「2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」に行ってきました【西宮市大谷記念美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年も行ってきました、毎年恒例の「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

いつも終了間際のレポートですけど、今回は珍しく早いですよ。

公式HP≫2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

 

実は前回記事の「みんなのレオ・レオーニ展」と同日に回ってます。

今、阪神間で行われている3つの展覧会のいずれかのチケットを提示すれば、相互割引が受けられます。

 

詳しくは≫「夏休みと絵本展のこと」

 

さてさて、もう1年たったのかーっていうのが一番の感想だったり。

この「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」は、ボローニャで開催される絵本コンクール(5点1組の絵本原画を用意すればだれでも応募可能)の入賞作品を集めた展示会です。

 

今年は約70か国3053作品の応募があり、日本人10名を含む25か国77作家(うちユニット3組)が入選を果たしました。

そのすべてがここで見ることができます。

 

何しろすごい数ですので、ひとつひとつじっくり見ていると膨大な時間がかかります。

正直なところ、小さな子どもを連れての観覧に向いているとは思いません。

展示されている高さが子ども目線ではないですし(息子に見せるにはいちいち抱き上げなくてはなりませんでした)。

 

内容の方も、絵本原画と言っても必ずしも子ども向け作品ばかりではありません。

というか、たった5点の絵でひとつの物語を構築しているわけですから、見る方もかなり想像力を駆使しなくては読めません。

 

それぞれの絵に箇条書き程度のテキストはついていますが、中にはそれを読んでも短い時間ではよくわからない作品もあります。

国も文化も違うとなおさらです。

 

でも、その極限に無駄を削ぎ落し、凝縮された表現こそ「絵本」の魅力であるとも思えます。

そして中にはぜひロングバージョンで読んでみたいと思う作品もいくつかありました(ほとんど作者名も作品名も覚えてませんけど)。

 

息子に受けて、私も面白いと思ったのは「都会の中の野性」(タイトルうろおぼえですが)という作品で、街の風景の中に隠し絵のように動物が潜んでいるというもの。

信号機がキリンだったり、観覧車がクジャクだったり。

 

他には韓国の作家さんの作品で、「あか」。

これはモノクロ画に赤色だけを効果的に用い、「赤」の持つイメージや認識を見るものに発見させるような作品です。

 

その他、ストーリーはわからなくとも、絵だけで十分に楽しめる作品もたくさんありました。

が、息子が途中で飽きてしまったため、後半は駆け足に。

特別展示(スペインの作家さんの絵本原画とかアニメーションとか)はほとんど見れませんでした。

 

子どもを連れてくるなら、小学生以上になってからのほうがいいかもしれませんね。

そんなわけで、3つの展覧会のうち、「チャペック兄弟と子どもの世界」展までは足を運べませんでした。

これは9月9日までやってますので、また一人でゆっくり行ってみたいと思ってます。

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

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「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました【伊丹市立美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

前回の記事で言っていたように、11日から開催している「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。

公式HP→『みんなのレオ・レオーニ展』

 

会場は以前に林明子さんの「えほんのひきだし」展も開催していた伊丹市立美術館。

このブログではひろしま美術館でのレポートを書きましたが、実は伊丹のほうにも行ってます。

 

中に庭園があり、地下もあり、ちょっと入り組んでますが綺麗な美術館です。

電車で行くとまあまあ歩きます。

 

日本でも人気の高いレオニ(レオーニ)さんの絵本。

その内容はどこか哲学的で、作者の知性や崇高な思想を感じさせます。

それは彼の波乱に満ちた生涯が関係しています。

 

レオニさんは1910年にオランダのアムステルダムで生まれます。

父親はダイアモンド・カッティング専門士、母親はオペラ歌手。

伯父はかなりの美術蒐集家だったようで、レオニさんは幼い頃からピカソやシャガールなどの芸術作品に触れて育ちます。

 

その後、父親の仕事の関係でアメリカやヨーロッパ、イタリアを転々とします。

様々な国の文化や言語に触れたことが、のちに絵本作家としての彼の仕事に大きく影響したと思われます。

 

1939年、29歳の時にレオニさんは家族を連れてイタリアからアメリカに亡命します。

イタリアではムッソリーニの独裁体制で、反ファシズム運動家でユダヤ人だったレオニさんは身の危険を感じたのです。

 

第二次世界大戦後、アメリカで画家や彫刻家として認められはじめたレオニさんですが、マッカーシー上院議員の台頭と、それに伴うマッカーシズムの攻撃により仕事を奪われ、窮地に追いやられます。

 

それでも、マッカーシーの失脚とともにレオニさんは年間最優秀アートディレクター賞を受賞するなどして復帰を果たし、そして1959年、最初の絵本「あおくんときいろちゃん」を制作・発表するに至るのです。

 

この「あおくんときいろちゃん」は、孫の扱いがわからなくて困ったレオニさんが、たまたま手元にあった雑誌の広告ページから、青い紙と黄色い紙をちぎって即興のお話を作ってやったのがきっかけだったと言います。

 

抽象化の極致のようでいて、ごく自然に膨大なイメージを喚起される作品で、すぐに子どもたちからも支持を集めました。

レオニさんの絵本作りの土台というか背骨のようなものは、すでにこの時点で完成していたことがうかがえます。

 

彼の作品には常に無駄がありません。

わかりやすく、それでいて重厚なメッセージに貫かれています。

そしてよくよく読み込めば、二重三重の深みが隠されてもいるのです。

 

逆境の中で己を見つめ直し、真実を見極めることのできる崇高な「眼」を育てる「スイミー」や、一見すると生産性のない芸術家的存在の変わり者が最終的にコミュニティを救う「フレデリック」など、レオニさんの作品には、作者自身の理想とする社会像や、人間同士の関係性、「自分とは何か」を問い続ける物語が描かれています。

 

そして何より、彼の作品の深部で核を成しているものは、「平和への祈り」です。

「あおくんときいろちゃん」も、隠されたテーマは「青」と「黄色」という異なる他者同士の交流と絆です。

 

それは世界各地を転々とし、様々な偏見や攻撃に晒されながら表現活動を続けた作者自身の物語なのでしょう。

 

今回の展覧会ではそうしたレオニさんの生涯や絵本原画を紹介するとともに、絵本とは違う彼の彫刻家としての仕事なども見ることができます。

 

そして幻と言われる「スイミー」の5点しかない原画も公開されています。

これは絵本とはずいぶん色合いが違って渋い印象になっています。

レオニさんが原画として新たに描き直したものなのか、それとも絵本製版の工程で現在の色彩になったのか、今となっては知るすべもないそうです。

↑これはグッズのポストカードですが、原画版です。

 

また、レオニさん自身が手掛けた彼の絵本のアニメーションも上映されていました(グッズ売り場にてDVDも販売)。

動く「スイミー」や「さかなはさかな」、「コーネリアス」などに感動しました。

細部において絵本とは違っていて、その違いも楽しめます。

 

これがグッズ売り場の横で上映されているという計算高さ。

子どもをここに座らせておいて、ゆっくりグッズを漁れるわけです。

 

息子も喜んで観ていました。

知っている作品だけに興奮したのだと思いますが、居並ぶ子どもたちの中で一人だけゲラゲラ笑って衆目を集めていました。

↑グッズはぬいぐるみ、マグカップ、小皿、キーホルダー、ポストカード、トートバックにTシャツなどなど、充実しておりました。うちの店にもまた仲間が増えました。

 

キャラクターとしてこれだけ可愛いのに、可愛いだけでないのがレオニさんの絵本の凄いところ。

大人の一人読みにも十分耐える深みと厚みがあります。

今の時代だからこそ、もう一度彼の絵本を手に取ってみて欲しいと思います。

 

関連記事:≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

 

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絵本に登場するお父さんたち

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

もうすぐ父の日ですね。

絵本には星の数ほどの「お母さん」が登場しますが、反して「お父さん」は実に少ない。

たまに登場しても空気だったり。

 

そこで、今回の企画を思いつきました。

「絵本界の父親」たちに光を当てるべく、私が好きな絵本の中のお父さんたちをピックアップしてみました。

 

まったくの個人的好みで選んだものですので、あしからず。

では、どうぞお付き合いください。

 

●「もりのなか」のお父さん

まずはマリー・ホール・エッツさんの古典名作「もりのなか」より、男の子のお父さん。

最後にちらっと登場するだけなのに、非常に深い印象を与え、「絵本のお父さん」と言えば必ず名前が(名前ないけど)挙がる方です。

 

男の子を空想世界から現実世界へ連れ戻すシンボルとして登場しますが、その際に男の子の空想を一切否定しない態度と、

また こんどまで まっててくれるよ

の名言が広く支持されています。

 

●ふわふわさん

続いて「ちいさなうさこちゃん」より、うさこちゃんの父親です。

ふわふわさん」は訳者の石井桃子さんのネーミング。

 

そしてその石井さんのオリジナリティあふれる訳文により、なかなか渋くて素敵なお父さんとなっています。

特に「うさこちゃんとうみ」でのうさこちゃんとの会話は名文です。

 

うさこちゃんの主体性を引き出すようにうまく誘導しています。

 

●だるまどん

大人気「だるまちゃん」シリーズより、だるまちゃんの父親、だるまどん。

一見コワモテですが、息子を溺愛している子煩悩なお父さんです。

だるまちゃんとてんぐちゃん」で、だるまちゃんが欲しがるうちわ、帽子、履物を次々に集めてきます。

 

お店でも開けそうなラインナップ。

でも、なかなかだるまちゃんのお気に召す品を用意することができません。

 

それどころか「鼻」と「花」を間違えて、だるまちゃんにえらく怒られてしまいます。

ごめん ごめん」と平謝りするだるまどんが切ないです。

 

●スモールさん

毎回色々な乗り物に乗るスモールさん。

スモールさんはおとうさん」で、彼にも家族があることがわかります。

 

いたって普通の良い父親のように描かれていますが、その裏では飛行機や機関車を操り、時には農夫、時には消防士と八面六臂の活躍をするスーパーお父さんであることを、果たして家族は知っているのでしょうか。

 

●ババール

ぞうのババール」シリーズより、主人公ババール。

 

ババールのこどもたち」で、妻のセレストとの間に三人の子どもを授かります。

主人公が父親になるというのは、絵本界では非常に珍しいこと。

 

結核を患い、余命いくばくもない作者のジャン・ド・ブリュノフさんが、ババールに自身の子どもたちへの想いを重ねて書いたと思われる、

あのこたちのいないくらし なんて とても かんがえられないよ

というババールのセリフに胸を打たれます。

 

●「ちらかしぼうや」のお父さん

ちらかしぼうや」は、絵本には珍しいことに母親が登場せず、父と子が描かれています。

これは非常に短い絵本ながら、私が子どもに対してどう接するべきかのお手本となった作品です。

 

お父さんが片付ける端から次々に散らかして行くぼうやを、叱りつけるかと思いきや、

いいとも、いいとも

もういちど、さいしょから はじめるさ

と、抱きしめる、最高に素敵なお父さん。

 

これを読んだ瞬間、こんな父親であろう、と誓った思い出があります。

 

●「トリゴラス」のお父さん

最後は長谷川集平さんの奇作「トリゴラス」に登場するお父ちゃん。

 

息子の果てしもない妄想と情念に対し、

あほか、おまえは

と切り捨てる、大阪弁のおとんです。

 

そんな しょうもないこと ごちゃごちゃゆわんと、はよねえ!

ごもっとも。

 

「もりのなか」の子どもに深い理解を示すお父さんとは正反対のように見えますが、子どもを空想から現実世界へ引き戻すという点では同じ役割を持っているのです。

物語においては、子どもにとって父親は構造的に「現実」のシンボルなのかもしれません。

 

★        ★        ★

以上、少ないですが個性的な面々を取り上げてみました。

 

長い間絵本は「母親と子ども」のものだとされてきました。

しかしその古い認識を打ち破り、これからの時代、「お父さん」はどんどん絵本に登場するでしょう。

 

どんな新しいタイプの「お父さん」が描かれるか、楽しみな気持ちで待っております。

 

 

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スズキコージ「コーベッコー」出版記念絵本原画展とサイン会に行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

自由(過ぎる)発想とダイナミックな描写、不思議なキャラクターで異彩を放つ絵本作家、スズキコージさん。

6年前から移り住んだ神戸を題材にした絵本「コーベッコー」出版を記念した原画展が神戸元町の「Gallery Vie」で開かれています。

≫「Gallery Vie」HP

 

期間は今月の28まで(入場無料・月曜休館)。

「コーベッコー」原画の他にも様々な作品展示やポストカードや絵本の販売も行っており、見ごたえ十分です。

 

 

「コーベッコー」というタイトルは、「神戸港」と風見鶏の鳴き声を掛け合わせたもの。

内容はまあ、さすがのスズキコージワールド。

 

風見鶏が「コーベッコー」と鳴くところから物語は始まり、「ロッコーざん」の湖に金星が落ちてきて、船に乗った金聖人「ヴィーナスカ」が、神戸の名所を巡ります。

何だかわけわからないけど、うちの息子には大ウケでした。

スズキさんは子どもの喜ぶツボを心得てらっしゃる。

 

私たちが原画展に行ったのは先日の土曜日で、この日はスズキさんのサイン会も行われていました。

初めてお会いするスズキさん。

何しろあんな絵本を描いてらっしゃる方ですから、内心ちょっと危ない人かも……と怖がっていたんですが、イメージと違い、実にダンディでかっこいいおじさんでした。

お店に向けてサインをもらいました。

スズキさんに「面白い名前だねえ」と言ってもらいました。

 

上の図は神戸の地をかたどったデザインで、一筆書きで出来てるのです。

ブルジオ語(そんな言語初めて知りました)で「コージ」とサインされています。

いいところなんですよー」と目を細めて言うスズキさん。

 

この一筆書きサインが非常に息子の興味を引いて、他の方がサインをもらっている間も、ずーっとスズキさんの手元を凝視していました。

あんまり近すぎて、紙に顔が当たるんじゃないかという距離まで接近するので制止したら、スズキさんは「構わないよ」と素敵な笑顔。

息子は帰ってからこのサインを真似た絵を何枚も描いていました。

 

原画の方はやっぱり凄い迫力で、何と言っても100号キャンバスに描かれた「コーベッコー」の裏表紙の画は圧巻でした。

入場無料ですので、お近くの方は是非どうぞ。

 

スズキさん、どうもありがとうございました。

これからも応援しております。

 

スズキさんの絵本紹介記事

≫絵本の紹介「ガッタンゴットン」

≫絵本の紹介「ガラスめだまときんのつののヤギ」

 

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【西宮市大谷記念美術館】「2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」へ行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「バベルの塔」展に続きまして、今度は毎年恒例のボローニャ国際絵本原画展を見に行きました。

西宮市大谷記念美術館で開催中。

今週末まで。

例によって例のごとく、終了日間際のレビュー。

 

ボローニャ国際絵本原画展とは、イタリア・ボローニャで毎年行われる絵本原画のコンクールで入賞した作品を展示するもの。

コンクールは絵本の原画を5点1組にすれば誰でも応募できるので、毎回世界各国から多くのイラストレーターたちが参加しています。

もちろん、日本人も。

 

私はこの展覧会に行くのはこれが初めてになります。

夏休みも終わったというのに、多くの来館者。

なかなかの人気です。

 

今回は日本人6名を含む26か国75作家が入選を果たしたということで、すべてを見て回るのには結構時間がかかりました。

以下、個人的な感想。

 

絵本から原画展に行く時は非常にワクワクしますが、原画から入ると、また違った趣があります。

全体として、確かにすごく上手い。

そして、ハイセンスな印象です。

どっちかというと大人向け。

もちろん、子どもがじっと見入るような絵もあるんですけど、単純な楽しさよりも、深いメッセージ性のある作品が多い気がしました。

 

それ自体は全然悪いことではありませんが、これだけ世界中から色んな作家さんの作品を集めているにも拘わらず、展覧会全体にどことなく統一感のようなものがあるのですね。

審査員が意識的にそうしたのかどうかはわかりませんが、私はもっとカオスな展覧会を想像していました。

だって、絵本って物凄く自由度が高く、それゆえに作家の個性が発揮されやすいメディアだからです。

 

その割に、今回の入賞作品はどこか似た雰囲気のものが多い。

あと、コラージュ手法がやたら多い気がしました。

コラージュ好きですけどね。

 

見たこともないような大胆な表現技法とか、思わず力が抜けてしまうようなゆるーいイラストとか、「これが絵本?」と思ってしまうような実験的な作品とか、そういうのを期待してたんですけども。

 

もちろん、そういう作品も多く寄せられていたのかもしれませんが。

繰り返しますが、作品そのものはすごくハイレベルだと思いますし、面白いものもたくさんありました。

 

入選作家の他作品を含む絵本展示ブースもあり、私はそこにいた時間が一番長かったです。

原画もいいけど、やっぱり「絵本」の形で手に取ってみたい気持ちが強いらしいです。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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