【絵本の紹介】「がいこつさん」【329冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「がいこつさん」です。

作・絵:五味太郎

出版社:文化出版局

発行日:1982年5月2日

 

一目でわかる特徴的なイラストは五味さん独特の味。

本人はよく自分は絵が下手だと言ってますが(林明子さんと比べたりするから……)、そんなことはないと思います。

この「がいこつさん」なんか、すごく可愛いです。

足の曲げ方とか、表情(?)とか。

 

もともと、絵本の絵とは上手であることが重要なのではありません。

上手に越したことはないかもしれませんけど。

五味さんは絵よりも絵本の構造的な部分で毎回手法を変えてきます。

この作品では、テキストの語り手が、主役である「がいこつさん」と掛け合いをするというメタ的な表現がされています。

 

何かが気になって眠れないがいこつさん。

なにか 忘れているような 気がする……

語り手が「ちゃんと思い出さないと いつまでたっても ねむれませんよ」と言うと「それも そうだな」と、がいこつさんは起き出して考え始めます。

 

この語り手とは作者なのか、読者なのか、神様なのか、それともがいこつさん自身の心の声なのか、その辺はわかりません。

思い出せないがいこつさんは外へ散歩へ出かけます。

さっぱりと いい天気」と書いてますが、何だか夜中みたいに見えます。

暗めの青を基調にした色使いのせいで、もちろん意図的なものでしょう。

病院に 予約してあったかな

頭を さっぱりするの 忘れていたかな

などと呟くがいこつさんに、語り手は「まさか」とツッコミを入れ続け、そのたびにがいこつさんは「それも そうだな」。

デパートをあてもなくうろつき、最後にトイレへ。

もちろんがいこつさんはおしっこなんかしません。

でも、最後に鏡を見て気づくのです。

忘れていたのは……。

 

★      ★      ★

 

五味太郎さんらしいシュールさ満載の世界。

色調は暗めでも、少しも怖くもないし、がいこつさんのキャラクターもいい。

何を言われても「それも そうだな」と受け流す淡泊さの内には、すでにこの世から解き放たれた存在ゆえの涼やかな達観があるのでしょうか。

 

もう何も必要ではないがいこつさん。

語り手との愉快な掛け合いの中に、ほんのちょっぴりの寂寥感が隠し味として含まれています。

 

誰かがどこかで 待っているの 忘れていたかな

いやいや、もうそれはない。たしかに 待っていたひともいたけれど、それはもう ずっと昔の話

 

オチについては一応伏せておきましたけど、別にオチが重要な絵本ではありません。

だいたい予想できますし、絵本に慣れた読者ならちゃんと見返しの絵を見るので、すぐにピンとくるはずです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

口を開けたがいこつさんの可愛さ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「がいこつさん

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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〒578−0981

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URL:http://ehonizm.com/

【絵本の紹介】「おなら」【328冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久しぶりに科学絵本。

それも長新太さんによる真面目な科学絵本です。

ズバリ「おなら」。

作・絵:長新太

出版社:福音館書店

発行日:1983年8月20日(かがくのとも傑作集)

 

絵だけでなく文や構成まで長さん自身が手掛けた科学絵本というのは珍しいのです。

というか、管見の及ぶ限りこれ一冊だけかもしれません。

長さんの熱の入れようがわかります。

 

表紙はゾウの後ろ姿、裏表紙が正面像。

普通は逆ですが、「おなら」についての絵本ですから当然こうなるわけです。

 

何しろあの長さんですから、科学絵本らしからぬふざけた内容になるのでは……と心配しますが、そこはさすが安心と実績の「かがくのとも」。

ちゃんと科学してます。

 

ものを たべたり のんだりするとき、くちから くうきが はいる

そのくうきが くちからでると げっぷとなり こうもんからでると おならになる

 

テキストはシンプルで、いつもの長さん節も封印。

就学前の幼児でも理解しやすい内容です。

ちゃんと人体の断面図なんか用いたりして。

けんこうな ひとは 1かいに やく 100みり りっとるの おならをだす

1にちでは やく 500みり りっとるの おならをだす

肉を食べる動物のおならは臭いとか、腸の手術をした後でおならが出ると腸が正常に動き出したことがわかるとか、大人なら知っていることがほとんどで、そこまで専門的な話にはなりません。

でも、普段あまりしない話だけに、改めて読むと妙に感心してしまいます。

そして、やっぱり行間から長さんらしさを感じてしまうのです。

 

★      ★      ★

 

うちの息子はいまだ羞恥心というものが芽生えていないかのように見えます。

ずっと家で生活してるからでしょうかね。

 

最近、おならをするたびに報告してきます。

今、プッてなった!」と。

別にいちいち言わなくていいのに。

それも、面白がってるわけでも照れてるわけでもなく、真剣に報告してくるのです。

 

この絵本も、ふざけたり照れたりせず、淡々と事実を語っている形式に見えます。

ところが、それがかえってムズムズするんですね。

ことさら真面目な顔をした長さんが、こちらのそんな気持ちを見透かしているような気がします。

 

真面目なのか、笑わしてるのか、その微妙な空気。

最後に思いっきりすっとぼけた調子で「さようおなら」。

そして見返しにびっしりと「おなら音」。

 

ぷう ぷお ぷおお ぶう ぶうう ぶぷー ぶるるる……」。

うん、絶対笑かしにきてる。

 

この絵本を息子に読んだのはもうかなり前のことですが、この見返しを繰り返して読まされるのには辟易した思い出があります。

何回も何回も読んでるうちに、ゲシュタルト崩壊起こしたり。

 

なんにせよ、これもまた名作絵本には違いありません。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

最後の方のおなら音ありえないだろ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「びゅんびゅんごまがまわったら」【327冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は自然豊かな田舎の小学校風景と昔ながらの遊びの描写がノスタルジーを刺激する傑作絵本を紹介します。

びゅんびゅんごまがまわったら」。

作:宮川ひろ

絵:林明子

出版社:童心社

発行日:1982年7月20日

 

挿絵はお馴染みの林明子さん。

初期のころの初々しい絵柄ですが、子どもたちの体の動きなどの的確さは流石です。

また、この作品では地面に映る木漏れ日の描写など、陰影が印象的です。

 

絵は当然のこととして物語、キャラクター、小道具、魅力を上げればきりがない作品ですが、まずは内容から入りましょうか。

舞台は「かえでしょうがっこう」。

二階建ての小学校に、広々とした校庭。

そして、通称「あそびば」と呼ばれている林。

 

そこには倒れた木の「いっぽんばし」があり、1年生の「こうすけ」は、そこで調子に乗って足を滑らせ、骨折してしまいます。

その事件来、遊び場には金網で遮られ、鍵をかけられてしまいます。

 

春になり、こうすけも2年生になりましたが、遊び場は依然封鎖状態です。

ここが大好きな生徒たちは残念でなりません。

責任を感じたこうすけは、新しい校長先生に直談判し、遊び場を開放してくれるよう懇願します。

が、この校長先生がなかなかの曲者。

せんせいは あまのじゃくだからね、たのまれると あけてやりたくなくなるのさ

と意地悪な返事をします。

 

そして机から取り出したびゅんびゅんごまをこうすけたちに分け、これを回せるようになったら頼みをきこうと言うのです。

さあ、こうすけたちは猛練習を始めます。

 

ところが、できたと思って校長室へ行くと、校長先生は2つ、3つと回すこまの数を次々増やしていきます。

その度にこうすけたちは練習を繰り返しますが、とうとう4年生の「くによ」はこまを投げて諦めてしまいます。

面白くない気分のくによは、おばあちゃんに教えてもらった柿の実で作った首飾りを、校長先生の机にそっと置いて行きます。

これは校長先生に対するちょっとした意地でやったのですが、校長先生は朝礼にその首飾りをかけて出てきたり、喜んでしまいます。

 

さて、こうすけたちはやっと3つ回せるようになりますが、校長先生は今度は4つ同時に回して見せます。

がっかりした「たかひろ」は、仲間をさそって竹馬の練習を始めます。

こまは諦めて、竹馬の名人になって、校長先生を驚かせてやろうというわけです。

それでもこうすけだけは4つのこまを回そうと頑張ります。

 

そして何日もたって、ついにこうすけは4つのこまを回すのに成功します。

生徒たちに囲まれて、校長先生は「ちょっとだけだぞ」と、遊び場の鍵を開けてくれます。

 

それから校長先生は職員会議でこのことを議題にし、再び遊び場は開放されることになりました。

すっかり校長先生と仲良くなったこうすけたちは今度は逆に校長先生に宿題を出します。

それは「さやぶえ」を吹けるようになること。

さてさて……。

 

★      ★      ★

 

校長先生の魅力的なこと。

今ではもうこんな先生はいないでしょうし、いたとしても様々な圧力によって潰されてしまいそうです。

 

昔はひとくちに教師と言っても、様々な人間がいたのでしょう。

今ではまるでコンビニの店員のようにマニュアルをこなすだけの教師しか生き残れない環境になってしまった気がします。

 

もっとも、型破りな教師を認めると、その一方で生徒に対し強権を振るうような有害な教師も出てきてしまうものかもしれません。

そのような教師は教育現場からはじき出されて当然ですが、同時に教師の「個」というものも破壊されてしまいました。

 

教育というのは難しい、人類の最大のテーマと言っても過言でないほどに難しいものです。

そこに携わる人間がどのように振る舞うべきかについての合意は、時代と共に変遷し、そしていつの時代も結論が出ません。

 

ある年齢の子どもたちにとって、親以外の大人との接触は非常に重要です。

かといって別にそれらの大人が完璧な人間である必要はないと思います。

 

教師と生徒の間にどのようなコミュニケーションが発生するのか。

問題はほとんどそれだけです。

そしてそれゆえに難題なのです。

 

しかし、この絵本には確かにその答えの一端があるように思えます。

 

この作品の学校のモデルになっているのは、群馬県高崎市立滝川小学校、東京都武蔵村山市立千川小学校の二校のようです。

ちゃんと現在も残っています。

この絵本のような穏やかでわくわくするような時間もまた、そこに残っていれば素敵だなと思います。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

校長先生のヘアスタイル奇抜度:☆☆☆☆

 

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