2023.12.11 Monday
児童書感想文
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今年もはや師走。
何かとバタバタしておりますが、家族そろって大きな怪我も病気もなく、無事に年を越せそうです.
去年も今頃の時期に児童書の感想文を書いたのですが、この一年で息子に読んだ児童書をざっと挙げてみましょう。
息子ももう小学校4年生で、そうそう絵本を読んであげる機会もなくなりました。
ゲームで忙しいですしね。
そうは言っても本から離れてしまったわけではなく、本を読む習慣は身についているし、最近では米朝師匠の落語本などを一人で読んでいます(息子は落語好きです)。
そして毎日寝る前に30分くらい児童書を読んであげる習慣もずっと続いています。
もちろん息子は自分でも読めるのですが、そこはルーティンとして、この本を読み聞かせる時間というものは私にとっても息子にとっても大切なものとなっています。
今読んでいるのは吉川英治の「三国志」ですね。
前から機会を窺っていたのですが、そろそろいいかなと思って全8巻読破に向けて読み始めました。
もちろん難しい言葉はたくさん出てくるけど、いちいち説明してると流れを切ってしまうので、そこは雰囲気で流してもらってます。
私も読み方に詰まる単語も多いので勉強になりますね。
あと、三国志と言えば登場人物の多さですが、特に耳で聞いていると各人物の判別が難しいだろうなと思います。
ただでさえ耳慣れない中国名に、似た響きの名前が多いので、やはり漢字で視覚的に捉えないと誰が誰だっけとなってしまいます。
今董卓編の佳境ですが、実際息子は再登場した人物などは「誰だっけ?」となっています。
それでもやっぱり三国志、一度読み始めると面白くてやめられない。
吉川三国志は名文ですしね。
成長のどこかで必ずハマるでしょうし、これを機に歴史に興味を持ってくれたら嬉しい。
ミヒャエル・エンデの「モモ」。
これは別に今年初めて読んだわけではなく、覚えてないけど去年にはすでに読んでいた気がします。
でも息子は非常にこの話を気に入ってくれて、すでに3回は繰り返して読みました。
児童向けでありつつ、わりと心理的にキツい描写もあり、非常に作者の思想的な部分も盛り込まれており、大人でも理解がすぐには追いつかないような難解さもあります。
特にマイスター・ホラの家でモモが見た「時間の花」の箇所ですかね。
ただ教訓臭さはなく、エンターテインメントとしてぐいぐい読ませる力に満ちています。
灰色の男たちの不気味さ、生気を奪われていく人々の哀れさ、その中にあって未来を知る亀のカシオペイアの愛らしさが救いとなっていますね。
昔映画版も見た覚えがありますが、とにかくモモ役の女の子がめちゃくちゃ可愛かった記憶。
同じくミヒャエル・エンデの「ジム・ボタンの機関車大旅行」。
これはかなり前に買ったけど読ませてくれなったのですが、やっと読了、そして続編の「ジム・ボタンと13人の海賊」も続けて読みました。
めちゃくちゃ面白い。
登場人物や国の設定がいちいちエキセントリックで想像力を刺激してくれます。
意志を持つ機関車エマは改造されて海も渡れば空まで飛んでしまう。
住人数名の小国、中華風の大国、竜の国、砂漠の巨人、海の人魚。
そしてやはりどこかにミヒャエル・エンデ流の神秘的思想が感じられます。
個人的には読み物としてはモモよりもこっちの方が面白いのですが、知名度的には今一つなんでしょうか。
かなりおすすめです。
そういえばアニメにもなってましたね。小さい頃見た記憶がありますけど、内容はまるで違ってたようです。
エーリッヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」。
寄宿舎暮らしの多感な少年5人組の友情と成長の物語。
大人の目線で読むと、この時期の子どもたちの周囲に、見上げるように尊敬できる大人がいることの重要性を痛感します。
また、ケストナーの洒脱な文章は読むだけでも精神が賦活される気がします。
息子は5人組の中で最も臆病でそれを気に病んでいる「ウーリ」というキャラクターに自分を投影していました。
そうやって自己投影ができるようになったというのは息子にとっては大きな進歩だと思っています。
同じくケストナーの「エーミールと探偵たち」。
ケストナーは不良少年を書くのが上手いですね。
旅先で母親に託された大切なお金を盗まれ、それを取り戻すために奔走する主人公と、自然と協力関係になっていく街の子どもたち。
タイトルからミステリーものかと思いましたが、内容は明るい友情と、みんなで何かを成し遂げる精神の昂揚を描いた上質のジュブナイルです。
今江祥智の「星をかぞえよう」。
これはもう古書の類でして、ご存じない方の方が多そうですけど、私が小学校の頃に図書室で読んで、なんだかすごく印象に残っていたので探し出してきて読みました。
挿絵は長新太さん。
時代設定も古く、田舎で育った主人公の女の子が東京に転校し、そこで男顔負けの活躍をするという…まあ、今読むと男女観の古さが際立ちますが、当時は少女が活躍する作品がどんどん発表されていた頃なんじゃないでしょうか。
今では当たり前ですけどね。
ただ、主人公が立ち向かう相手がバリバリの極道なのが児童書としては異色なんですよね。
主人公は女子中学生ですよ?
それを傷めつけようとする先輩柔道部と、それに手を貸す極道一家。
逆に現代だと出版できないかも。
私は上記のケストナー作品を読んだ後、何故か突然この作品を思い出して読みたくなったのですが、今江さんの別作品のあとがきに、児童小説を書き始めた時、どう書けばいいか悩んでいたら福音館の松居さんが「ケストナーの書き方をものにしなさい」というアドバイスをくれたというエピソードがあって驚きました。
やっぱりどこかで通じるものを感じたんでしょうね。
他にも色々と読んだのですが、切りがないのでまた次の機会に紹介しましょう。
何度も書いたことですが、読書には旬があります。
小学校4年生なら4年生の時期に読んでおくべき本というものがあります。
大人になってから読んでも面白いのは間違いないとしても、その時期の精神にしか響かない本というものもあり、長い時間をかけて熟成すべき内容の本もあるのです。
この先、息子が小学校高学年〜中学生になれば、読むべき本のリストは一気に膨れ上がります。
とても私が読み聞かせていては間に合わないくらいの量になるはずです。
今は習慣として私が本を選び、読んでいますが(後で一人で読み返したりはもちろんしていますが)、いつ息子が自分で本を選び、次々と読む時期がくるのかを注意深く、そして心から楽しみに見守っています。
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「400冊分の絵本の紹介記事一覧」
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com