【絵本の紹介】「うさこちゃんとどうぶつえん」【326冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久々にあの人気者に登場してもらいましょう。

ミッフィー」の名の方が通っているけど、私の中ではこの子はやっぱり「うさこちゃん」なのです。

 

うさこちゃんとどうぶつえん」。

作・絵:ディック・ブルーナ

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1964年6月1日

 

当ブログでは4度目の登場。

ちいさなうさこちゃん」「うさこちゃんとうみ」「ゆきのひのうさこちゃん」そしてこの「うさこちゃんとどうぶつえん」の4冊は、ディック・ブルーナさんの「子どもがはじめてであう絵本」の第1集という位置づけになっています。

 

≫絵本の紹介「ちいさなうさこちゃん」

≫絵本の紹介「うさこちゃんとうみ」

≫絵本の紹介「ゆきのひのうさこちゃん」

 

シンプルを極めたようなブルーナさんの絵本作りの中でも、有名なのは「ブルーナカラー」と呼ばれる6色の指定色のみでの彩色です。

けど、この第1集を始め、初期作品の時点では指定色はまだ4色(赤・青・黄・緑)のみです。

 

読んでみると、本当に4色しか使ってないとは信じられないほど色彩豊かに感じられるのがすごいところ。

今回は緑を基調にした落ち着いた彩色ですが、例えば冒頭の動物園へ出発することになる場面では、背景色が赤になっていて、楽しい気持ち、期待が高まる気持ちが表現されているわけです。

 

そして、上記記事でも触れていますが、このシリーズを味わい深いものにしているのは名翻訳家・石井桃子先生による(ほとんど創作と言っていいくらいの)訳文です。

 

おい うさこちゃん とうさんは どうぶつえんへ いこうかと おもってるんだが いっしょにくるかい?

という父親「ふわふわさん」のセリフ。

これは前作「うさこちゃんとうみ」での誘い方と同じですね。

 

一緒に来なさい、とか、連れて行ってやろう、とかは言わず、あくまで子どもに主体性を持たせようとする言葉の使い方。

できるお父さんです。

でもこれ、元の英文を紹介しますと、

I'm going to the zoo today. Come with mee,Miffy dear

となっていて、全然ニュアンスが違ってくるんですね。

 

で、対するうさこちゃんの返しが、

うれしい うれしい ばんざあい! でも どうぶつえんまでは あるけない。とうさん きしゃで いきましょう

という、相変わらずませた上に何だか芝居がかった言い方。

 

二人は汽車に一時間も乗って動物園に行きます。

うさこちゃん自身もうさぎという動物でありながら動物園に行くというザワザワ感はあるものの、うさこちゃんは様々な動物たちを見て楽しみます。

ぞうは平気でもきりんは怖いらしいうさこちゃん。

亀に乗れるとか、うらやましすぎるサービスの動物園なのでした。

ほら この うさこちゃんの とくいがお

と言われるとそう見えてくるのもブルーナ・マジック。

 

★      ★      ★

 

うさこちゃんの設定年齢は不明です(作品により毎回微妙に変化してる気もします)が、冒頭の父親とのやりとりを読む限り、動物園に行くのが初めてというわけではなさそうです。

動物園が遠いことを知ってるし、動物園のおうむはうさこちゃんの名前を知ってるし。

 

その割には、やけに初々しい反応を見せるうさこちゃん。

しまうまに驚いたり、きりんを怖がったり。

 

それが少々不思議だったんですが、自分の息子を動物園に連れて行った時のことを思い出してみると、そんなものかもしれないという気になりました。

日々成長変化する子どもにとっては、行くたびに新しい発見や驚きがあるのでしょう。

 

推奨年齢:1歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

かめキュート度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「うさこちゃんとどうぶつえん

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「だいちゃんとうみ」【322冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、太田大八さんの「だいちゃんとうみ」です。

作・絵:太田大八

出版社:福音館書店

発行日:1979年8月1日(こどものとも傑作集)

 

海辺の村での夏休みの思い出を素朴に描いた作品です。

特に大きな事件が起こるわけではないのですが、非常に印象に残るロングセラー絵本です。

 

舞台となっている長崎県大村町は、太田さんが子どもの頃育った土地であり、主人公の「だいちゃん」は作者自身だと思われます。

見返しに大村町周辺の地図が描かれています。

 

私の父親は瀬戸内海の小さな島の出身で、私が子どもの頃には毎年夏休みと正月に里帰りしていました。

この絵本に描かれている海の情景は、そのまま私自身の記憶と重なる部分が多く、色々と思い出させてくれました。

 

だいちゃんはいとこの「こうちゃん」の家に遊びに来ています。

川で釣りの餌にするための川エビを掬い、こうちゃんのお兄さんの船で沖釣りに出ます。

てぼ」「そうけ」「みな」といった耳慣れない単語が出てきます。

お昼になると浜辺で潜ったり泳いだりしながら貝を集め、釣った魚と一緒にお昼ご飯。

帰り道では竹を切って「すぎでっぽう」を作り、くすのきの上に作ったやぐらに上ります。

海の色の変化、潮の香り、風の感触までが伝わってきます。

 

★      ★      ★

 

舟に乗って沖釣り、私もしました。

祖父母が他界してからは田舎に帰ることもなくなり、夏の海の光景も長い間忘れていました。

 

今、大阪に住んでいる私には帰る田舎もありませんし、息子を連れて行くこともできません。

でも、田舎での遊びや暮らしは、息子にも体験させてやりたい気がします。

 

現代の都会では、子どもが遊ぶところは本当に少なくなっています。

どこへ入るにも入場料がかかります。

海や山、自然の中での遊びは無料で、しかも様々な学びがあり、面白いものです。

 

本来学びとはすべて遊びの中にあるのです。

ちゃんと遊ぶことのできなかった子どもたちは、大人になっても遊び方がわからないままです。

そういう大人は子どもと遊べないのです。

お金を払わないで楽しむ方法がわからないのです。

 

あまり昔を懐かしむのは趣味ではないんですが、こんな絵本を読むとついノスタルジックな気分になってしまいますね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

精神的豊かさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「じんべえざめ」【283冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

鳥取県の河口にジンベエザメが迷い込んだという珍しいニュースが流れていました。

残念ながら死んでしまったようです。

 

ジンベエザメは基本的に温かい地域の海に生息、成長すると12メートル以上にもなるという最大の魚。

その巨大さから哺乳類と誤解しがちですが、魚類です。

私は海遊館で何度か見ましたが、他の小さな魚たちと同じ水槽に入れて大丈夫かなと心配になったものです。

 

しかし、ジンベエザメはとても大人しい性質のサメでして、エサも海中の微小なプランクトンなんですね(それであの巨体)。

飼育員のダイバーが近くを泳いでいても怖がりません。

今回はそんな人気者への賛歌的絵本「じんべえざめ」を紹介しましょう。

作・絵:新宮晋

出版社:扶桑社

発行日:1991年4月5日

 

作者は風や水などの自然の力で動く彫刻芸術家の新宮晋さん。

以前このブログで彼の絵本デビュー作「いちご」を取り上げました。

 

≫絵本の紹介「いちご」

 

新宮さんの独自の絵本の作り方は「いちご」と同様で、日本語と英語の二か国語のテキストで読めます。

新宮さんならではの自然を内側から見つめるような深い眼差しと詩的な言葉。

それに武骨で迫力満点のイラストも健在です。

 

光あふれる海

とつぜん巨大な影が

どーんと現れる

小さな耳 やさしい目

そして とてつもなく大きな口

白い気球のようなおなか

重い体重をささえる山脈のような背中

ゆったりとしたテンポで読み進めていくと、雄大なじんべえざめと一緒に海を泳いでいるような気持ちに。

水の惑星 私たちの地球

 

★      ★      ★

 

全編通して青と黒のモノトーンですが、不思議と暗い印象は受けません。

むしろ海面からのまばゆい光を感じます。

 

魚とは不思議な存在です。

空気と光が無ければ生きていけない人間や動物にとって、深い海の底は死の世界です。

 

けれど、このじんべえざめが棲んでいる海よりももっともっと深い深海の底の底のような場所でさえ、生きている魚がいるのです。

人間は宇宙のこともまだまだわかっていませんが、実はそれ以上に地球のこともわかっていません。

 

悠々と泳ぐ巨大なジンベエザメを見ていると、彼らが人間よりも劣った生物であるどころか、実は神のごとき存在なのかもしれないとさえ思えることがあります。

 

どんなに文明が進んでも、人は自然への畏敬の感情を失くすべきではない。

新宮さんの絵本からは、そんなメッセージが感じられるのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

じんべえざめの頼もしさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「クマよ」【278冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はアラスカの雄大な自然に生きるクマ(グリズリー)を追いかけ続けた写真家・星野道夫さんによる写真絵本「クマよ」を紹介します。

文・写真:星野道夫

出版社:福音館書店

発行日:1999年10月31日(たくさんのふしぎ傑作集)

 

星野さんは1996年にTV番組の取材のため滞在していたロシアのカムチャッカ半島でヒグマの襲撃に遭い、亡くなりました。

この作品はその後、星野さんの遺稿やメモをもとに作られた最後の写真絵本です。

 

「写真」絵本とは何か、ということについては、このブログでも何度か触れました。

繰り返しになりますが、単に絵の代わりに写真が使われているという問題ではなく、私はそこに物語が読めるかどうかがポイントだと考えています。

 

そういう意味で、「クマよ」は突出した物語性を持つ傑作だと言えます。

私はもう、1ページ目からただごとじゃない衝撃を受けてしまいました。

いつか おまえに 会いたかった

 

この一文と、クマのアップだけで、作者の内奥から抑えようもなく湧き上がってくる想いが伝わり、圧倒されます。

テキストは全編通して、作者のクマに対する呼びかけで構成されています。

 

その文が素晴らしい。

写真家・探検家でありながら、随筆作品も発表されているのも頷けます。

魂を揺さぶるような詩です。

 

遠い 子どもの日 おまえは ものがたりの中にいた

ところが あるとき ふしぎな体験をした

町の中で ふと おまえの存在を 感じたんだ

 

気がついたんだ おれたちに 同じ時間が 流れていることに

おれも このまま 草原をかけ おまえの からだに ふれてみたい

けれども おれと おまえは はなれている

はるかな 星のように 遠く はなれている

アラスカの限りなく広がる美しい自然。

そこでの四季の移り変わりとクマたちをファインダー越しに追い続ける作者。

しかしいくらその姿を写真に捉えようとも、決して手の届かぬ存在への身をよじるような憧憬と渇望。

畏敬と畏怖。

 

冬の しずけさに 耳をすます

おまえの すがたは もう見えないが

雪の下に うずくまった いのちの 気配に 耳をすます

 

★      ★      ★

 

日本人にも馴染みの深いクマ。

他の動物に比べ、絵本での登場頻度も多く、その愛らしい姿からマスコットキャラクター化されることも飛び抜けて多いです。

 

その一方で、クマはペットにも家畜にもならず、人間とは一線を引き続けます。

日本でも、毎年クマに襲われて命を落とす人が出ます。

 

そんな近くて遠い野性への焦がれるような思いに突き動かされて、作者はシャッターを切り続けたのでしょう。

 

人間は思考力を手に入れ、自我意識を持ち、自由へと近づきます。

しかしそのことにより、自然から切り離されたような疎外感を感じずにはいられません。

 

人間よりも遥かに強く自然と結びつけられている野性動物を見るとき、その感情はさらに強く私たちを揺さぶります。

芸術家とは、そういう感性を人よりも遥かに強く持ち、そしてそれを外に表現せずにはいられないような人間です。

 

我々はそんな当たり前の事実を忘れ、写真家とは単に写真についての知識を持ち、撮影技術を持っただけの「商売人」のように考えていることがあります。

まあ、現代にはそういう写真家もいるかもしれませんが、少なくともこの作者が「芸術家」であったことは、この作品を読めば容易に理解できるはずです。

 

推奨年齢:10歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

クマへの憧憬度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ちいさな島」【265冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は1947年度コールデコット賞を受賞した「ちいさな島」を取り上げます。

作:ゴールデン・マクドナルド

絵:レナード・ワイスガード

訳:谷川俊太郎

出版社:童話館

発行日:1996年9月10日

 

作者のゴールデン・マクドナルドさんって誰?

と思ったら、カリスマ絵本原作者、マーガレット・ワイズ・ブラウン御大のペンネームのひとつでした。

 

ブラウンさんについては過去記事で何度か触れましたので、詳しくはそちらをご覧ください。

 

≫絵本の紹介「おやすみなさいおつきさま」

≫絵本の紹介「ぼくにげちゃうよ」

 

そして、絵師のレナード・ワイスガードさん。

ブラウンさんとの共作が最も多い作家さんではないでしょうか。

ブラウンさんの詩的な文章に、美しく印象的なイラストを描いた絵本を多数発表しています。

 

さて、この「ちいさな島」ですが、ちょっと変わった構成になっています。

前半は「ちいさな島」の自然や情景を、歌うように描写します。

言葉も絵も美しいですが、どちらかというと淡々とした写生で、詩のような絵本なのかな、と思わせます。

魚や野花、ロブスターやアザラシ、カワセミやカモメなど、島を取り巻く生き物たち。

 

しかし後半、いっぴきの子猫が家族(人間)と一緒に島にピクニックに来ると、それまでの写生風の記述は終わり、なんと「ちいさな島」と子猫が会話を始めます。

ちなみにこの猫だけはデフォルメされて描かれています。

 

子猫と島との会話は、どこか哲学的なテーマを含んでいます。

子猫は自分も小さな島のようなものかもしれないが、「ぼくは この おおきな世界につながってる」と、島との違いを挙げます。

 

しかし島は「わたしだって そうだ」と言います。

子猫は「いいや ちがうね」「水にうかんで、きみは じめんから きりはなされている」と反論します。

島は「さかなに きいてごらん」。

そこで子猫は魚を捕まえて、脅迫混じりに質問します。

魚は海の底でどんなふうにすべての地面が一つにつながっているかを語ります。

 

子猫は目を輝かせ、魚の言ったことを信じます。

 

子猫が帰った後、また本文は島の自然描写に戻ります。

そして最後に、印象的な一文で締めくくります。

 

★      ★      ★

 

自然賛歌的絵本ですが、同時に自己や生命についての哲学的命題も含んでいます。

 

子猫は「自分」と「世界」を切り離して考え、「足の裏」(あるいは毛皮)で世界と繋がっていると思っています。

それは自我が芽生え始めた子どもの素朴な認識です。

 

しかし一方に小さな島を一個の生命として対比させることにより、子猫の考える自分と世界との「境界線」は揺らぎます。

 

ここでは島が自我を持っているように描かれていますが、島の生命を形成するものは、作中に繰り返し登場するたくさんの生き物たちや、緑や、岩であると考えられます。

そうすると逆にまた、子猫を構成している毛皮や目や耳や尾、細胞のひとつひとつも、生命であると気づきます。

 

それらは子猫にとっては意思を持たないような存在でありながら、確かに自分の一部なのです。

子猫は自分が独立した存在であると同時に世界と繋がっているということを無邪気に信じていましたが、大きく考えれば、生命そのものには境界線がないとも言えます。

 

宗教的な話になってしまいますが、ここで重要なのは、こうした思考によって子猫(=子ども)の認識レベルのステージが上昇したということです。

子猫は島との対話を経て、確実に成長するのです。

 

それは別に「島が水に浮いているわけではない」という科学知識をひとつ覚えたというような次元の話ではありません。

「この世界は自分の見たまま・感じたままの範疇に収まっている」という子どもらしい素朴で傲慢な認識から脱却し、知性の射程を広げたということです。

 

子猫は魚の語ることを「信じる」ことによってその成長を成し遂げます。

それは盲信的態度ではなく、真実への「畏怖」と自分の無知を受け入れる「敬虔さ」です。

 

現代では宗教というのは敬遠されがちですが(無理もないとは思いますが)、子どもの成長に関して宗教が果たすべき役割とは、本来的には上記のような感情を育成することではないかという気がします。

 

科学は素晴らしいものだし、重要なものですが、科学知識だけでは「人間性」は達成されません。

絵本の持つ力や役割というのも、そのあたりにあるのではないでしょうか。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

考えさせられる度:☆☆☆☆☆

 

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