2024.01.29 Monday
【絵本の紹介】「うたいましょうおどりましょう」【471冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは「うたいましょうおどりましょう」です。
作・絵:ベラ・B・ウィリアムズ
訳:佐野洋子
出版社:あかね書房
発行日:1999年12月1日
かなり前にこのブログで取り上げた「かあさんのいす」から繋がるお話です。
(たぶん)カリフォルニアに住む主人公、母、祖母の女ばかりの家族。
下町の人情や逞しい暮らしぶりなどが伝わる物語の雰囲気は健在。
この「うたいましょうおどりましょう」の前に「ほんとにほんとにほしいもの」という作品があり、「かあさんのいす」三部作ということになっています。
家に父親はおらず、母親の稼ぎが一家を支えています。
火事に遭って焼け出されたり、なかなか辛い経験をしてきた一家ですが、嘆いたり悲しんだりせず、日々明るく一生懸命。
しかし生活は決して楽ではない。
みんなで貯めたお金で買った素敵な「かあさんのいす」は最近では空っぽ。
母さんは以前よりもっと働かなくてはならず、それなのにあのお金を貯めていた瓶も空っぽという状況です。
その理由はおばあちゃんが病気で寝ているから。
いつも優しく明るいおばあちゃんは主人公の少女だけでなく、その友達からも慕われる人気者。
そんなおばあちゃんが病気とあって少女たちは寂しそうにしています。
主人公は前作で買ったアコーディオンの練習を続けています。
その時彼女に名案が浮かびます。
仲間たちと音楽バンドを結成してお金を稼ごうというのです。
おばあちゃんに考えを伝えると、「あんたたちならできると思うね」と励ましてくれます。
そこで主人公は仲良し四人組で猛練習を始めます。
音楽の先生やおばさんに演奏を見てもらいながら。
そしてついに初めての仕事がやってきます。
友だちのレオラのお母さんから、お店の五十周年パーティーで音楽を演奏してほしいという依頼です。
近所の人たちもみんな集まったパーティーの日、緊張しながらも少女たちは演奏を始めます。
みんなは浮き浮きして踊り出します。
演奏は大成功。
レオラの曽祖父母からも感謝され、レオラは母親からお金の入った封筒を受け取ります。
みんなはお金を4等分し、主人公はあの大きな瓶にお金を入れるのでした。
★ ★ ★
実を言うと私はこの手の話を見ると悲しくなってしまうんです。
上記した通り、作品そのものはとても明るく力強く、惨めさや辛さを微塵も感じさせませんけど、貧しさから働きづめに働かなくてはならない母親とか、そんな家庭の事情を知っているから健気に貯金したり、自分でもお手伝いやお金を稼ぐ手段を考える娘とか、無性に泣きそうな気持になってしまうんですね。
どうかこの家族がお金に困らず、幸せに暮らしてほしい。
娘はアルバイトしたお金を自分の好きなように使って欲しい。
主人公がアコーディオンを買う経緯は前作「ほんとにほんとにほしいもの」で描かれていますが、それもまた泣ける。
もちろんそれは私の個人的な感傷で、こうした暮らしの中で深まる家族の絆や、町の人々の温かさなど、勇気づけられる物語であることは言うまでもありません。
決して暗い雰囲気にならないのは、鮮やかな水彩画の楽しさによるところも大きいでしょう。
人々の表情も実に豊か。
暮らしぶりは現代日本とは違う部分も多いけど、家族や町の人々といった共同体の温かさ、絆といったものはしっかりと読者の心に届くでしょう。
絵柄は三部作通してほぼ変化しませんが、一作目に比べると主人公がずいぶんと美人になった気が。
心身ともに成長しているってことでしょうかね。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
一作目からの主人公の成長度:☆☆☆☆☆
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