【絵本の紹介】「ぐりとぐらのえんそく」【362冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ねずみ年ねずみ絵本紹介、切りがないのでそろそろ止めようと思ったんですが、やっぱりねずみ絵本と言えば「あの二ひき」を出さないと収まらない(誰が)だろうということで、トリを務めてもらいましょう。

少々季節感ないけど、「ぐりとぐらのえんそく」を紹介します。

作:中川李枝子

絵:山脇百合子

出版社:福音館書店

発行日:1983年3月5日(こどものとも傑作集)

 

日本が世界に誇るスーパースター、ぐりとぐら。

もはや「のねずみ」という設定を忘れてしまうほどに定着したキャラクター。

これまでに紹介した彼らの活躍は過去記事をご覧ください。

 

≫絵本の紹介「ぐりとぐら」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおきゃくさま」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのかいすいよく」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらのおおそうじ」

≫絵本の紹介「ぐりとぐらとくるりくら」

 

いやあ、もう6回目の登場ですか。

ここでぐりとぐら誕生のいきさつに触れておきましょう。

 

有名な話ですが、著者の中川李枝子さんと山脇(当時は大村)百合子さんはご姉妹です。

中川さんは保育士としての経験から同人誌に「いやいやえん」という童話を発表、その挿し絵を妹である山脇さんに頼みます(報酬は板チョコ1枚。告訴したら勝てるレベル)。

のちに世界にその名を轟かせる名タッグの結成の瞬間。

 

その後、中川さんは月刊誌「母の友」の1963年6月号に「たまご」という短い作品を発表します。

内容は今の「ぐりとぐら」とほぼ同じ(表記はカタカナで「グリとグラ」)で、やっぱり山脇さんがモノクロの挿絵を描いています。

 

これがカラー版「ぐりとぐら」になる際、山脇さんが上野の科学博物館で見せてもらったという「橙色のねずみ」の標本をモデルとして、この独特のぐりぐらカラーが誕生したといいます。

これは本人談(「ぼくらのなまえはぐりとぐら」参照。福音館書店発行)ですけど、実は実際にその標本を確認したという人の証言はなく、一種のミステリーでもあります(図鑑でも見たことないし)。

しかしそれがまたいい。

 

さて「ぐりとぐらのえんそく」はシリーズとしては4作目にあたり、「ぐりとぐら」が秋のおはなし、「ぐりとぐらのおきゃくさま」が冬のおはなし、「ぐりとぐらのかいすいよく」が夏のおはなし……と四季を巡り、春のおはなしとして描かれています。

いつも同じようでいて毎回微妙にコーディネートに変化を付けているファッショニスタな二ひき。

今回はトレードマークの赤青ツナギにシャツを重ね着した軽快なスタイルに、めちゃでかいリュック姿でピクニック。

 

いくら リュックが おもくても くたばらないぞ ぐりとぐら」と歌いながら元気に歩いて行きます。

リュックの中身は当然お昼のお弁当。

ですが、お昼にはまだ時間があるということで、二ひきは体操をしたりマラソンをしたりして待ちます。

その時、妙な緑色のひもに足を取られて二ひきは転びます。

けいとだ!

毛糸はずっと向こうまで伸びています。

 

ぐりとぐらは毛糸をボール状に巻きながら辿って行きます。

毛糸の先は一軒の家。

表札には「くま」、台所にはハチミツっぽい「だいじ」と書かれたつぼ、床に落ちている本は「くまのプーさんのおりょうりのほん」。

毛糸のゴールは「のはらで ほってきた きいちごを うえている」くまの着ているチョッキだったのです。

くまは茨にチョッキをひっかけて、気づかずにほどけさせながらここまで帰ってきていたのです。

くまはぐりとぐらにお礼を言い、そして誘われるまま一緒にリュックの置いてある野原まで走って行きます。

ちょうどそのタイミングでお昼のベルが鳴り、みんなで仲良くお弁当を食べるのでした(くまのぶんもあるって、ぐりとぐらはどんだけ大食いなんでしょう)。

 

★      ★      ★

 

うちの息子ももちろんぐりとぐらが大好きです。

色々な絵本を読む中で、離れていた時期もあるけれど、きっかけさえあれば戻ってきて「ぼくらのなまえはぐりとぐら♪」と歌います。

 

どうしてこの絵本がこうも子どもたちを惹きつけるのか、様々研究されていますが確かなことは不明です。

絵の魅力、物語の魅力、歌の楽しさ、おいしそうな食べ物、あるいはそのすべてか、それともまた別の見えない要素があるのでしょうか。

 

相変わらず大人目線で読むと肩透かしを食わされるような展開の数々。

このいえの くまでした!」と大文字で登場するわりに、まったく危険を感じさせないくま。

遠足の道程は冒頭のカットのみで終わり、ひたすらお昼のお弁当を待つ二ひき。

ユルーい体操。

 

昔の余裕のない私だったら、「なにがおもしろいの?」と放り出してしまったかもしれません。

たくさんの絵本に触れた今だからこそ、「どうしても戻ってきてしまう絵本」というものがあることに気づきます。

 

その瞬間の気持ちは「童心」と呼ぶべき感情ですが、細かに言葉で説明しようとしてもうまく行きません。

やっぱりそこには「目に見えない」「音に聞こえない」絵本の魔法が存在するとしか思えないのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ロハスなくまのライフスタイル度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ぐりとぐらのえんそく

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「はんなちゃんがめをさましたら」【343冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は大人女子から圧倒的支持を集める現代絵本作家・酒井駒子さんによる「はんなちゃんがめをさましたら」を紹介します。

作・絵:酒井駒子

出版社:偕成社

発行日:2012年11月

 

酒井さんの素晴らしい画力に関しては、毎回のように言及していますので繰り返しにならざるを得ないのですが、それでも言わずにはおられない。

絵が最高です。

 

個人的には酒井さん絵本の中でも特にお気に入りの一冊だったりします。

息子に読むより、自分で読んだ回数の方が遥かに多い。

 

酒井さん独特の絵の具の凹凸を活かしたざらついた表現と、印象的な「黒」。

静謐な物語にこの「黒」が実に映えます。

 

デビューした当初の酒井さんの作品と最近の作品を見比べますと、画風の違いは如実に見て取れます。

もちろんデビュー当時から抜きん出た画力の持ち主ではありましたが、もし酒井さんが上記のような表現方法に辿り着かなかったとしたら、「とても可愛い絵本を描く作家」という評価に留まっていたかもしれません。

 

さて、「はんなちゃんがめをさましたら」は、主人公の「はんなちゃん」(3〜4歳くらい)がある夜中にふと目を覚ましてしまったという物語。

まったく何でもないようなことですが、幼い子どもにとって「夜中に一人で目が覚める」というのはとても不思議で特別な時間なのです。

はんなちゃんは隣のベッドのおねえさんを起こすのですが起きません。

家の中で起きているのははんなちゃんと猫の「チロ」だけ。

 

はんなちゃんはチロと二人でおしっこに行きます。

それから一人で冷蔵庫を開けて、チロに牛乳をやったり、内緒でさくらんぼを食べたりします。

窓の外には満月が煌々と輝いています。

 

部屋に戻ったはんなちゃんは、たぶん普段は貸してもらえないのでしょう、おねえさんの人形やオルゴールや色鉛筆を借りて、布団の中で遊びます。

ハトの鳴き声がして、窓の外を見てみると、いつの間にか空が白みがかっています。

するとはんなちゃんは急に眠くなって、チロと一緒におねえさんの布団の端っこで眠ってしまうのでした。

 

おねえさんが起きたら、どんな顔をするでしょう。

そんなことを考えると、思わず暖かい笑みがこぼれてきます。

 

★      ★      ★

 

はんなちゃんが愛おしすぎます。

 

ずっと寝てるお姉ちゃんも美少女(そう言えば酒井さんの作品にはよく「おねえさん」が出てきますね)。

私には娘はいませんが、これを読むたびに女の子も欲しいと思ってしまいます。

経済力さえあれば養子でももらうのに。

 

酒井さんは子どもの動きの細かいところをよく観察している作家さんですが、はんなちゃんの座り方とか手の位置とか、実にリアルです。

画像は紹介しきれなかったんですが、はんなちゃんが月を見ているテキストのない見開きカットで、よく見るとはんなちゃんが片っ方の手を何故かズボンの中に突っ込んでます。

あるある。

 

同様にチロの仕草も細微に描かれています。

私は猫を飼ったことはないですけど、たぶん実際の猫もこんな動きをよくするのでしょう。

 

これほどまでにリアリティー溢れながら、しかし酒井さんの描く世界はどこか遠く、幻想的です。

それは単に「上手い絵」というだけでは紡ぎ出せない、感覚に響く絵の力です。

彼女の作品を読むとき、大人は知らず知らず「小さい頃」を蘇らせるのではないでしょうか。

 

私を含め、多くの大人をも虜にする酒井さんの絵本の魅力は、そうした心の柔らかい部分に密やかに忍び込んでくるのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

猫絵本度:☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「たんじょうび」【338冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

お店が3年目、息子が6歳を迎えたというわけで、今回は古典名作「たんじょうび」を紹介します。

作・絵:ハンス・フィッシャー

訳:大塚勇三

出版社:福音館書店

発行日:1965年10月1日

 

ハンス・フィッシャーさんを取り上げるのは初めてですね。

スイスを代表する絵本作家で、スイスの教科書にも彼の絵が使用されているのだとか(羨ましい……)。

世界中で訳され、愛されている彼の絵本は、もとはすべて自身の子どもたちのために作ったプライベートなもの。

 

まず、流麗な線が目を引きます。

表紙・扉絵を見てください。

一見ラフな線の動きが、実に活き活きとしたキャラクターの躍動感を生み出しています。

 

一筆書きで描いたように見える鶏や兎の絵、手を取り合って跳ねまわっている様子がありありと想像できる3匹の犬猫の絵。

フィッシャーさんの雄弁で勢いのある線は、全編通してリズミカルで、読者の目を離しません。

 

真似してグルグルと描いてみたくなりますが、どうしてどうして、フィッシャーさんのように描くのは物凄く難しい。

途中で線が止まったり迷ったりするとすぐわかります。

「崩して描く」絵本の絵はたくさんありますが、それは当然ながら「下手」とは違い、基礎としての画力がしっかりできていないと美しく崩せません。

その辺は書道と同じです。

 

さて、内容に入りましょう。

たくさんの動物たちに囲まれて暮らす「リゼッテおばあちゃん」。

犬の「ベロ」と猫の「マウリ」「ルリ」は家の中で寝、手伝いもしますがいたずらもします。

リゼッテおばあちゃんは動物たちみんなに愛情をもって接してくれます。

動物たちもリゼッテおばあちゃんが大好きです。

 

そんなリゼッテおばあちゃんは今日で76歳。

村へ買い物へ行き、牧師さんとお話をしようと、おばあちゃんは留守をベロたちに任せて出かけます。

 

そこでベロはおばあちゃんのためにサプライズバースデーパーティーを計画します。

マウリやルリ、その他の動物たちも一致団結。

でも、基本的に子どもそのものの動物たちですので、見ている読者をハラハラさせます。

 

焦がしてしまったケーキは砂糖をたっぷりかけて誤魔化します。

そしていよいよおばあちゃんが帰ってくると……。

素敵なパーティーの支度が整っています。

おたんじょうび おめでとう!

リゼッテおばあちゃん感涙。

 

さらにお芝居やイルミネーションといった演出もあり、最後は屋根裏に隠しておいたとっておきの贈り物を披露します。

それは(おそらくマウリとルリの間に生まれた)猫の赤ちゃんたちでした。

 

★      ★      ★

 

ラストシーンでは真夜中に子猫の一匹だけが起きて考え事をしている……という不思議な終わり方をしています。

これがあの「こねこのぴっち」へと続く伏線となっているのです。

 

「こねこのぴっち」は「たんじょうび」の続編として描かれたロングセラーですが、日本では「たんじょうび」よりも先に翻訳出版されています。

岩波書店の小さい絵本で読んだ方も多いのではないでしょうか。

 

「たんじょうび」「こねこのぴっち」とも、フィッシャーさんが末娘のために作った絵本です。

どちらの作品も、父親の甘やかな愛情に包まれたような幸せな世界を感じられます。

 

壁画などでも素晴らしい作品を遺したフィッシャーさんですが、健康には恵まれず、58歳にして永眠しました。

 

ちなみに作中登場する(焦がした)ケーキは「クグロフ」という種類のお菓子。

華やかで可愛らしい山のような独特の形が人気です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

誕生日プレゼントにオススメ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「たんじょうび

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【絵本の紹介】「ぽちのきたうみ」【331冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休みに入った子どもたちも多いでしょう。

大人になってからの7〜8月なんてあっという間に過ぎ去ってしまいますが、同じ時間なのに子どもの頃は物凄く長く感じたものです。

 

今回はいわさきちひろさんの「ぽちのきたうみ」を紹介します。

作・絵:岩崎ちひろ

案:武市八十雄

出版社:至光社

発行日:1974年

 

いわさきさんについては過去記事も併せてお読みください。

≫【いわさきちひろ特別展】「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」に行ってきました。

 

案:武市八十雄」となっていますが、案とは作品のテーマとか方向性のようなものを示すことでしょうか。

作家にインスピレーションを与えるような意味かもしれません。

 

武市八十雄さんは有限会社至光社という出版社を創設された方で、松居直さんや佐藤英和さんらと共に戦後絵本界を支えた重鎮です。

絵本に魅せられて」(佐藤英和・こぐま社)で、上記の三名の座談会で、武市さんが目指す絵本の方向性について語られています。

 

「こどものとも」などを手掛ける松居さんが物語性を重視するのに対し、武市さんは感覚的な印象を重視し、絵本でなければできない表現にこだわります。

いわさきさんと共に生み出した志光社のシリーズでは、「考えさせる絵本よりも感じさせる絵本」を作ろうとした武市さんの信念が如実に反映されています。

 

それはもちろんいわさきちひろという類まれな才能によるところも大きいでしょう。

特にこの「ぽちのきたうみ」は、いわさき絵本の一つの到達点と呼べると思います。

それくらい絵の完成度が高い。

 

主人公の「ちいちゃん」が夏休みにお母さんと一緒におばあちゃんのいる海へ遊びに行くのですが、愛犬の「ぽち」を置いて行くことが気がかりで、心から楽しめないでいます。

すると、後から来たお父さんがぽちを連れてきてくれて大喜び。

それだけのストーリーですが、短いテキストから子どもの心情が切ないほどに伝わります。

淡い色彩によって描かれる、いわさきさん独自の輪郭のない黒目だけの子ども。

物理的存在感をぼかすことで、子どもの微細な感情や心魂が際立ちます。

そしてこの海の絵。

色彩の重なりや掠れ、滲みなどの変化によってこれほど雄弁な海辺の情景が描き出されるのは圧巻の一言。

 

しかも、空と海の色を変化させることで時間の流れも表現しています。

ぽちが到着してからの生き生きとしたちいちゃんの様子は、手足の動かし方の大きさで表現されています。

 

★      ★      ★

 

志光社のシリーズ絵本は同じ「ちいちゃん」を主人公にした「あめのひのおるすばん」「となりにきたこ」「ゆきのひのたんじょうび」などがありますが、どの作品も晩年のいわさきさんの完成された画力に圧倒されます。

いわさきさん自身も愛犬家として知られており、ちいちゃんは彼女自身のようです。

 

上で触れたように武市さんと松居さんの方向性は違いますが、二人はお互いを認め合い、それぞれ別の道を歩むことで日本の絵本界の可能性を拓いて行ったのです。

武市さんは座談会の終わりに「われわれはいちおうベースキャンプを作ったんだから、それから先へ上がるのは次の時代のエディターだ」と、次世代の絵本を担う人々への期待を込めて語っています。

 

それからもう40年近い月日が経ち、武市さんも2年前に逝去されましたが、果たして今の時代を天国からどう見られているのでしょうか。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

表現力度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「あまがさ」【320冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

梅雨入りして、今年もじめじめした季節がきました。

ああ、うっとうしい……と不機嫌になる前に、こんな絵本を読んでみてはいかがでしょう。

 

あまがさ」。

作・絵:八島太郎

出版社:福音館書店

発行日:1963年8月25日

 

1960年代から増刷され続けているロングセラー。

今もって色あせない、眩しい光を放つ絵。

 

主人公の「モモ」は、三歳の女の子。

両親とも日本人ですが、ニューヨークに住んでいます。

 

誕生日にもらった赤い雨傘と長靴を早く使いたくてそわそわしています。

ところがあいにく天気のいい日が続き、なかなかモモは傘をさすことができません。

やっと雨が降った時、モモは慌てて長靴を履き、傘をもって外へ飛び出します。

 

ニューヨークのにぎやかな通りを、モモは大人になった気分で歩きます。

雨傘の上では雨が、聞いたこともない不思議な音楽を奏でていました。

幼稚園に行っても、モモは外の雨を見ていました。

 

帰り道も、来た道と同じテキストと絵で物語られます。

今では大人になったモモは、この時のことを覚えていません。

おぼえていても いなくても、これは、モモが うまれて はじめて あまがさを さした ひだったのです

 

★      ★      ★

 

子どもにとって、雨はわくわくするようなイベントです。

子どもはいつも何かが起こることを待ち望んでいます。

私たちにもそんな瑞々しい感性があったことを思い出させてくれる絵本です。

 

海外で暮らす日本人という設定は、海外旅行が一般的でない当時としては非常にモダンで、見返しや本文に描かれたニューヨークの街並みは、子どもたちに異国への憧れを生じさせたと思われます。

 

作者の八島太郎さんは実際にニューヨークに渡って活躍し、この「あまがさ」は「Umbrella」としてアメリカで発表され、コールデコット賞次席となった作品です。

華々しい経歴のように見えますが、八島さんは日本の軍国主義に反対したため10回にもわたって投獄されているのです。

 

第二次世界大戦時には、命の重要さを説き、日本兵に投降を呼びかけるビラを製作したことでも知られています。

当時としてはそうした行為は「非国民」扱いされ、非常な勇気のいることだったはずです。

 

八島さんの絵と作品、そして生き様は、戦後の日本絵本界を担った作家や編集者たちに多大な影響を与えました。

彼の絵に込められているのは、厳しい環境の中で、それでも平和を祈り続けた力です。

 

現代の絵本にそうした魂を揺さぶるような力があるかと言えば、とてもないでしょう。

それが悪いことだとは言いません。

芸術はすべて時代の中から生み出され、時代の影響を受けるものです。

 

しかし、それぞれの時代に生み出された絵本を読むとき、その時代そのものを感じ、考え、次世代に残していくことは大切な作業だと思います。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

モダン度:☆☆☆☆☆

 

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