【絵本の紹介】「きいろいのはちょうちょ」【310冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

年度末で何かと忙しく、最近ちょっと更新頻度が減っております。

4月中旬くらいからはまた週3〜4くらいのペースに戻したいと思っております。

 

バタバタしているうちに世間はだんだん春めいてきていますね。

花粉も飛んでるし。

 

今回は五味太郎さんの楽しいしかけ絵本を紹介します。

きいろいのはちょうちょ」です。

作・絵:五味太郎

出版社:偕成社

発行日:1983年4月

 

鮮やかな色彩の中に一点、黄色いちょうちょの形。

虫取り網を持った男の子が、「きいろいのは ちょうちょ」と呟きながらこの「きいろいの」を追いかけます。

ところが網をかぶせてみると……。

あれれれ ちょうちょ じゃない

 

黄色い部分は穴あきになっていて、ページをめくるとそこが黄色い他の何かに変わるというしかけ。

ちょうちょの形は前ページに重なると別の色、別のものになります。

上のカットではおじさんが読んでいる本の人物のサングラスになってます。

 

同じ五味さんの作品「まどからおくりもの」と同様の手法ですね。

 

≫絵本の紹介「まどからおくりもの」

 

何度も予想を裏切られ、だんだん自信がなくなってくる男の子。

言い回しの変化にも注目です。

 

最後は黄色いのを見ても「もう ぜったいに ちょうちょ じゃない……」と見送ります。

でも、それはもちろん……。

 

★      ★      ★

 

愉快で独創的な絵本を次々に発表する五味さん。

こうしたしかけ絵本以外の作品でも実験的な試みをされており、絵本の構成そのものに対する挑戦心、探究心を感じさせます。

 

日本を代表する絵本作家さんですが、コラムや絵本論なども非常に面白いのでおすすめです。

作風同様、なかなか革新的で世間一般の常識に囚われない考えの方で、時には(いわゆる常識人からは)過激に見られる発言も飛び出します。

 

五味さんは「世の中はこうしたもの」という凝り固まった大人に辟易しており、そんな五味さんから見ればおかしな思い込みや陋習に対して「こんなやり方でもいいんだよ」「こうしたって構わないんだよ」と自由で風通しのいい生き方をさらりと提示します。

それが彼の囚われない絵本作りにも表れているのでしょう。

 

固定概念から自由になるということは口で言うほど簡単ではありません。

きいろいのは どうしたって ちょうちょ」と思い込んで走り回る男の子は、経験を経て、「きいろいのは ちょうちょ じゃない」と見切りますが、実はそれがちょうちょ。

 

つまり男の子は「固定概念には騙されない」境地に立ったように自分で思っていても、それは単に「AからB」の見地に移動しただけのことなのです。

彼が真に自由で柔軟な判断力を身に付けるには、まだまだ修行が必要、ということでしょうか。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

変化の楽しみ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「きいろいのはちょうちょ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「もりのかくれんぼう」【280冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は秋に読みたいしかけ絵本を紹介します。

もりのかくれんぼう」です。

作:末吉曉子

絵:林明子

出版社:偕成社

発行日:1978年11月

 

見事に金色に染まった森の絵が美しいですね。

実はすでにここから仕掛けは始まっています。

気づきましたか?

 

かくれんぼが好きな少女「けいこ」は、お兄ちゃんといっしょに公園から帰る途中、生垣の下をくぐり抜けます。

すると、突然見たこともないような大きな森の中に出てしまいます。

きんいろに けむったような あきのもり」をひとりぼっちで歩いていると、歌が聞こえてきます。

驚いて辺りを見回しても、誰もいません。

すると声が、

あはは、みえなきゃ さかだちしてごらん

 

けいこが足の間から覗いてみると、今まで見えなかった男の子の姿が見つかります。

おいらは もりの かくれんぼう

 

ここで読者も絵本を逆さにしてみると、ほんとに木の枝や葉っぱに溶け込むようにして見えなかった男の子の姿を発見できるはず。

そう、これは巧妙な「隠し絵」絵本なんです。

かくれんぼう」と名乗った男の子は、けいこをかくれんぼ遊びに誘います。

森の動物たちも集まってきて、みんなでかくれんぼ。

 

読者はけいこといっしょに、絵の中に隠れた動物たちを探します。

これまでも探し絵絵本としては「きんぎょがにげた」「うずらちゃんのかくれんぼ」を紹介しましたが、難易度はさらに上がっており、大人も一緒に楽しむことができます。

 

≫絵本の紹介「きんぎょがにげた」

≫絵本の紹介「うずらちゃんのかくれんぼ」

 

全員見つけると、今度はけいこが隠れる番。

息を殺して、じっと茂みの中に身を潜めていると、お兄ちゃんが歌いながらけいこを迎えに来ます。

 

顔を上げると、そこは夕日に染まったけいこたちの団地の敷地の中。

森も、動物たちも、かくれんぼうも、どこかに消えていました。

不思議に思ってけいこがお兄ちゃんに「ここ、もりじゃなかったの?」と訊くと、お兄ちゃんはこの団地ができる前は、ここは大きな森だったんだと教えます。

 

けいこは、まだどこかにかくれんぼうが隠れているような気がして、辺りを見回すのでした。

 

★      ★      ★

 

林さんの絵の上手さは今さら言うまでもないんですが、今回は隠し絵。

ほんとに何でも描けるんですね、この人。

 

そう言えば林さんは「10までかぞえられるこやぎ」では、筋とは無関係に絵の中に人の横顔の隠し絵をこっそり入れるという遊びをしていて、あっちはさらに難しく、そもそも隠し絵があることにすら気づかないような、ほんとの隠し要素になっていました。

 

たまに公園で息子とかくれんぼをやりますが、あれはなかなか頭を使う遊びですね。

それに、じっと気配を殺している時の、あの何とも言えない不思議な感じも、ずっと忘れていました。

 

子どもの遊びは押しなべて人間能力の開発に通じるものですが、「かくれんぼ」が涵養するのは「見えないものを見る」能力なのかもしれません。

 

この作品が描かれたのは今からちょうど40年前、経済成長とともに人口が増え、次々と団地が建設されていた頃です。

子どもたちの遊び場も、今よりは多かったでしょうが次第に減って行き、山や森も潰されていったのでしょう。

ラストシーンに漂うちょっとした秋の寂寥感は、楽しさいっぱいだったかくれんぼ遊びが終わる時にふと感じる寂しさに似ています。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

探し絵難易度:☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「もりのかくれんぼう

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【絵本の紹介】「ウォーリーをさがせ!」【256冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「懐かしい!」と思い出す人も多いのではないでしょうか。

今回は一大ブームを巻き起こした「探し絵」絵本の金字塔、その第一作を紹介します。

ウォーリーをさがせ!」。

作・絵:マーティン・ハンドフォード

訳:唐沢則幸

出版社:フレーベル館

発行日:1987年12月

 

赤と白のボーダーのユニフォーム(楳図かずおに非ず)に丸眼鏡、「つえに、やかんに、きづち」「カップに、リュックに、ねぶくろ」「そうがんきょうに、カメラに、シュノーケル」「ベルトに、バッグに、シャベル」という、旅慣れているんだかいないんだか、そして一体どこへ行くつもりなのかさっぱりわからない装備。

 

この奇人ウォーリーを、無数の人混みの中から探し出すゲームブックです。

当時は日本中で目を皿のようにして探されていたウォーリー。

誕生30周年を記念した展示会が全国を巡回中です。

 

公式HP≫誕生30周年記念「ウォーリーをさがせ!」展

 

もうすぐ大阪にもやってくるそうで、私もぜひ行ってみようと思っています。

しかし原画を一枚見るだけでも相当な時間を要しそうですな。

ごった返す人、人、人の群れ。

この中のどこかにいるウォーリーを探すのはなかなかに大変です。

そして、登場人物ひとりひとりの行動のユニークなこと。

答えを探すことだけに夢中にならず、ぜひとも絵の隅々まで楽しみ尽くしてほしいです。

 

ウォーリーを見つけたら、今度は最初に戻って落とし物探し、さらに巻末見返しには各ページのモブキャラなどを探すハードモード付。

何回でも楽しめる作者の工夫が凝らされています。

刊行から30年、シリーズ新作の他、この作品自体も何度か改編されています。

 

★      ★      ★

 

1987年と言えば、ちょうど家庭用ゲーム機が普及し、子どもの本離れが危惧され始めた頃です。

ロンドンでこの絵本を見つけたフレーベル館の編集長は、この絵本なら子どもが繰り返し読んでくれると思い、翻訳刊行を即決したそうです。

 

現代では探し絵に特化した絵本も数多く出版されていますが、「ウォーリー」の飄々としたキャラクター、そしてイラストの魅力はやっぱり一頭地を抜いていると思います。

 

どこか謎めいたウォーリー同様、作者のハンドフォードさんの絵本製作過程もあまり明らかにされておらず、フレーベル館の編集者たちにとっても謎が多いそうです。

新作が発表されるたびに編集者たちが「問題となっているものが本当に絵の中にあるのか」を懸命に確認する作業があるとか。

ちなみに、ハンドフォードさんは決して答えを教えてくれないそうです。

 

どうしても見つけられなくてイライラが募ることもありますが、「見つけた!」瞬間の快感は何とも言えませんね。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

物を落としすぎ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「旅の絵本」【245冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもが生まれるとできなくなることがたくさんあります。

旅行もそのひとつで、なかなか遠出はできないし、思い切って行っても苦労のほうが多くて、心からは楽しめなかったり。

 

もっと若いうちに色んなところを旅行しておくべきだったかとも思います。

子どもの頃には家族旅行で海外に行ったこともありますが、当時は勉強不足でなんの予備知識も持ち合わせてなかったので、ただ漫然と親について行っただけの旅で、今にして思えばもったいない話です。

 

やっぱり旅は主体的なものであるべきだし、最低旅行地の歴史や文化は予習しておくべきでしょう。

今回は安野光雅さんの「旅の絵本」を紹介します。

作・絵:安野光雅

出版社:福音館書店

発行日:1977年4月15日

 

絵本界の重鎮・安野光雅さん。

このブログでもたびたび取り上げています。

 

この「旅の絵本」は字のない絵本です。

世界中で愛され、36年をかけて全8作が描きあげられています。

 

この第一作では中部ヨーロッパの美しい自然と町並みが舞台になっています。

テキストはないものの、登場する人物たちは実に生き生きと躍動し、それぞれの物語を雄弁に語っています。

克明な絵の美しさはもちろん、登場人物を詳細に観察していくことで見えてくるストーリーとユーモアが、この絵本を何度でも楽しめる作品にしています。

 

そして、実はこの絵本の中には、お馴染みの民話や童話をモチーフにしたイラストが多数隠されているんです。

上の画面の左下、化け物みたいなカブを引っこ抜こうと奮戦するおじいさん、おばあさん、娘。

これは明らかにかの「おおきなかぶ」の名場面。

今度は左上、赤ずきんちゃんとオオカミが描かれています。

 

他にも「おだんごぱん」や「ブレーメンの音楽隊」っぽいキャラクターも多数出演。

またミレーの「落穂ひろい」をモチーフにしたような一幕や、女の人の行水を覗こうとする男や、騙し絵っぽい輪投げ遊び、発見は尽きません。

ぜひ、自分で探してみて欲しいです。

 

たぶん、私には気づかないようなところにも様々なモチーフが隠れていると思います。

もっと色んなことを知っていれば、理解できること、楽しめることがたくさんあるのに……と考えてみると、これは旅をする時の楽しみ方にも通じることですね。

 

作品から、いつも静かな知性を感じさせる安野さん。

「旅の絵本」は、そんな安野さんの深甚なる眼差しに同化して世界中を旅しているような心地よい気分を味合わさせてもらえるシリーズです。

 

最後に、安野さんの「あとがき」から、素敵な一節を引用させてもらいます。

 

人間は迷ったとき必ず何かを見つけることができるものです。私は、見聞をひろめるためではなく、迷うために旅に出たのでした。そして、私は、この絵本のような、一つの世界を見つけました

 

いつか、こういう本物の旅をしてみたいものです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

旅心を誘われる度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ふしぎなえ」【143冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は安野光雄さんの代表作「ふしぎなえ」を紹介します。

作・絵:安野光雄

出版社:福音館書店

発行日:1971年3月1日

 

毎回、やさしいタッチの絵でありながら知性を刺激する実験的な絵本を手掛ける安野さん。

この作品は氏が美術教員を退職して初めて発表したデビュー作にして、海外でも話題を呼んだ一冊です。

 

全編通して文字はなく、タイトル通りの「不思議な絵」が並ぶ画集のような絵本。

いわゆる「不可能図形」で描かれた奇妙な世界を、おなじみの小人たちが動き回ります。

 

表紙は平面なはずのレンガを階段にして上る小人たち。

そして裏表紙はタイトルも含めて表紙を反転させたものになっており、鏡を使って見ると子どもは喜びます。

 

上っても上っても、元のフロアに戻ってしまう階段。

どっちが下かわからなくなる建築物。

下から上へ流れる川の水。

 

などなど、まるで次々に目の前で手品を操られているよう。

 

だまし絵の画家と言えばエッシャーが有名ですが、安野さんはエッシャーの絵に魅了されてこの作品を作ったのだそうです。

こういう絵は緻密な計算がなければ描けないもので、数学分野にも造詣の深い安野さんならではの作品と言えるでしょう。

 

ペンローズの階段」や「ネッカーの立方体」といった代表的な不可能図形の概念を絵本の世界に持ち込んだ安野さん。

これらはいわゆる人間の「目の錯覚」を利用したトリックですが、大人がこういうものを前にすると、「騙されないぞ」と、つい力んでしまうのに対して、子どもの反応は実に素直で、自分の錯覚を楽しんでいるように見えます。

 

それを見ていると、「錯覚」というのは必ずしも「欠陥」とばかりは言えないのかもしれない、と思います。

むしろ、「錯覚できる能力」によって、人間は様々な空想を広げ、不可能に思われていたことを成し遂げてきたのかもしれません。

 

錯覚能力がなければ、絵本の中で繰り広げられるファンタジーを、現実の世界の出来事のようにリアルに楽しむことはできません。

他人の痛みを、我がことのように共感することはできません。

 

一方に数学的で厳然とした法則に貫かれた世界があり、もう一方に詩的で空想的な世界があり、それらが重なり合って私たちの「リアルな」世界が存在しています。

 

こうした認識を子ども時代の間に身に付けないと、私たちは世界や人間に対し、本当に血の通った理解を示すことはできません。

どうして安野さんがこれらの美術作品を「画集」ではなく、子どもにも向けた「絵本」という形にしたのか。

私は何となく、上のような理由を思い浮かべるのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

美術的価値度:☆☆☆☆☆

 

安野さんの他作品についての関連記事

≫絵本の紹介「かず」

≫絵本の紹介「まよいみち」

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