【絵本の紹介】「タトゥとパトゥのへんてこマシン」【391冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はフィンランドで大人気、そして我が家でも大人気の楽しい絵本を紹介しましょう。

タトゥとパトゥのへんてこマシン」です。

作・絵:アイノ・ハブカイネンとサミ・トイボネン

訳:稲垣美晴

出版社:偕成社

発行日:2007年10月

 

表紙左のゴーグル付けたのがタトゥ。

右がパトゥ。

天才こども発明家」兄弟の二人が作った日常に役立つ(?)14のおもしろ発明品を詳細な図解で公開・解説します。

 

絵柄は可愛くて発明品は奇想天外、でも細部の細部まで描きこまれた絵と仕掛けは何回見ても新しい発見があって本当に楽しい。

ハイテクだけど子どもらしい手作り感とぬくもりが感じられる絶妙なデザインの数々。

↑「全自動おめざめ機」。

左のはしごを昇って入り口から入ると、ベルトコンベアで流されて行って目覚まし、洗顔、朝食、歯磨き、メイク、着替えまでオートでやってもらえます。

細かいメニュー設定もできますが、途中の扱いは結構雑。

↑「水たまりマシン」。

手軽に水たまりを作って遊べるように開発された機械。

穴の大きさに合わせてドリルを付け替えられるようになっているのがポイント。

↑「ミクロの世界おまかせ機」。

どんな細かい作業も可能な超高性能作業用マシン。

これは普通に凄い。

 

蟻のセーター編み、蚤の爪切り、何でもござれ。

しかし操作するにはなかなか骨が折れる様子。

 

この他にも「たべられないもの探知機」「ぼうしカギ」「風景ドーム」など、ユーモアたっぷりな発明品がたくさん。

そして絵の中には見逃しがちな隠し要素もあり、毎回新しい発見ができるところも良書。

 

★      ★      ★

 

作者の二人はご夫婦。

「タトゥとパトゥ」はシリーズものでして、日本ではこのほかにも「タトゥとパトゥのへんてこアルバイト」「タトゥとパトゥのへんてこドリーム」が翻訳されています。

それぞれに違った味があり、発明ものという枠では収まらない作品になっています。

 

とにかく可愛くて細微なイラストをじっくり見るのが楽しい絵本なので、子どもに読み聞かせるというより、一緒にじっくりと絵を見ながら新しい発見をしてほしいです。

 

例えばこの「へんてこマシン」では、隠し要素として扉ページに描かれたロボットのパーツ探しがあります。

パーツに使われているのは自転車のペダルや飴玉などで、それらは14の発明品のどこかに使われています。

奥付のページでそのロボットの完成形が確認できます。

 

私は最初うかつにもこの仕掛けを見逃していたのですが、気づいて息子に話したところ、息子はとっくに気づいてほとんどのパーツを見つけておりました。

1人でもたびたび引っ張り出して読んでいたので、その時にそういう細部も見ていたのでしょう。

 

タトゥとパトゥは天才ではありますが無邪気な子どもで、それゆえにその着眼点のユニークさ、発想のとらわれなさは痛快です。

大人にとっては「無駄」としか思えないような研究や発明の数々ですが、本来画期的な発明や科学的進歩は、数多の一見無駄に思える研究によって支えられているものです。

 

「費用対効果」や「銭勘定」でしか科学研究を語れず、「無駄な研究には金を払うな」と声高に言う人たちは、「無駄」に金をかけなくなった国は衰退していくのだということをわかっていないのです。

そしてまた一個の人間も、「無駄」とも見える精神生活がなければ生物として干からびていくものなのです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

実用性度:☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「タトゥとパトゥのへんてこマシン

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「チーロの歌」【390冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「チーロの歌」です。

作:アリ・バーク

絵:ローレン・ロング

訳:管啓次郎

出版社:クレヨンハウス

発行日:2013年12月5日

 

原題は「NIGHT SONG

発表は2012年。

 

私はローレン・ロングさんの作品はこれで初めて知りましたが、動物の毛並み感・立体感が強調されたぬいぐるみ的イラストがとっても可愛い。

なおかつ、作品テーマに従って全体を黒く塗りつぶした画面が多いのですが、その夜の闇の中に様々な実験的表現が試みられています。

 

主人公のチーロはこうもりの子ども。

太陽が沈み、洞窟の壁に張り付いていた母親とともに活動を開始します。

 

母さんはチーロに、今日からは一人で外の世界を飛ぶことを伝えます。

何も見えない真っ暗闇を怖がるチーロに、母親は「目をつかわないで見る」能力について教えます。

それは「」をうたうこと。

こうもりが歌えば、世界は歌を返してくれ、それによって暗闇を見ることができるようになるのだと母親は言います。

そしてチーロは一人で飛び立ちます。

初めは何も見えない暗闇が広がるばかり。

チーロは怖くなりますが、母さんの言った通り歌を歌ってみると、確かに世界が歌を返してくれ、視界が照らされるのを感じます。

 

だんだん見えるようになってきたチーロは森を抜け、渡り鳥の群れに歌いかけ、そしてついに食べ物がたくさんある湖までたどり着きます。

お腹がいっぱいになった後、チーロは湖のさらに先にある世界を見てみたいと思い、母さんの言いつけに背いて湖の向こうへと翼を広げて飛びます。

夜明けの美しい海の上を飛びながら、チーロはさらに大きな声で世界に歌いかけます。

やがて母親の温かい翼を思い出し、チーロは洞窟に引き返します。

 

初めての一人での飛行も、世界が返してくれる歌のおかげで迷うこともなく、チーロは無事に洞窟に帰り着き、母親に抱かれるのでした。

 

★      ★      ★

 

物語の前半はほぼ黒く塗りつぶされた画面が続くのですが、完全な闇というわけではなく、よくよく見ると黒い画面の中にうごめくものを確認できます。

それらはチーロの歌によって照らし出されます。

 

こうもりは実際に口から超音波を出し、それが周囲にあたって反射する音を聞いて獲物や障害物の位置を把握する能力を持っています。

哺乳類の中では唯一翼で空を飛ぶことができる、考えてみれば不思議な生き物です。

 

子どもたちにそうした生物の不思議さ・面白さ・神秘を伝えるとき、「厳密な科学的事実」に従うことを重視するあまり、無機質な言葉ばかり選んで説明しようとする大人がいます。

その一方で、詩的表現を選んだ結果、科学的矛盾のある説明の仕方をしてしまう大人もいるでしょう。

 

けれどもそのどちらにも偏るべきではないと思います。

科学的であるということは詩的であることと共存できます。

 

この絵本に描かれたこうもりの生態にはなにも論理的破綻はありません。

こうもりは確かに歌を歌うし、それによって見えないものを見ます。

 

自然の音を「音楽」と表現することは何も間違ってはいません。

頭の固い大人たちはそうした説明を受け付けませんが、子どもにとって大事なのは論理的矛盾がないことです。

想像力の翼はしっかりとした現実的土台があって初めて自由にはばたかせることができるのです。

 

「チーロの歌」は物語の形式としては王道の「行きて帰りし物語」です。

幼い主人公が母親の庇護下を離れ、一人で冒険し、世界を見聞し、また帰ってくる。

よく似た作品では「こすずめのぼうけん」や「ちいさなねこ」が挙げられます。

 

≫絵本の紹介「こすずめのぼうけん」

≫絵本の紹介「ちいさなねこ」

 

2012年になっても、技術が進み、世界が変わってもなお、こうした古典的物語の形は変化せずに通用するのです。

が、上記2作品がいずれも最後は絶対的存在である母親に助けられるハッピーエンドなのに対し、チーロは(母親の忠告を無視したのにもかかわらず)自力で帰還します。

そこが現代的と言えば現代的かもしれませんね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

こうもりに興味が湧く度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「チーロの歌

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【絵本の紹介】「ごんぎつね」【389冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は夭逝の天才童話作家・新美南吉さんの傑作短編に黒井健さんが挿絵を描いて絵本化された作品「ごんぎつね」を紹介します。

作:新美南吉

絵:黒井健

出版社:偕成社

発行日:1986年9月

 

以前に同じ新美作品に黒井さんが絵をつけた「手ぶくろを買いに」を紹介しましたので、よろしければそちらも併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「手ぶくろを買いに」

 

そこでも触れていますが、新美さんがこの作品を執筆したのは若干18歳。

震えるほど美しい日本語に、黒井さんの淡い光を放つ挿絵がマッチした良コラボです。

 

教科書作品としては定番中の定番ですから、あまり本を読まない子どもでもこの作品は知っていると思われます。

この美しい日本語と情緒ある物語に触れる機会を作るのは良いことだと思いますが、一方で(教科書作品すべてに言えることですが)理想を言えば自発的に手に取るべき古典名作を、半ば強制的な形で読ませることになるのは微妙な気持ちです。

 

これをみんなの前で立たせて朗読させ、テストに出して「登場人物の気持ちを考えましょう」という定型的な問題に落とし込み、正解不正解を付ける。

それが子どもたちの「国語力」「読解力」「共感力」にどれほどの良き影響を与えることになるのか、甚だ疑問に思うのです。

 

強制的に読書感想文を書かされるのが苦痛で、かえって本嫌いになってしまった人もいるでしょう。

だいたい、本来読書感想文というのは書かずにはいられないくらいの情熱がなければ書く必要すらないものです。

 

私などは年中読書感想文を書き続けているようなものですが、それは好きな作品を推さずにはいられないからです。

これまで書いた記事を自分で読み返してみても、本当に好きな作品の記事は我ながら面白いと思いますし、逆につまらない記事というのは、やっぱり入れ込みが弱い作品のものです。

どれとは言いませんけど。

 

話が逸れましたけど、ざっと内容に入りましょう。

ごんは一人ぽっちで暮らしている小狐です。

村へ下りてはいたずらばかりしています。

 

ある時、兵十という村人が川でうなぎを取っているのを見て、ごんは隙を狙ってうなぎを盗んで逃げます。

その後、兵十の母親の葬式が出たのを見たごんは、自分がいたずらしたうなぎは病気の母親が食べたがっていたものだろうと思い、自責の念にかられます。

その贖罪の気持ちから、ごんはいわし屋の売り物を盗んで兵十の家へこっそり放り込みますが、おかげで兵十は盗人と間違われてひどい目に遭います。

 

失敗を悟ったごんは、今度は山の栗やまつたけを拾っては兵十の家に届けるようになります。

兵十は不思議に思いますが、友人はそれを神様の仕業だろうと言います。

 

そんなことが続いたある日、また栗やまつたけを届けに来たごんを目撃した兵十は、うなぎ泥棒のごんがまたいたずらをしに来たのだと思って、火縄銃に火薬をつめ、出てきたごんを撃ち倒してしまいます。

しかし土間に置いてある栗を見た兵十は、真相を悟ります。

ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは

兵十は、火縄銃をばたりと、とり落としました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました

 

★      ★      ★

 

読書感想文の話を続けますが、感想文を書くことそのものは様々な方面の資質の開花に寄与すると思っています。

そのためには、やはり指導者側の力量が重要になります。

 

感想文に正解不正解はありませんから、「ごんがかわいそう」とか「つまらない」とか一行だけ書いたって別にそれは不正解ではありません。

でも、それならそもそも感想文を書く必要がない。

 

「書くのは苦手だけど、心の中では様々な言葉にならない感情が渦巻いている」というようなことを言えばそれでいいように聞こえますけど、「言葉にならない複雑な感情」を「言葉にならない」ままにしておいては、それ以上の情緒の深みには到達できません。

多くの人が勘違いしていることですけど、「言葉」以前に「感情」があるとは限りません。

懸命に言葉を探し、紡いでいるうちに「自分でも気づいていなかった感情」に自分自身が気づくことがあるのです。

 

けれどもそれは最初に自分が言おうとしていたこととは違うし、どこかずれがある。

そのずれを埋めようとまた言葉を探す。

それを何回繰り返しても、「原初の気持ちそのもの」には到達できない。

しかしその無限の繰り返しの中で感情は複雑化し、深みを増していくのです。

 

「ごんぎつね」はごんと兵十の奇妙な交流と破局を描きつつ、決定的な登場人物の心情については触れられません。

だからこそ、そこに想像力が介入する余地があります。

 

ごんは一方的に兵十に対して連帯感のようなものを抱きます。

それは自分も兵十も「一人ぽっち」である点に対する連帯感です。

 

若くして亡くなった作者が自身の儚い天命を悟っていたのではないかと考えると、この孤独感に対する憐憫の情は理解できます。

作者がこの悲劇から描こうとしたのはそうした孤独に対する可憐の情ではないかと想像できます。

 

しかし結局のところ、それを言語化してしまえば、たちまち空虚な感想に成り果てます。

作品は作品の形でしか表現できない核を内包してます。

 

読者はそれでもその核に手を伸ばし、何度も言葉を構築し、また破壊します。

文学の文学たるゆえんは、読者にその永劫の繰り返しを要請するところにあるのです。

 

推奨年齢:10歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

やっぱり日本語が美しい度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ごんぎつね

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