絵本の紹介「おやすみなさいフランシス」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもの寝かしつけ、どうされてますか?

 

これまでにも何度か触れましたが、我が家の息子は、本当に(もう、ほんとに)寝るのが嫌いです。

自分から布団で横になって眠ったことなんかありません。

限界に達して気絶するか、動けない状態の時(食事中・乗り物)に落ちるか、読み聞かせ中に眠るか、だいたいそのどれかです。

 

読み聞かせで寝るって言ったって、1冊や2冊で眠るようなことはまずないです。

明らかに眠そうなのに、10冊、20冊と平気で耐えます。

こっちが先に落ちるか、あるいは途中で息子が絵本から離れてしまうか、いずれにせよ簡単には寝てくれません。

 

そんなわけですから、3歳半になった今でも、生活時間は不規則です。

昼型生活と夜型生活を交互に繰り返しています。

 

ちゃんと寝かしつけなよ

と、たびたび周囲から指摘を受けます。

 

もっともな話かもしれません。

私だって、息子がもっと小さかったころに、添い寝して寝かしつけようとしていたこともあったんです。

でも、どうしても心に引っかかりがあって、やめてしまいました。

 

その話は後ほど。

 

今回紹介するのは、そんな素直に眠れない子どもの普遍的な心理を描いた傑作「おやすみなさいフランシス」です。

文:ラッセル・ホーバン

絵:ガース・ウイリアムズ

訳:松岡享子

出版社:福音館書店

発行日:1966年7月1日

 

絵を担当しているのは、「しろいうさぎとくろいうさぎ」のガース・ウイリアムズさん。

モノクロと薄い緑色のみの印刷ですが、相変わらず動物の毛の質感は見事です。

 

アナグマの女の子・フランシスは寝る時間。

(私から見れば)とても素直に寝室に行って、両親におやすみなさいのキスをしてもらい、ベッドに入ります。

けれども、眠くありません。

歌を歌ってみるけど、眠れません。

そのうちに、色々と妙な考えがちらついて、余計に眠れなくなり、何度も両親のいる居間へ出て行きます。

ガウンを大男だと思ったり、天井のひびから何かが出てくるような気がしたり、カーテンの揺れ方が気になったり……。

 

最後は両親も寝てしまい、だんだんくたびれてきたフランシスは、目を閉じて考えているうちに眠りにつき、朝までぐっすり眠ります。

 

★      ★      ★

 

フランシスの思考や行動が実にリアルで、自分も子どもの時、眠れなくてこんな風に色々と空想してたなあ、と思い出します。

子どもの心理を的確に捉えることに成功した絵本です。

 

ただ、絵本の出来とは別の部分で、私が気になる点があります。

 

文化や時代の違いかもしれませんが、フランシスのように「子どもを一人で寝かせる」ことに抵抗があるのです。

そうすることで自立心を育てる、という考えには懐疑的です。

 

もうひとつ、フランシスの両親はとても優しく、眠れずに起き出してくる娘に対する対応も見事ですが、最終的には「おしりをぶつ」という脅し文句を使って、自らの安眠を確保するのです。

 

「寝かしつけ」は本当に必要でしょうか。

それは子どものためというより、親が楽になるから、という理由で行われてはいないでしょうか。

 

私が息子の寝かしつけをやめたのは、そんな考えが離れないからです。

 

ただ、この考えはあくまで個人的なもので、とても他人に勧められるようなものではないことは自覚しています。

実際、子供が寝ないというのは辛いし。

 

親だって人間だから、楽ができるなら楽をしないと体が持たないし、子どもの心身の健康な成長のためには、規則正しい睡眠が必要、と言われたら特に反論できません。

 

けれども息子を見ていると、とにかく1分1秒でも長く起きて、遊びたい、何かを吸収したい、という燃え盛るような欲求を感じるのです。

その欲求が睡眠欲を遥かに凌ぐのなら、強いて寝かせなくてもいいか……と思ってしまうのです。

 

まあ、4歳くらいまでに、夜に寝てくれるようになれば、それでいいかと思うようになりました(2歳のころは3歳までに……と願ってたけど)。

 

ひとそれぞれ、子どももそれぞれ。

 

ただひとつ、どうしても納得できないのは、泣いている赤ちゃんを暗い部屋に放置するやり方です。

あれだけは、赤ちゃんへ与える害は、とても両親の楽と引き換えにできるような大きさではないと思うのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

なんだかんだ言っても、寝てくれる子が羨ましい度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入は商品詳細ページからどうぞ→「おやすみなさいフランシス

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絵本の紹介「はけたよはけたよ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもの成長は個人差があり、ペースはひとりひとり違うもの。

それは重々承知しているつもりでも、やっぱり周りの子どもができていることが自分の子にできないのを見ると、親として焦りを感じてしまいます。

 

寝返りは何か月? おすわりは? はいはいは? つかまり立ちは?

 

ひとつできると、もう当たり前になって、次々と要求は増えるばかり。

子どもにしてみれば、ほっとけって話ですよね。

 

わかっちゃいるけど、気になる。

目下のところ、我が息子はひとりで着替えをしません。

「できる」けど「しない」(何度か自分から着替えたことがあります)。

というのは、精神的な原因があるんでしょうか。

単に反抗期のせいでしょうか。

 

今回はそんな私のような悩める親にもぴったりの一冊「はけたよはけたよ」を紹介します。

文:かんざわ としこ

絵:にしまき かやこ

出版社:偕成社

発行日:1970年12月

 

ひとりでパンツがはけない男の子・たつくん。

何度やっても、しりもちをついてしまいます。

えい、パンツなんか はかないや

と、たつくんは下半身丸出しで外へ飛び出してしまいます。

なんという男前な子。

私は内心で拍手してしまいました。

 

そこへ、動物たちがやってきて、たつくんのおしりを見て笑います。

しっぽがないことがおかしいと言うのですね。

動物たちはしっぽを自慢。

いいやい、いいやい。しっぽなんか なくても いいやい

たつくんはどんどん逃げ出し、泥だらけになって家に帰ります。

 

お母さんにお風呂でおしりを洗われ、

さあ、パンツを はくんですよ

 

でもやっぱりしりもち。

ここでたつくんは発想を転換します。

しりもち ついたまま はけないかな

すると……

あらら、はけちゃった。

これならズボンだってはけます。

 

たつくんはズボンをはいて外へ行き、動物たちはたつくんのズボンをうらやましがります。

 

★  ★  ★

 

面倒なこと、やりたくないことも、ちょっとした試みからできるようになる。

その体験は子どもにとって大きな喜びであり、新しいことにチャレンジする活力となります。

 

それにしても、このたつくんのお母さんが素晴らしい。

通報されかねない格好で外から帰ってきた息子を見て、

まあ、たつくん。パンツも はかないで、どこへ いっていたの

と余裕の笑顔。

 

優しくおしりを洗ってくれても、ミシンでズボンを縫ってくれても、パンツをはくことは決して手伝いません。

 

これこそが、子どもへの信頼と愛情でしょう。

見習わないとなあ……。

 

推奨年齢:3・4歳〜

読み聞かせ難易度:☆

お母さんの器の大きさ度:☆☆☆☆

 

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絵本の紹介「こぐまちゃんおはよう」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

古本屋をやっていると、本当に人気がある絵本がよくわかります。

そんなロングセラーシリーズ「こぐまちゃんえほん」より、第一作「こぐまちゃんおはよう」を紹介したいと思います。

同じ国内の人気シリーズでも、「ぐりとぐら」よりも、もっと小さな子どもに向けて作られています。

太い線、ぬいぐるみのようなキャラクター、はっきりした色使い。

明らかに「ミッフィー」シリーズの作者、ディック・ブルーナの影響を受けているとわかります。

 

このシリーズは絵を担当している若山さんのほか、「こぐま社」の創立者である佐藤英和さん、歌人の森比佐志さん、児童劇作家の和田義臣さんら四人による合作です。

佐藤さんが、ブルーナの描く「子どもがはじめて出会う本」の日本版を作りたいという想いから、こぐま社を代表するシリーズとして「こぐまちゃんえほん」を誕生させたそうです。

ですから、ブルーナの影響が色濃く出ているのは当然とも言えます。

赤・青・黄といった原色ではなく、中間色を用いているところに「和」を感じますね。

こぐまちゃん(2歳)の一日の生活を描きます。

起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、遊んで……。

そのひとつひとつのシーンに、作者の4人が話し合い、合意を得てから制作に入るという熱の入れようです。

 

佐藤さんが特に気に入っているという、こぐまちゃんがうんちをする場面。

最も美しい排泄シーン」だとか。

 

これを見て、自分もおまるでうんちをしたがる子どもが続々現れたそうです。

……が、もちろん例外はあります(我が家のように)。

 

作家にとって、子どもは最も率直で、最も手ごわい読者と言えます。

大人の目はだませても、子どもの目はだませないのです。

それを知っている人々が作ったからこそ、内容はもちろんのこと、印刷、製本に至るまで、こだわり抜いて完成された絵本となっています。

まさに「子どもがはじめて出会う本」にふさわしいシリーズと言えるでしょう。

 

 

■「こぐまちゃんえほん」の中でも一番人気の「しろくまちゃんのほっとけーき

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