2018.04.11 Wednesday
【絵本の紹介】「おっぱいのひみつ」【234冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は月刊科学絵本「かがくのとも」傑作集より、「おっぱいのひみつ」を紹介します。
作・絵:柳生弦一郎
出版社:福音館書店
発行日:1991年3月6日(かがくのとも傑作集)
人体に関する絵本を、平易な文章とインパクトのある絵で描くスタイルの柳生弦一郎さん。
ところどころに「おふざけ」要素を交えながら、実は至って誠実な科学絵本です。
「どうして おとこのひとは ブラジャーをしないの?」
「だって、おっぱいが おおきくないもの」
子ども目線の素朴な疑問からスタートし、「おっぱい」とは何かに迫ります。
女の人のおっぱいが大きいのは、「あかちゃんに おちちを あげるため」。
その準備として、10歳ごろからおっぱいが膨らみ始めるのだということを教えてくれます。
母乳の出る仕組みについても(とても精密な図とは言えませんが)図解で説明。
そして、おっぱいが単に赤ちゃんの食事としての機能だけでなく、「心の栄養分」でもあることに触れます。
それはスキンシップの重要性に繋がります。
乳房に吸い付いたり、舐め回したり、手でぎゅっと触ったりすることは赤ちゃんにとってもお母さんにとっても「とても だいじなこと」。
「あったかくて やわらかくて とても いいきもち!!」
★ ★ ★
どの家庭もそうでしょうけど、授乳に関しては、我が家も色々と思い出があります。
産まれたばかりの息子は口が小さくて、うまく母乳を吸えませんでした。
加えて、妻の母乳の出も良くなく、粉ミルクに頼らざるを得ない状況でした。
この絵本で言及されているように、授乳行為が重要なスキンシップであること、それが赤ちゃんの情緒面の発達にとって非常に良い影響を及ぼすことは広く知られています。
息子が生まれる前から、妻はできることなら100%母乳で育てること、そして自然に乳離れするまでは母乳を与え続けることを望んでいました。
しかし、上記のような事情に加え、数時間おきの授乳による睡眠不足、産後うつ、さらに息子には乳首を噛む癖があって、それがとんでもなく痛いというので、結局1歳過ぎたころに断乳しました。
それは仕方のないことでしたが、妻は今でもそのことを悔やむことがあります。
息子の反抗がひどい原因はそこにあるんじゃないか……などという考えがよぎったり。
でも、それはあまり生産的でない考え方だと思います。
母乳育児は素晴らしいことには違いありませんが、それが全てではないし、それだけが問題なわけがありません。
母乳に限らず、育児に関する母親の神秘性みたいなものを賛美し過ぎると、結局のところ母親一人に負担がかかり過ぎるし、ひどい場合には子育てに積極的でない女性に対するバッシングに繋がったりします。
子どもをどう育てるかについての判断は最大限個人の自由に委ねるべきだと思います。
「母乳が素晴らしい」と言うことと「母乳で育てなければならない」と言うことは全然違うことです。
この絵本の巻末の「おかあさんによんでもらうページ」には、八王子中央診療所所長の山田真氏の文が掲載されています。
そこに「あかちゃんにおちちをあげることのできないおかあさん」について、「人間はひとりひとりちがっているのですから、そういうおかあさんがいても、ちっともおかしくはないのです」と書かれています。
読み聞かせをする際には、必ずこの最終ページを併せて読んで下さい。
この一文があることで、この絵本は真に科学的でありうるのだとさえ言えます。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
照れずに読もう度:☆☆☆☆
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