競争相手は蹴落とすものではなく、引き上げるもの

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家の息子も来年には小学生です。

これまでここでアレコレ書いてたように、息子はずっと家だけで過ごしており、幼稚園も保育所も行かず、友だちもいません。

この子が集団の中に入れられた時どんな反応を示すのか、不安半分楽しみ半分です。

 

わがまますぎるんじゃないかと心配した時期もありましたが、意外とよその人には礼儀正しかったりするのです。

私にはグーパンチを浴びせますが。

さて、子どもをどんな小学校に通わせるかは、親にとって悩ましい問題です。

どんな先生がいるのか、教育方針はどうなのか、周辺環境はどうなのか……など、考えればきりがない。

 

私も色々と検討してきましたが、はっきり言ってよくわかりません。

ネットで調べても、人に聞いても、小学校を評価する基準がほとんど「学力」ばかりだからです。

 

小学生の内からそんなに勉強ばかりしなくても……などと呑気に構えてる場合じゃないんだそうです。

きょうびの教育熱心な親御さんたちは、すでに小学校から大学受験までのルートを考えているのだそうです。

 

それを悪いことだとは思いません。

親心も理解できます。

 

でも、そういう「いい大学に入って、いい会社に就職して、いい配偶者を見つけて、いい家庭を築く」のが人生の目標という時代はもう終わりでいいんじゃないでしょうか。

もちろん、そういう人生は結構ですし、心から幸せな人もいらっしゃるでしょう。

しかしそれと人間的な完成度とは何の関係もありません。

 

今の社会では「同年代の競争相手」に勝ちさえすれば「成功者」になれるというルールが一般的になっています。

みんなが少しでも社会的な上昇を望んで競争を繰り返しています。

そのために子どもを幼いうちから塾や習い事に通わせるのです。

 

勉強なんて無意味、とは思いません。

勉強は大事です。

でも、それは「同年代集団での競争に勝つ」ためではなく、人間的に成長するために必要なのです。

 

きれいごとを言ってるように思われるでしょうが、その「きれいごと」を忘れてはならないのです。

そして本当は心の底では、誰もが「きれいごと」で生きるべきだと思っているのではないでしょうか。

教育に熱心な親御さんたちは、我が子の将来を真剣に考えている点、素晴らしいと思います。

でも、何が起こるかわからない世の中で、本当に我が子の将来を考えるならば、同年代集団での競争に勝つという局地的にしか使えない能力よりも、自ら必要なことを学習し、応用し、どんな状況でも愉快に生きることのできる人間力こそ重視するべきではないでしょうか。

 

息子が幼いうちから大量の絵本を読み続ける私は、他人から見れば早教育に躍起になっているように思われるでしょう。

しかし、私が息子に望むものは「競争相手を蹴落とす」能力ではなく、「競争相手を引き上げる」能力なのです。

それによって互いが、一人では到達できなかったステージへ上昇することができるからです。

それは真に自由な精神で主体的に学ぶ人間でなければできないことです。

 

小学校選びはもちろん大切です。

けれども、本当に大切な親の仕事は「どんな小学校に通わせるか」を選ぶことではなく、「どんな小学校に行っても大丈夫」な子どもを育てることではないでしょうか。

 

小学校に関しては色々と思うところもあるのですが、それはまた今度。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「10までかぞえられるこやぎ」【317冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「10までかぞえられるこやぎ」です。

作:アルフ・プリョイセン

訳:山内清子

絵:林明子

出版社:福音館書店

発行日:1991年7月5日

 

原作者のアルフ・プリョイセンさんは「小さなスプーンおばさん」などを手掛けたノルウェーの児童文学者です。

そしてこの日本版を制作するにあたって、林明子さんが新たに絵を描いています。

 

人間(というか女の子)の登場しない林さん作品は実は珍しいです。

いつもは林さんの描く女の子の絵のあまりの可愛さ、肌や髪の質感に目が行ってしまいますが、改めて彼女の突出した画力に唸らされる一冊です。

 

上手いのは言うまでもないんですが、それに加えて「絵本の絵」とはかくあるべしといった雄弁な絵となっています。

林さんの絵が無ければこれはまた全然違う話になってしまうでしょう。

そのくらい絵そのものの物語る力があるのです。

 

物語は10まで数字を数えられるようになったこやぎが、出会う動物を「ひとつ、ふたつ」と数え、数えることの意味を知らない動物たちが怒り出し、次々にこやぎを追いかけてくるという滑稽なドタバタ劇。

逃げながらもこやぎは数えることを止めません。

牛の家族、馬、豚……。

かぞえられちゃった」動物たちはとりあえず憤慨し、こやぎを追います。

躍動感あふれる追いかけっこの絵は、それだけでもワクワクしてきます。

林さんにしては珍しい(?)コミック的なユーモラス表現も見られます(電撃が走ったような馬のたてがみとか、小屋をぶっ壊して飛び出してくる豚とか)。

 

イラストの枠が最初は小さく、後半になるほどだんだん大きくなっていく仕掛けも臨場感たっぷり。

最後は沈みかけた船の乗員数を数えることで(何故か)危機を乗り越え、大団円。

 

★      ★      ★

 

数のお勉強絵本かと勘違いされる方もいるかもしれませんけど、紹介した通りのリズミカルなユーモア絵本です。

これを楽しんで読むくらいの年齢の子なら、10までくらい数えられるでしょうし、むしろ数えられることでこやぎと同化してスリリングな追いかけっこを楽しむことができます。

 

そしてこの絵本には隠された楽しみ方があるんです。

それは林さんの(いつもの)遊び心による「隠し絵」。

 

実は作品中すべてのカットに「人の横顔」が隠れているんです。

気付かないでしょ?

 

表紙の山並みの輪郭を見てください。

左側を額にした、下を向いた人の顔が浮かび上がってきませんか?

 

これ以上は是非自分で探してみてくださいね。

ちなみに扉にも裏表紙にもちゃんとありますよ。

話の内容とはまったく関係ないだけに、全部見つけるのはなかなか難しいです。

 

こっそり笑ってる林さんの姿が目に浮かぶようです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

隠し絵難易度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「10までかぞえられるこやぎ

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【絵本の紹介】「めがねうさぎ」【316冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

近視大国・日本。

国民の約6割が近視だそうで、発症する年齢もだんだん下がっているようです。

私も妻も小学生の頃に近眼が始まりましたが、息子の場合はもともと良い目が悪くなったのではなく、そもそもピント機能が発達していない弱視の近視でした。

 

去年の暮から治療用眼鏡をかけた生活を始め、どうにか最近に矯正視力が出るようになりました。

しかし、眼鏡が外せるようになったわけではありません。

今では手術で近視は治ります(私も妻も手術済み)が、大人になるまでは眼鏡(かコンタクトレンズ)が手放せないわけです。

 

親としてはどうにも不憫で、あれこれ気を回したり、もっと可愛いフレームにした方が良かったかと悩んだりしますが、本人はすでに眼鏡が体の一部となっており、起きるととりあえず眼鏡を探すようになりました。

 

大人が気にするほどには子どもは眼鏡を疎ましく思っていないようです。

まあ、これだけ眼鏡の人が多くなると、学校でももういちいち冷やかされたり、からかわれたりということもないのかもしれません(まだ息子は学校に行ってないから知らないけど)。

 

今回はせなけいこさんの「めがねうさぎ」を紹介します。

作・絵:せなけいこ

出版社:ポプラ社

発行日:1975年2月

 

表紙を見ればわかる通り、日本中の子どもたちにトラウマを植え付けたあの最恐絵本「ねないこだれだ」と同じ造形のおばけがここにも登場します。

 

≫絵本の紹介「ねないこだれだ」

 

ただ読めばわかりますが、このおばけは見た目は「ねないこだれだ」のおばけと一緒でも、セリフも行動も表情も愛嬌たっぷりで少しも怖くありません。

天然眼鏡っ子キャラクターの「うさこ」にいいように翻弄されてしまいます。

 

冒頭の一文がとてもいい。

近頃目が悪くなったうさこが眼鏡をかけるようになると、友だちが面白がって「めがねうさぎ」と呼ぶようになります。

するとうさこは「ちょっぴり はずかしく ちょっぴり とくいです」。

そうなんですよね。

子どもは眼鏡でも松葉杖でも、周囲と違う特別を誇らしく思ったりするようです。

マドレーヌは、盲腸の手術痕を見せびらかしてましたし。

 

≫絵本の紹介「げんきなマドレーヌ」

 

さて、夜寝る前になって、うさこは眼鏡をしていないことに気づきます。

昼間遊んだ山で落としたのかもしれないと思い、うさこは大胆にもひとりで探しに出かけます。

そこで眼鏡と間違えて、ふくろうの目玉やねずみのしっぽを掴み、叱られます。

森の奥まで来たところ、そこには退屈したおばけが待ち構えていたのです。

 

うさこを見つけたおばけは張り切って「べろべろ ばあー」。

ところがド近眼のうさこは目の前のおばけがよく見えていません。

ちっとも怖がらないうさこにがっかりしたおばけは、うさこの眼鏡探しを手伝います。

汗をかきかき、必死になって眼鏡を探すおばけが愛おしい。

一方のうさこは「だれだか しらないけど しんせつな ひとだなあ」と座って待っています。

 

一晩中かかってやっと眼鏡を見つけたおばけは、うさこに眼鏡をかけさせ、今度こそ驚かせてやろうと伸び上がります。

ところがちょうど夜が明けてしまい、朝日を浴びたおばけは「きゃあ!」と叫んで消えてしまいます。

 

結局うさこは何も知らないまま、眼鏡が見つかったことを喜びながら帰って行くのでした。

 

★      ★      ★

 

ユーモラスな展開でありながら、そこはかとなく怖い雰囲気だけは漂っているのがせなさんの持ち味。

夜の山なんて普通でも恐ろしいところなのに、見えていない状態で平気で歩いて行くうさこには驚きです。

 

むしろ見えているからこその恐怖があり、見えないから逆に怖くないという逆転現象が描かれています。

それは視界だけの話ではなく、のほほんとしたうさこの性格ゆえに、何も恐れることがないのです。

 

身体機能が正常であることはもちろん望ましいことですが、精神が健康であることのほうがさらに喜ばしいのではないでしょうか。

眼鏡の息子を持つ身となってから、今一度この絵本を読むと、何だか勇気づけられるのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

おばけに同情度:☆☆☆

 

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