【絵本の紹介】「あまがさ」【320冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

梅雨入りして、今年もじめじめした季節がきました。

ああ、うっとうしい……と不機嫌になる前に、こんな絵本を読んでみてはいかがでしょう。

 

あまがさ」。

作・絵:八島太郎

出版社:福音館書店

発行日:1963年8月25日

 

1960年代から増刷され続けているロングセラー。

今もって色あせない、眩しい光を放つ絵。

 

主人公の「モモ」は、三歳の女の子。

両親とも日本人ですが、ニューヨークに住んでいます。

 

誕生日にもらった赤い雨傘と長靴を早く使いたくてそわそわしています。

ところがあいにく天気のいい日が続き、なかなかモモは傘をさすことができません。

やっと雨が降った時、モモは慌てて長靴を履き、傘をもって外へ飛び出します。

 

ニューヨークのにぎやかな通りを、モモは大人になった気分で歩きます。

雨傘の上では雨が、聞いたこともない不思議な音楽を奏でていました。

幼稚園に行っても、モモは外の雨を見ていました。

 

帰り道も、来た道と同じテキストと絵で物語られます。

今では大人になったモモは、この時のことを覚えていません。

おぼえていても いなくても、これは、モモが うまれて はじめて あまがさを さした ひだったのです

 

★      ★      ★

 

子どもにとって、雨はわくわくするようなイベントです。

子どもはいつも何かが起こることを待ち望んでいます。

私たちにもそんな瑞々しい感性があったことを思い出させてくれる絵本です。

 

海外で暮らす日本人という設定は、海外旅行が一般的でない当時としては非常にモダンで、見返しや本文に描かれたニューヨークの街並みは、子どもたちに異国への憧れを生じさせたと思われます。

 

作者の八島太郎さんは実際にニューヨークに渡って活躍し、この「あまがさ」は「Umbrella」としてアメリカで発表され、コールデコット賞次席となった作品です。

華々しい経歴のように見えますが、八島さんは日本の軍国主義に反対したため10回にもわたって投獄されているのです。

 

第二次世界大戦時には、命の重要さを説き、日本兵に投降を呼びかけるビラを製作したことでも知られています。

当時としてはそうした行為は「非国民」扱いされ、非常な勇気のいることだったはずです。

 

八島さんの絵と作品、そして生き様は、戦後の日本絵本界を担った作家や編集者たちに多大な影響を与えました。

彼の絵に込められているのは、厳しい環境の中で、それでも平和を祈り続けた力です。

 

現代の絵本にそうした魂を揺さぶるような力があるかと言えば、とてもないでしょう。

それが悪いことだとは言いません。

芸術はすべて時代の中から生み出され、時代の影響を受けるものです。

 

しかし、それぞれの時代に生み出された絵本を読むとき、その時代そのものを感じ、考え、次世代に残していくことは大切な作業だと思います。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

モダン度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「あまがさ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「ぐりとぐらとくるりくら」【315冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

お久しぶりにあの2匹に登場してもらいましょう。

大人気ロングセラーシリーズ「ぐりとぐら」より、「ぐりとぐらとくるりくら」を紹介します。

作:中川李枝子

絵:山脇百合子

出版社:福音館書店

発行日:1992年10月31日

 

いや、本当に久しぶりですね。

これまでに紹介した彼らの活躍も併せてごらんください。

 

≫絵本の紹介「ぐりとぐら」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおきゃくさま」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおおそうじ」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのかいすいよく」

 

あの天才・宮崎駿監督をして映像化不可能と言わしめた独特の世界。

大人が読むとツッコミどころ満載で、何だかモヤモヤ。

でも、素直に楽しめる子どもたちには圧倒的人気。

まさに子どものための聖域絵本。

 

毎回平和でのんびりとした展開の中に、何とも不思議なゲストキャラ(サンタに見えないサンタ、人間にしか見えないうみぼうず……)が登場するシリーズですが、今作登場の「くるりくら」はその中でも特に奇妙です。

 

「くるりくら」、これ名前です。

もうネーミングセンスが一世紀くらい時代を先に行ってます。

一体何者かと言いますと……。

 

春の朝、例によってぐりとぐらは朝ごはんを作って原っぱで食べようと出かけます。

にんじん ピーマン ゆでたまご チーズ たまねぎ ほうれんそう キャベツ じゃがいも ぐりぐらサラダ

このリズム感こそぐりぐらワールドの真骨頂。

 

さて、原っぱへ到着すると、二匹の帽子が引っ張られます。

とりかな

かぜかな

さにあらず、現れたのは「てながうさぎ」の「くるりくら

一緒に朝ごはんを食べると、くるりくらは二匹を肩に乗せて木に登り、さらに雲を集めてボートを作り、乗り込みます。

その異様に長い手を使ってボートをこぐくるりくら。

自分の家までくるとお母さんに手を振ります。

でもお母さんは普通のうさぎ。

くるりくらを見て、「おまえのては どうして そんなに ながいの!」と驚きます。

 

実はくるりくらは元から「てながうさぎ」だったのではなく、「おまじないたいそう」によって一時的に手を伸ばしていたのです。

何を言ってるかわからないかもしれませんね。

私もわかりません。

 

三匹は10時のおやつを食べ(本当によく食べる絵本です)、くるりくらのお母さんが毛糸で作った縄跳びをもらって、ぐりとぐらは歌いながら飛び跳ねて帰って行きました。

 

★      ★      ★

 

「てながうさぎ」なんて、一体どうやってそんなもんを思いついたんでしょうか。

真面目に深く考えるとさっぱり意味の分からない物語に思えてしまいます。

 

この絵本の謎を解きたい大人は、とにかく一度声に出して読んでみましょう。

ぐりとぐらとくるりくら」。

何だか耳に残って、不思議としっくり馴染みます。

 

はるかぜ そよかぜ くるりくら

とびたい はねたい おどりたい

ぐりぐら ぐりぐら くるりくら

 

心が弾んで、じっとしていられなくなります。

これが絵本の魔法です。

音読した時に初めて本当にぐりぐらワールドに遊びに行けるのです。

 

文法とか意味とか以前に、言葉と言う「音」の持つ生命力を感じて、子どもたちは手を叩くのです。

我々大人はすでにそんな根源的な言葉の力を失っているように思います。

 

まあ、私もこの絵本の魅力に気づけたのはわりと最近です。

やっぱりそれまでは物語の内容とか意味とかばかり考えてしまって、楽しめていませんでした。

 

だって内容も絵も、あまりにも謎めいてますもの。

いまだにわからないのは、くるりくらが座っている椅子に結びつけられたぐるぐる巻きの「何か」の正体です。

最初凧かと思いました。

野菜かもしれません。

床に広げてある絵本には、うさぎが巨大なニンジンを紐で引っ張っているイラストがあります。

それと関連しているのでしょうか。

 

……などとしょうもないことを気にしているから素直に楽しめないんでしょうね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

とびたいはねたいおどりたい度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ぐりとぐらとくるりくら

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【絵本の紹介】「さかな1ぴきなまのまま」【309冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私の息子も5歳半。

幼稚園にも保育所にも通っていないし、同じ年ごろの子どもがいる近しい親戚もないので、「友だち」と呼べる相手はひとりもいません。

限りなく自己中心的であり、たまに公園なんかで他の子と遊ぶ形になっても、ほんの短い時間だけのことです。

一緒に遊ぶことは楽しい時もあるけれど、むしろ邪魔に思っていることのほうが多そうです。

 

果たしてこれで大丈夫なのか、とたまに考えもしますが、しかし「大丈夫か」とは何が「大丈夫か」なのかと問うてみると、自分でもくだらない心配をしてる気にもなります。

 

友だちなんか成長するうちに自然にできるものだし、できなかったからといってそれが寂しいかどうかは当人の問題です。

考えてみれば小学校に入ったところで、たかだか30人程度の、それも同じ年の人間ばかり集めた集団の中で、必ず友だちを作らなければならないというのもちょっと無理のある話です。

 

それなのに大人たちは躍起になって「友だちを作りましょう」「友だちは素晴らしいもの」「友だちの輪」なんてお節介を焼きたがります。

その結果、友だちがいないことは恥ずかしいことであり、異端であるというような、おかしな偏見が子どもたちに植え付けられます。

休み時間に一人でトイレに行けないような、わけのわからない友だち関係ができたりします。

 

自分の本当の欲求より先に、「友だちがいない」(と思われる)ことへの恐れから、とにかく友だちが欲しいと焦ったり。

まるで結婚しない若者へのプレッシャーみたいな状況が発生するわけです。

実に不自由な国です。

 

今回は「友だち」について考えさせられる佐野洋子さんの作品を紹介します。

タイトルが実に粋ですね。

さかな1ぴきなまのまま」。

作・絵:佐野洋子

出版社:フレーベル館

発行日:1978年12月

 

 

キャンバス地の凹凸を生かした絵。

ねこの表情が凄まじく、謎のタイトルと相まって、いったいどんな内容の本かと手に取らずにはいられません。

そして読んでみないとどんな絵本かさっぱりわかりません。

 

おばあさんと暮らす「げんきな おとこの ねこ」。

この設定、同じ佐野さんの作品「だってだってのおばあさん」と一緒ですが、かと言って同一世界ではなさそう。

作者は「猫とおばあさん」の組み合わせを好んでいるみたいです。

 

≫絵本の紹介「だってだってのおばあさん」

 

さて、このねこの男の子が、「ほんとの ともだち」を探しに行こうとするところから物語は始まります。

ほんとの」なんて言ってるあたり、このねこも自意識過剰でありながら主体的ではなく、いかにも思春期の不安定な動機で友人を求めているようです。

 

おばあさんはあまり感心せず、さりとて止めもせず、「きょうの よるは、 おまえの すきな さかなの しおやき」と言うだけ。

複雑なおばあさんの感情には何も気づかず、ねこは元気に出発します。

 

途中、地面に落ちている縄を見つけますが、それが縄にあらずへび。

ねこはへびが苦手らしく、ぞっとしてその場を立ち去ろうとしますが、このへびはやたら友好的かつ積極的。

とにかくへびを避けたいねこに、礼儀正しい態度のまま、どこまでもついてきます。

 

ちゃんとした」友だちを探しているねことしては、「ひもみたいな」へびは相応しい相手とは思えません。

仲良くなろうとする気配をぐいぐい出してくるへびを振り切って、やっと見つけた二匹の娘のねこに話しかけます。

ところが、勇気を出して話しかけたのに、ねこは笑われ、相手にもされません。

ひどく傷ついたねこに、いつの間にか追いついてきたへびがまた話しかけ、慰めます。

 

それでもねこは一人で歩き出そうとしますが、「なにか」が襲い掛かってきて慌てて逃げ出します。

へびのアドバイスに従い、木の上に上って「なにか」をやり過ごします。

少しずつねこはへびに対する嫌悪や偏見を和らげていきます。

なんとなく離れがたくなって、とうとうへびを家に連れて帰ります。

 

魚の塩焼きを準備していたおばあさんは「こんやは かえらないかと おもった」。

ねこはもじもじしながら、「さかな 一ぴきは やかなくて いいんだ」。

へびは魚は生のまま食べるのです。

 

そこでおばあさんは「さかな一ぴき なまね」。

と台所に戻ります。

 

★      ★      ★

 

ねこが漠然と思い描いていた「ともだち」とは、結局のところ自分の外的な評価や価値を上げてくれるような存在です。

完全に自立し、独立した人間同士としての関係を築くことができないのは、精神的に未熟だからです。

 

よくよく見渡せば、大人になってもいまだにそうした未熟な状態から羽化できないまま、満たされない関係に飢えている人が大勢います。

特に恋愛関係にその性質が表れています。

 

いつまでたっても「個」を扱いかねている社会で、「個」になり切れない大人たちが、子どもたちの友だち関係を心配するなんて百年早いと思うのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

「なにか」ってなんだよ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ごきげんならいおん」【304冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「ごきげんならいおん」です。

作:ルイーズ・ファティオ

絵:ロジャー・デュボアザン

訳:村岡花子

出版社:福音館書店

発行日:1964年4月1日

 

ルイーズ・ファティオさんとロジャー・デュボアザンさんによる夫婦共作絵本。

彼らによるクリスマスの名作「クリスマスの森」を翻訳して柿本幸造さんが挿絵を差し替えた「サンタおじさんのいねむり」という作品を以前取り上げました。

 

≫絵本の紹介「サンタおじさんのいねむり」

 

やや長めの文章と、示唆に富んだ物語から、5、6歳〜小学校中級向きの絵本です。

デュボアザンさんの絵本は自分で文を書いたものも含めて、割とそれくらいの年齢向きの作品が多いです。

 

だから、有名な作品であるにもかかわらず、うっかりすると読む時期を逸してしまいがちな絵本でもあります。

絵本はいくつになったって読んでもらえば楽しいし、自分で読んだって少しもおかしくはない芸術作品なのだということを、もっと子どもたちに伝えていければと思います。

 

さて、内容に入ります。

 

美しいフランスの町中の公園内にある動物園に住む「いつもごきげんな らいおん」。

堀をめぐらした岩山を住居とし、町の人々からも愛され、夏になると同じ公園内の野外音楽堂から流れるワルツやポルカを楽しみ、自分の境遇に心から満足しています。

ある朝、らいおんは飼育係がうっかり戸を閉め忘れているのに気づきます。

らいおんはちょっと考えて、せっかくなのでいつも自分に挨拶してくれる町の人たちに会いに行こうと考えます。

いつも むこうから きてくれるのだから、きょうは おかえしにでかけなくちゃ」。

 

町に繰り出すらいおん。

顔見知りの「デュポンこうちょうせんせい」や「三にんの おばさん」「パンソンおばさん」といった人たちに会うたびに、らいおんは礼儀正しくお辞儀をして挨拶をするのですが、彼らはみんな、らいおんを見ると気絶したり逃げ出したり買い物袋を投げつけたり。

楽隊に近づいて行っても大騒ぎが起こります。

らいおんは困惑し、「このまちのひとたちは どうぶつえんに こないときは、いつも こんなふうにしてるんだな」と考えます。

 

一人くらいはまともに挨拶できる友達はいないものかと歩いて行くと、消防自動車が飛び出してきて、消防士たちが太いホースを手に、そろりそろりとらいおんに近づいてきます。

らいおんは何が始まるのかと思って黙って見ています。

 

すると突然後ろから声をかけられます。

やあ、ごきげんな らいおんくん

 

振り向くと、「しいくがかりの むすこの フランソワ」が立っています。

やっと普通に声をかけてくれる友達に会えたらいおんはすっかりごきげんになり、フランソワと一緒に公園へ帰るのでした。

 

★      ★      ★

 

あわや、というところでのフランソワの登場には心からほっとさせられます。

いつの時代も大人は偏見と先入観に囚われ、子どもは本質を見抜くものです。

 

そういう風刺的な物語でもあるのですが、一方、この「ごきげんならいおん」はあまりにも己が他者からどう見られているかを知らず、無邪気すぎるとも言えます。

けれど、この体験を経た後のらいおんの態度は見事なものです。

 

自分が堀の中の家にいさえすれば、会いにやってくる人々は行儀よく理知的に振る舞うのならば、らいおんはもう家から出て行こうとは思わないのです。

「自由に振る舞う」ということは、必ずしも正味の自分をさらけ出して我を押し通すことではないのです。

 

このらいおんは自分にとっての幸せが何かを知っており、外的な価値観や偏見に左右されることがありません。

「動物園の動物は幸せと言えるのか」という問いや、「動物は野生に帰るべきだ」という声も、このらいおんには関係ありません。

 

外的に迫ってくる「こうあらねばならない自分」という概念から自由であること。

それこそが真に自由な精神であり、幸せに生きるための秘訣でもあるのです。

 

続編≫「三びきのごきげんならいおん」

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

飼育係失格度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ごきげんならいおん

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【絵本の紹介】「くまのコールテンくん」【303冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私の仕事場には絵本のキャラクターたちのぬいぐるみがいくつも飾られています。

好きなものに囲まれているとテンションが上がります。

 

息子も割とぬいぐるみ好きです。

 

しかし、子どものぬいぐるみの愛し方は大人のそれとは違いがあるようです。

大人はやっぱり大事に綺麗に飾っておきたがるものですが、子どもにとってぬいぐるみは飾るものではないんですね。

 

常に引っ張り倒し、いじりたおし、こねくり回します。

時には乱暴な扱いに見えても、それが子どもにとってのぬいぐるみの可愛がり方なのでしょう。

 

今回は「くまのコールテンくん」を紹介します。

作・絵:ドン・フリーマン

訳:松岡享子

出版社:偕成社

発行日:1975年5月

 

ビロードうさぎ」や「こんとあき」と並んで「子どもとぬいぐるみの絆」を描いた名作です。

 

≫絵本の紹介「ビロードうさぎ」

≫絵本の紹介「こんとあき」

 

コールテンくんは、大きなデパートのおもちゃ売り場に陳列されているくまのぬいぐるみ。

他のぬいぐるみや人形たちと同様、早く誰かのうちに連れて行ってもらえるのを楽しみにしています。

ある日、母親に連れられた女の子が、コールテンくんに目を留めます。

あたし、ずっとまえから こんな くまが ほしかったの

 

でも、母親はコールテンくんのズボンのボタンが取れているのを見て「しんぴんじゃないみたい」と買ってくれません。

がっかりしたコールテンくんは、夜になってからボタンを探しに行くことにします。

 

深夜、誰もいなくなったデパートで、コールテンくんはこっそり動き出します。

エスカレーターに乗ったり、家具売り場に迷い込んだり。

 

コールテンくんは初めての冒険に興奮しながら、最後は売り物のベッドに付いているボタンを引っ剥がそうとして電気スタンドを倒してしまいます。

音を聞きつけた警備員のおじさんが飛んできます。

ベッドの上のコールテンくんを見つけて、

こいつあ おどろいた! どうして おまえが、こんなところに いるんだ?

と、コールテンくんを元の棚に戻します。

次の朝、デパートが開くと同時に昨日のリサという女の子が来店します。

コールテンくんを見つけてにっこり笑い、

あたし、あなたを つれに きたのよ

 

リサは自分の貯金をおろしてコールテンくんを買いに来たのでした。

彼女はコールテンくんを箱にも入れずに抱いて帰り、ズボンのボタンを付けてあげます。

 

★      ★      ★

 

フリーマンさんの絵がとても素敵です。

はっきりした線と色で、どのカットからも生き生きとした動きが読み取れます。

 

一枚の絵からコールテンくんの動きの先までちゃんとわかるのです。

コールテンくんや他のデパートのぬいぐるみたちの微妙な表情の変化が、子どもにとってのリアリティを生んでいます。

 

ぬいぐるみたちはあくまで物言わぬ存在として描かれる一方で、最終シーンではリサとコールテンくんは会話を成立させています。

リサもコールテンくんも、「ずっとまえから……してみたかったんだ」という言い回しを繰り返しますが、最後に二人の願いが通じ合うのです。

「運命の出会い」というものは「ずっと前から待っていた」誰かに巡り会うことですが、ぬいぐるみと子どもには確かにこの「運命の出会い」が存在するのでしょう。

 

私が持っていた「こぐまちゃんとしろくまちゃん」のぬいぐるみはすっかり息子のお気に入りとなり、しょっちゅう話しかけています。

何故か何度直しても服は全部脱がせてしまうし、放り投げるし、折り曲げるし……。

 

壊されそうでハラハラしてしまいますが、これも息子の成長に必要なことなのだろうと、今はもう諦めています。

あるいはそれこそが正しいぬいぐるみの可愛がり方なのかもしれません。

 

でも、新しく買ったぬいぐるみたちは、息子に見せずに仕事場に飾ることにしています。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

絵と物語と人物の素直さ度:☆☆☆☆☆

 

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