たまには児童書感想文

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日から通常営業再開しています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

お盆休み中はこれといった過ごし方もしてなかったんですが、息子とはずっと一緒に遊んでました。

最近息子のピタゴラ熱が上昇しており、よくピタゴラ装置を作ってます。

私も手伝わされるんですが、あの装置を作るのはなかなかにしんどい作業です。

息子の設計はやっぱりまだ甘いので成功率も低いし。

 

けど、以前と違うのは失敗しても怒らなくなったこと。

むしろ失敗を楽しんでるみたいで、何回でも繰り返してチャレンジしてます(設計を見直すことはしない)。

50回くらい失敗した時に、「作り直したほうがいいんじゃないの」と言うと、

ぼくがピタゴラ装置が好きなのは簡単だからではなく、困難だからだ

 

……こいつ、アポロ計画の時のケネディ大統領の演説をどっかで見たな。

休み中だからといって本はあんまり読んでません。

それでも一般の5歳児の読書量とは比べられないでしょうけど。

 

もうここ一年以上、絵本を「読んで」と言ってくることはなくなりました。

かつて毎日何十冊も読んでたころのことを思い返すと楽になったような寂しいような。

たまには一緒に読みたいですね。

 

読んであげるのはもっぱら児童書ばかりです。

食事の時に少しずつ読んでます(おかげで食べるのの遅いこと)。

 

読了したものを一部紹介しますと、

ジュール・ベルヌの「十五少年漂流記」。

結構難しかったと思うんですが、まあまあ理解しているみたいです。

今でもクライマックスの戦闘シーンだけをリクエストしてくることがあります。

 

ぼくは王さま」シリーズ。

特に、「王さまロボット」に収録されている(新装版だと「ハアト星の花」)「モルト星の石」という短編がお気に入り。

私も大好きでしたが、こういう本格SFも違和感なく盛り込んでいるところが「王さま」の魅力のひとつ。

しかも、SF系短編のほとんどは未解決の部分を残した結末になってて、不思議な読後感。

 

あと、初期のお話「ウソとホントのほうせきばこ」もリピート率高いです。

王さまの話は基本的に途中で切らずに読み切ることになってるんですけど、このエピソードは相当長いんで苦労します。

 

長くつ下のピッピ」(アストリッド・リンドグレーン著・岩波少年文庫・大塚勇三訳)。

海外児童小説はちょっと伝わりにくいユーモアや言い回しがあったりしますが、そういうものにどんどん触れておくと将来一人で読書する時の楽しみが増えると思います。

世界一の怪力、独特のファッション、人を煙に巻くようなお喋り、お金持ちで学校にも行かず、毎日好きなことをして過ごすピッピの痛快なこと。

息子はピッピが「馬を持ち上げる」シーンと料理のシーンで必ず大笑いします。

 

西遊記」は翻訳が違うもので子ども向けのを二作読みました。

ひとつは偕成社から出版されている渡辺仙州訳・佐竹美保絵。

もうひとつはポプラ社の吉本直志郎訳・原ゆたか絵。

 

個人的には後者のほうが訳文・絵ともに好みでした。

というか、音読するとよくわかるんですが、文章力とかテンポの良さとかが段違いです。

偕成社のほうは同じ言い回しが多用されてたり日本語が変だったり、正直読んでて辛かったです。

 

ただ、ポプラ社の方はわりと性的な描写もあるので(オブラートに包んではいますが)、息子から突っ込まれないかドキドキしながら読んでました。

別に聞かれたら答えるけどさ。

 

もっとも息子の方はどちらが好きということもなく、どっちも喜んで読んでました。

西遊記自体が超面白いですからね。

特にユニークな武器の数々がツボだったようです。

 

ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズ。

これは現在四作目まで刊行されてます。

私は二作目の「ルドルフともだちひとりだち」までしか知らなかったので、息子のおかげで続編に触れることができました。

やっぱり最初の方が面白いです。

これ、子どもの頃は気づかなかったけど、実は「任侠もの」なんですね。

 

ドロシー・エドワーズの名作「きかんぼのちいちゃいいもうと」シリーズ。

福音館書店から出版されている作品は訳が渡辺茂男さん、挿し絵が酒井駒子さんということで、絵本好きなら親しみやすいでしょう。

とにかく名文。

作者は子どもの普遍的な心情というものを知悉しており、深い愛情を持って彼らが喜ぶであろう物語を構築します。

私が一番好きなのは最初の「おさかなとり」で、全然泣くような話じゃないのに、何故かラストで涙ぐんでしまいます。

それは「よくぞこんなところを掬い取ってくれた」という作者への感動かもしれません。

言うまでもありませんが、酒井さんのイラストは最高です。

 

斎藤淳夫さんの「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」。

私が子どもの時はアニメから入った作品です。

アニメも原作も傑作です。

 

実はこの作品で息子は初めて物語を聞いて涙を見せました。

ラストシーン、潮路さんが死んでしまうところです。

これまでは感動する話を読んでもゲラゲラ笑ってたり、いまいち感情の掴めない子だったんですが、成長したなあと感慨ひとしおでした。

 

ただ、本人は悲しくなる話は読んで欲しくないそう。

それも普通ですけどね。

幼い子どもは単純なハッピーエンドを求めるものです。

 

物語なら涙ぐむくらいですむけど、休み中に「となりのトトロ」を見せたら、サツキとメイが喧嘩して大泣きするシーンで息子が泣きながら「消して!」と叫んで怒り出してしまいました。

泣くシーンは絶対ダメだそうです。

 

息子の情緒はまだまだ成長途上です。

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

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【絵本の紹介】「サンタのたのしいなつやすみ」【333冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

当店は夏休みとして8月10日〜15日までは出荷作業をお休みさせていただきます。

受注・問い合わせメールは常時受け付けております。

 

さて、今回紹介するのは「サンタのたのしいなつやすみ」です。

作・絵:レイモンド・ブリッグズ

訳:こばやしただお

出版社:篠崎書林

発行日:1976年6月1日

 

この絵ですぐにピンときますよね。

そう、ブリッグズさんによるあのやたら人間臭いサンタが奮闘する「さむがりやのサンタ」の続編です。

 

≫絵本の紹介「さむがりやのサンタ」

 

これは篠崎書林から出版されていた廃刊本で、現在はあすなろ書房から翻訳を新たに「サンタのなつやすみ」が刊行されています。

 

いやあ、またあのサンタさんに会えるのは嬉しいです。

今回もたくさん文句言ってます。

 

タイトル通り、サンタさんの夏休みを描いた番外編的作品なのですが、その過ごし方の優雅なこと、愉快なこと。

世界各国の描写の面白いこと。

個人的には前作よりも好きだったりします。

 

このサンタさんはイギリス在住なのですが(どうもイギリス以外の国は管轄外っぽい)、夏休みに海外旅行を計画します。

前作同様、細かいコマ割りとフキダシによるコミックスタイル。

ごちそう、ワイン、太陽に憧れてパリ行きを決めるサンタさん。

 

仕事用のそりを改造してキャンピングカー仕様にし、ラジオでフランス語を勉強。

持っていく荷物からサンタさんの個性が見えます。

バードウォッチングが趣味の様子。

 

パリでは覚えたてのフランス語を操り、服を買い、フランス人っぽく振る舞おうとしたり。

レストランではクリームソース料理ばかりでケチャップとソースを恋しがったり。

挙句にはお腹を壊してしまいます。

水のきれいなところがいい、というわけでサンタさんは次にスコットランドを目指します。

現地の音楽やウイスキーを堪能しますが、水が冷たいのとサメが出るのに辟易して、今度は砂漠のラスベガスへ。

山盛りのポテトに肉料理、ケチャップ……ジャンクフードはサンタさんの好みに合ってるようです。

ショーを見物し、カジノでギャンブルに興じ、念願かなって熱い日差しを浴びてプールで泳ぎ、夢のバカンスを満喫。

プールサイドで読んでいるのはギャンブル本。

まさに「俗」丸出しのサンタさんですが、とても好感が持てます。

下品じゃないからでしょうか。

 

楽しい時を過ごしたサンタさんですが、お金が寂しくなってしまい、我が家へ帰ることに。

ペットたちと再会し、庭の花々の生長を確認し、そしてすぐさま仕事に取り掛かることになります。

 

だれがみてるってわけでもないけど」赤いユニフォームに着替え、いつもの紅茶を沸かし、すっかり仕事顔に戻ります。

そしてしみじみと「やっぱりここが じぶんのうちがいい」と呟くのでした。

 

★      ★      ★

 

実は私の息子もこの作品が大好きで、何度も引っ張り出して読んでます。

特にフランス語のシーンとフランス料理のシーンがお気に入り。

 

この絵本ではフランス語の会話がそのままカタカナ表記されてるので、そこを読んではゲラゲラ笑ってます。

息子に限らず、子どもは知らない言葉が好きなものかもしれません。

 

旅行に行きたくなる本でもありますが、フランスもスコットランドも魅力的に描きつつ、案内役のサンタさんが最後はぼろくそに言うので、薦めてるのかけなしてるのかわかりません。

 

ヨーロッパでは長期休暇が当たり前でも、日本人は休み下手なので、こういう長いバカンスの過ごし方がわからないのではないでしょうか。

このサンタさんは実に休み上手。

時間の使い方、気持ちの切り替え、暮らしの中のちょっとした手間。

相変わらず文句は多いけど、豊かな人生の過ごし方を知ってます。

 

お金も相当使ってますけど。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ガイドブック絵本度:☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「サンタのたのしいなつやすみ

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【絵本の紹介】「マリーナ」【332冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休みらしい絵本をと思い、今回は「マドレーヌ」シリーズで有名なルドウィッヒ・ベーメルマンスさんによる幻のユーモア絵本「マリーナ」を持ってきました。

作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス

訳:ふしみみさを

出版社:クレヨンハウス

発行日:2009年6月20日

 

世界中で大人気の「マドレーヌ」シリーズについては、過去記事をお読みください。

 

≫絵本の紹介「げんきなマドレーヌ」

≫絵本の紹介「マドレーヌといぬ」

 

さて、今作が「幻の」と言ったのは、日本では長らく翻訳されていなかったからです。

クレヨンハウスから2009年に発行されていますが、ベーメルマンスさんがこれを発表したのは実に1962年のこと。

 

内容はと言えば、次々と海の生き物たちが登場する、まるで水族館のような楽しさいっぱいの絵本です。

「マドレーヌ」とはまた違ったベーメルマンスさん「らしさ」が読めます。

 

マリーナ」とはアシカの女の子の名前。

主人公でありながらセリフなし。

 

そのへんは初登場時のマドレーヌも同じでしたが、マドレーヌと違ってマリーナは行動もほとんどなし。

物語の中心にいながらひたすら受動的であるという面白い立ち位置になってます。

 

物語を牽引するのはマリーナの父親です。

彼はサーカスのスターであり、夏のバカンスに妻と娘を連れて海辺の家へ出かけます。

そこで呑気に遊んでいるイルカの一群を見て、父親は「あれじゃ へっぽこ イルカショーだよ!」と玄人っぽく批判します。

 

が、その間にマリーナは一人で海へ遊びに出て、大きなサメに丸呑みにされてしまいます。

両親は慌ててそこらの生き物に助けを求めますが、くじら、トド、ワニ、誰に声をかけてもつれない返事。

するとそれを見ていた先ほどの6頭のイルカたちが立ち上がります。

イルカたちはサメを海の上に放り出し、サメは弱ってマリーナを吐き出します。

両親は急いで娘を救急病院へ搬送し、手術が行われ、マリーナは元気になります。

 

無事に家に帰った後、父親はしみじみと呟きます。

どうしようもなく こまったときに、たすけてくれるのは、ふだんは のんきな おどけものなんだな!

 

★      ★      ★

 

見返しも含めて、絵が素晴らしく楽しいです。

一見テキトーな線なようで、ひとつひとつのキャラクター造形が凝っており、表情豊かです(特にサメ)。

 

助けを求めるアシカ両親に対するくじらたちのシビアな回答、マリーナを吐き出したのに結局カラカラの干物にされてしまう可哀そうなサメ。

ユーモラスでキューティでありながら甘ったるいところがないのがベーメルマンスさん流。

 

また、原文はわかりませんが、ネーミングでも遊んでます。

「ノラ」「クラ」「ダラ」「デレ」「グー」「タラ」……ひどい。

 

イルカとマリーナ以外では何故か唯一名前を付けられているのが看護師の「ヒポポタマスさん」(カバ)。

これはどう考えても「ヒポクラテス」とかけたかっただけでしょ。

 

全然活躍しない主人公のマリーナはラストシーンではちょっと大きくなって髪の毛が伸び、娘らしくなってます。

これは事件を経て成長したということなのか、それとも単なる描き間違いでしょうか。

何しろ「げんきなマドレーヌ」では、11人のはずのキャラクターを12人描いたりするベーメルマンスさんですからね(38pのシーン)。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

カバは海の生き物じゃないだろ度:☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「マリーナ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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