります。

 

★      ★      ★

 

ねこが漠然と思い描いていた「ともだち」とは、結局のところ自分の外的な評価や価値を上げてくれるような存在です。

完全に自立し、独立した人間同士としての関係を築くことができないのは、精神的に未熟だからです。

 

よくよく見渡せば、大人になってもいまだにそうした未熟な状態から羽化できないまま、満たされない関係に飢えている人が大勢います。

特に恋愛関係にその性質が表れています。

 

いつまでたっても「個」を扱いかねている社会で、「個」になり切れない大人たちが、子どもたちの友だち関係を心配するなんて百年早いと思うのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

「なにか」ってなんだよ度:☆☆☆☆☆

 

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