【絵本の紹介】「ふたりはいっしょ」【249冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもに読み聞かせるのとはまた別の楽しみがあるのが、絵本の一人読み。

とは言うものの、例えば梅雨のじめじめした、なんとなく気分の晴れないような日には、「絵本でも読むか」という気にはなりにくいものです。

 

やっぱり絵本というものは、心に余裕がある時の方が読みたくなるようです。

しかし、中にはそういうモヤモヤした気分の時でも楽しめる絵本もあります。

むしろそういう気分の時こそ、ふと手が伸びる絵本が、「がまくんとかえるくん」シリーズです。

 

この二人の間に流れる空気、繰り返される会話、それらは滑稽でありながら人生の哀しみや温かみに溢れ、読んでいるうちに不思議と心に落ち着きを取り戻すことができるのです。

 

今回は「ふたりはいっしょ」を紹介します。

作・絵:アーノルド・ローベル

訳:三木卓

出版社:文化出版局

発行日:1972年11月10日

 

以前、「ふたりはともだち」を取り上げました。

よろしければ併せてお読みください。

≫絵本の紹介「ふたりはともだち」

 

悲観的で出不精で内向的ながまくんと、楽観的でおおらかで積極的なかえるくんの凸凹コンビ。

今回も5つの短編集で構成されています。

まずは<よていひょう>。

一日の予定を紙に書き、それらを消化するごとに律儀に線を引いて消すがまくん。

 

なんともじりじりしますが、予定表が風に飛ばされてしまうと、もう「なんにも しないでいるより しかたない」と、悲しそうに座り込むがまくん。

本当に、こういう性格の彼にとって、生きて行くことは大変なんだろうと思います。

 

でも、そのがまくんに付き合って一日中隣で座っているかえるくんの存在により、がまくんは救われているのです。

最後の、「ぼく うれしいよ」というかえるくんのセリフは、読めば読むほど様々な感情を揺り起こされ、じーんとします。

 

<はやく めを だせ>では、かえるくんの素晴らしい庭に触発されたがまくんが、珍しくやる気を出して庭づくりに取り組みます。

なかなか芽を出さない種に、本を読んだり、歌を歌ったり、詩を朗読したり、音楽を聴かせたり。

 

がまくんの「とても たいへんな しごとだったよ」から、あるいは子育てのお話なのかしら……というのは、私の個人的な読み。

クッキーを食べるのを止められなくなった二人が、「意志力」を得るために、どうにかしてクッキーを食べずにいようとする<クッキー>。

これは例によって仲良し二人の「遊び」です。

最後までかえるくんに付き合った末に、がまくんがさらりとオチをつけます。

 

<こわくないやい>は、自分たちの勇気を試すお話。

互いにがたがた震えているのに、互いを勇敢だと褒め合う二人。

 

そしてラストに、最も深いお話の<がまくんのゆめ>。

夢の中、がまくんは妙な口上に乗せられて、舞台の上でピアノを弾き、綱渡りをし、ダンスを披露します。

それを客席からかえるくんが観ています。

 

がまくんは芸をするたびにかえるくんに向かって「きみは……できるかい?」と言います。

かえるくんは「いいや」と返事をし、そのたびに小さくなっていき、とうとう見えなくなってしまいます。

 

我に返ったがまくんは、自分のしたことを後悔し、口上に対し「だまれ!」と叫びます。

かえって きておくれよ、かえるくん

がまくんが悲痛な叫びと共に目を覚ますと、ベッドのわきにかえるくんが立っています。

 

ぼく きみが きて くれて うれしいよ

いつだって きてるじゃないか

 

★      ★      ★

 

<がまくんのゆめ>は、何度読んでも、がまくんの「ぼく ひとりぼっちに なっちゃうよ!」で泣いてしまいます。

 

友だち関係はほとんどの場合において非対称であり、精神的に「甘え、甘えられる」がまくんとかえるくんのような関係は、現実に珍しいものではありません。

しかし、「甘える」側の人間は、相手を大切に思いながらも、どこかでその相手から圧を感じたり、劣等感を抱いたりするものかもしれません。

がまくんの夢の中の声は、がまくん自身の無意識の声なのです。

 

それにしても、今回がまくんはバイオリンを弾いたり、クッキーを焼いたり、園芸をしたり、意外と活動的な面を見せます。

芸術家肌なんですかね。

 

だからこそ、すぐに殻にこもってしまうところがあるのかもしれません。

彼がかえるくんを必要とする気持ちがよくわかる一冊になっています。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

気分晴れやか度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ふたりはいっしょ

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URL:http://ehonizm.com/

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【絵本の紹介】「ともだちや」【246冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家の息子(4)は幼稚園や保育所に通っていないので、およそ友達と呼べる相手はまだいません。

公園などで同じくらいの年の子どもと一緒に遊ぶことはあります。

 

しかし、当たり前の話かもしれませんが、その遊び方は超絶自己中心的。

大体、相手の持っているおもちゃだけが目当てだったり、ほんのひと時一緒に遊んでも、すぐに自分の世界に戻って、もう見向きもしなかったり。

 

やっぱりもっとたくさんの友達体験をさせるべきでしょうか。

心配な気もするし、焦ってもしょうがない気もするし。

 

子どもの頃の友達は何物にも代えがたい宝物だと言いますし、それはその通りだとは思いますが、しかし一方で子どもの友達付き合いは、互いの未成熟ゆえに不安定で歪な面が大きいもの。

小学生くらいの子どもたちを観察していると、彼らの関係性は、けっして大人たちが(自分たちの子ども時代を忘れて)目を細めるような牧歌的なものではありません。

 

むき出しの自己、危うい自己肯定感、攻撃性、不寛容、依存心……それらが常にぶつかり合い、形容しがたい緊張状態に晒されています。

もちろん、そういう摩擦の中で互いに学び、真にぬくもりのある対等な信頼関係を構築できれば、それは一生の宝物になるでしょう。

 

私個人は、子どもの頃のような友人関係をもう一度持ちたいとは思いません。

精神的にハードすぎます。

ノスタルジィから「あの頃の友達は最高だった」と言う気持ちは理解できますけど、たぶん大人になってからではあの関係はとても「もたない」でしょう。

 

前置きが長くなりましたが、今回紹介する絵本は「ともだちや」です。

作:内田麟太郎

絵:降矢なな

出版社:偕成社

発行日:1998年1月

 

20年間で全11冊(たぶん完結)が描かれた人気シリーズ「おれたち、ともだち!」。

子どもたちにもわかりやすい形で「ともだち」をテーマにしています。

 

物語の案内役的存在であるミミズクのじいさんの独り言から始まります。

いちじかん ひゃくえん」で寂しい人の友達になるという変わった商売を始めたキツネ。

そこに声をかけたのは、一匹のオオカミ。

ちょっと怖そうですが、オオカミは普通にトランプの相手をしろ、と言います。

ひとしきり遊んだ後、キツネがお代を要求すると……。

この顔。

食べられてしまうのかとドキッとしますが、オオカミは「おまえは、ともだちから かねを とるのか」と憤慨。

 

オオカミは最初からキツネを「ともだちや」としてではなく、「ともだち」として呼んでいたのです。

 

二人は明日も明後日も遊ぶ約束をし、キツネはスキップしながら帰ります。

 

★      ★      ★

 

実はキツネは「もりいちばんの さびしんぼう」で、友だちが欲しかったのだというお話。

不器用ですね。

 

リアクションにヒリヒリ感のあるオオカミは、子どもたちにとってまさに未知の恐怖や魅力を持った「ともだち」です。

今後、キツネとオオカミは上手くやっていけるのでしょうか。

それは、続編を読み進めていくとわかります。

シリーズ通して読むと、徐々に関係を深めていく二人への共感が湧いてきます。

 

しかし、今では「ともだちや」なんて商売も当たり前に成立しそうですねえ。

いや、すでに成立してるのかな。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

オオカミのオーバーアクション度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「コケッコーさんはこだくさん」【241冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はちょっと変わった絵本として、「立体制作物による写真絵本」というものを紹介します。

アニメ化もされた「コケッコーさん」シリーズの第一作「コケッコーさんはこだくさん」。

作:かろくこうぼう

出版社:フレーベル館

発行日:2007年1月

 

作者のかろくこうぼうさんは、にしやまかずひろさんとうらのかろくさんのユニットです。

一見するとCGのように見えますが、これらは木や粘土を使って制作した人形や小物を、写真撮影したものです。

 

そのせいか、どことなしにCGとは違うレトロな味が漂っています。

そして、内容も昭和テイスト。

コケッコーさんは10匹のひよこたちのお母さん。

家事に育児に振り回されて、超多忙な毎日。

 

じっとしないひよこたちを連れて、買い物に行くのも一苦労。

なんとかうまい方法はないかと知恵を絞って、ひよこを収納するエプロンを自作しますが、色々と不具合が生じます。

失敗と試行錯誤の末、辿り着いたのは浮き輪型エプロン。

家の仕事も食事も買い物も、このエプロンにひよこを乗せたまま楽々と片付けます。

ただし、お風呂の時間だけはやっぱりてんてこまいなのでした。

 

★      ★      ★

 

作り込まれた小物類が楽しいです。

手触りや温もりが伝わってきて、子どもにも受けます。

 

内容の方は正直なところ、コケッコーさんが気の毒過ぎて辛くなりますが。

 

こういう家事育児をバンバンこなすタフなお母さんがいて、騒がしいけど温もりのある大家族を「いいもの」とする風潮も、最近では遠のいたように思います。

だって、どう考えても母親の負担が大きすぎますものね。

 

我が家でも二人目を考えなくはないのですが、息子一人でも限界近くしんどいので、今のところは予定なしです。

子どもを育てるにあたって現実的に必要なものは畢竟「金と体力」だと思います。

 

若い時は金がないし、年を取ると体力がない。

いや、今では「金も体力もない」夫婦がどんどん増えてるのかもしれません。

 

国が掲げる少子化対策も期待できるものは全然ないですし。

「金と体力」の不足を何で埋めるのかというと、結局コケッコーさんのように個人の工夫と「根性」みたいな精神論に頼ることになります。

それはやっぱりおかしいと思うのですね。

 

あれ、なんか作品とあんまり関係のない話になってしまった……。

いや、この絵本自体は面白いし、前述したように懐かしい温もりがあって、息子にも好評なんですが。

ただ、コケッコーさんが可哀そうな気がして。

 

子育てに絡む話はどうしても冷静でいられませんね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

父親は何やってんだ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「となりのせきのますだくん」【238冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

GWも終わり、平常通りの仕事や授業が始まりますね。

今後7月の海の日まで祝日がないことを思うとちょっとブルーな気持ちになってしまったり。

 

入学当初は元気いっぱいだった小学校一年生の子どもたちでも、学校が楽しいばかりのところではなくなってくることもあるでしょう。

この連休明けは特に、「学校行きたくない」と言い出す子も出てくるのではないでしょうか。

 

子ども・大人問わず、憂鬱な五月病の気分は同じ。

今回はそんな誰しもが共感でき、そしてあたたかく、懐かしく、そしてどこか切ないユーモアが感じられる絵本を紹介します。

となりのせきのますだくん」です。

作・絵:武田美穂

出版社:ポプラ社

発行日:1991年11月

 

この強烈なインパクトの表紙くらいは見たことのある人が多いのではないでしょうか。

題字も絵柄もとてもポップで可愛らしいですが、女の子と机を並べて座っているのは緑色の大きな怪獣。

 

この怪獣がフキダシで「こっからでたらぶつからな」と言いながら、女の子との間に鉛筆で境界線を引いています。

その境界線が明らかに女の子の領域を侵犯している理不尽。

女の子は不満そうに口を曲げながらも、怪獣が恐ろしくて言い返せない様子。

 

表現方法やキャラクター造形はかなり漫画的、というか、漫画そのもの。

でも、子どもの普遍的な心を繊細に捉えている点で、これは非常に優れた絵本作品に違いありません。

 

子どもの心を捉えた、と書きましたが、作者の武田さんはこの「ますだくん」を頭で考えてひねり出したわけではなく、作者自らの子ども時代をそのまま描き出したのだと思います(女の子の名前は作者と同じですし)。

瞠目に値するのは、作者の瑞々しい記憶力です。

単に事物を覚えているのではなくて、子どもの目線・感性・心情をそのままの形で保持し、なおかつそれを描き出していることです。

これは、絵本作家にとって最も重要な才能と言ってもいいと思います。

 

主人公のみほちゃんは、今日学校に行きたくありません。

あたまがいたくなればいいのに

おなかがいたくなればいいのに

ねつがでればいいのに

そんなことを考えながら、憂鬱な気持ちで登校します。

みほちゃんが学校に行きたくない理由は、「となりのせきのますだくん」(表紙の怪獣です)。

何かと意地悪してくるますだくんを、みほちゃんは怖がっているのです。

ますだくんは見た目は怪獣ですが、勉強も体育も得意な活発な生徒。

対してみほちゃんは、算数、縄跳び、かけっこ、給食のにんじん……苦手なものがたくさんある、引っ込み思案な女の子。

 

ますだくんはそんなみほちゃんに、いちいちからんできては、「いけないんだー」と先生に言いつけます。

でも、こんな男の子、いましたよね。

好きな女の子に意地悪するという。

 

でも、当の女の子にしてみれば、本気で嫌なのは当たり前。

そして事件は昨日の帰りの時間。

ますだくんの悪ふざけがエスカレートしたのか、みほちゃんが誕生日にもらった「いいにおいのするピンクのえんぴつ」を折ってしまいます。

 

いつもはやり返せないみほちゃんも、この時ばかりは怒りが爆発、ますだくんに消しゴムをぶつけます。

初めての反撃に、ますだくんはびっくり。

みほちゃんは自分のやったことに慌てて逃げ帰りますが、今日学校へ行ったらきっとますだくんにぶたれると思い、それで休みたがっていたのです。

 

ここからナレーションは中断され、コマ割りによる演出で、みほちゃんが学校の正門をくぐるシーン。

正門のところにはますだくんが待ち構えています。

 

みほちゃんはどきどきしながら、そっとその横をすり抜けて教室へ行こうとするのですが、ますだくんの手が伸びてきて……。

 

★      ★      ★

 

ラストのカットには「やられた」と思いました。

二人で並んで歩く後ろ姿、なんとますだくんは怪獣ではなく、人間の男の子として描かれています。

 

これはもちろん、ますだくんが変身したというわけではなく、みほちゃんの彼を見る目が変化したことを表しています。

ますだくんが怪獣として描かれていたのはオーバーな表現に思えるかもしれませんが、実際にみほちゃんのような大人しい子の目には、大きくて乱暴な同級生は恐ろしい怪獣そのものに映るのでしょう。

 

ますだくんが乱暴なところは変わっていないし、彼が自分の気持ちを素直に表現できるようになるには、まだまだ成長が必要でしょう。

でも、彼にも、そしてみほちゃんにも、ほんの少しの変化が訪れた。

それは子ども時代の眩い煌めきです。

 

ほとんどの大人が体験しつつも忘れてしまっているそんな煌めきを思い出させてくれる絵本というのは、実は意外と数少ないものです。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ますだくんの愛おしさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ぼくにげちゃうよ」【232冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは1942年に出版された古典名作「ぼくにげちゃうよ」です。

作:マーガレット・ワイズ・ブラウン

絵:クレメント・ハード

訳:いわたみみ

出版社:ほるぷ出版

発行日:1976年9月20日

 

伝説的絵本原作者マーガレット・ワイズ・ブラウンさんとクレメント・ハードさんの共作。

以前このブログで取り上げた「おやすみなさいおつきさま」を生み出した名コンビです。

 

≫絵本の紹介「おやすみなさいおつきさま」

 

「おやすみなさいおつきさま」「ぼくのせかいをひとまわり」、そしてこの「ぼくにげちゃうよ」は、同じうさぎの男の子を主人公とした3部作です。

物語的に続いているわけではありませんが、よく見ると色んな所に各作品とリンクするような描写がちらほらとあり、それらを見つけるのも楽しみのひとつになっています。

発表された順としては、「ぼくにげちゃうよ」が最初の作品となります。

 

ブラウンさんはわずか42歳で早逝されましたが、それまでに100冊以上もの絵本を作っていました。

ちなみに、とても綺麗な女性です(若い頃の写真を見た時、女優かと思いました)。

 

ある日、急に「いえをでて、どこかへ いってみたく」なったうさぎくん。

ぼく にげちゃうよ」と、お母さんに宣言します。

「お出かけ」ではなく、一人で家を出て、どこかへ逃げてしまいたいのです。

するとお母さんは落ち着いたもので、

おまえが にげたら、かあさんは おいかけますよ

だって、おまえは とってもかわいい わたしのぼうやだもの

と(うさぎくんが内心望んでいるであろう)返事をします。

 

ここから、母と息子のユーモラスな、一種の言葉遊びのようなやり取りが繰り返されます。

 

ぼくは、おがわの さかなになって、およいでいっちゃうよ

かあさんは りょうしになって、おまえを つりあげますよ

 

うさぎくんは「やまのうえの いわ」や「にわの クロッカス」や「ことり」「ヨット」などになって逃げちゃうよ、と言い、お母さんはその度に「とざんか」「うえきや」「」「かぜ」になって追いかけます。

実際にはただ親子が会話をするだけなのですが、これらの空想は楽しい絵として表現されます。

最後にはうさぎくんは「だったら、うちにいて、かあさんのこどもで いるのと おんなじだね」と、逃げ出すのをやめます。

お母さんは一言、「さあ、ぼうや にんじんを おあがり

 

★      ★      ★

 

絶対的な親の愛情を求める気持ちと、その庇護のもとから逃げ出して自立したい気持ち。

目まぐるしい速度で成長変化する子どもという生き物は、日常的にそうした葛藤に晒されています。

 

我が家の息子も、普段散々母親に逆らって怒らせておいて、次の瞬間にはケロッとして「ねえ、お母さん」などと甘えています。

で、気がすんだら一人で遊びだしたり。

 

親の気持ちなんて関係ありません。

妻は気分の切り替えが遅い方なので、なかなか息子に合わせるのが難しい様子です。

 

この絵本に登場する母さんうさぎを、「自立したがる子どもに干渉しまくる親」のように見て、その「愛情の押しつけ」を不快に思う方もいるかもしれません。

でも、このお母さんは別に過干渉なわけでも、子離れできないわけでもなく、愛情を試すうさぎくんに適切に対応しているだけです。

 

だから、最後のうさぎくんの「だったら、うちにいて、かあさんのこどもで いるのと おんなじだね」は、「諦め」ではなく、「満足」なのです。

子どもはこの手の「愛情の確認作業」をしばしば行います。

「自分が愛されているかどうか」は、子どもにとって最重要事項なのです。

 

それはいずれ自分が世界へ跳躍するための「土台」です。

土台がしっかりしていなければ、思い切って跳べません。

 

そして、この親子のやり取りは、子どもにとっては純粋に面白い遊びです。

うさぎくんが次々と繰り出す変身に、間髪入れず対応するお母さんの見事さ。

いわば「空想上の鬼ごっこ」です。

 

息子もこの遊びが気に入っており、時々母親に「ぼくが〇〇になっちゃったら、お母さんはどうする?」と持ち掛けています。

傍で聞いてて、「何をイチャイチャしてんだか」という気にもなりますが。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

イチャイチャ度:☆☆☆☆☆

 

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