夏休みと絵本展のこと

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ショップHP上でもすでにお知らせしていますが、8月の11日(土)〜16日(木)まで、お店はお盆休みをいただきます。

ご注文は常に受け付けていますが、出荷作業は17日(金)以降になりますので、ご了承ください。

メールは可能な範囲で対応させていただきます。

 

この夏は久しぶりに関西圏で大きな絵本展が色々と開催されます。

まずは、伊丹市立美術館にて、待ちに待ったレオ・レオニさんの原画展。

 

≫「みんなのレオ・レオーニ展」

 

日程:2018年8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)

10時〜18時(入館は17時30分まで)

※月曜休館(祝日にあたるときとその翌日)

入館料:一般800(700)円、高大生450(350)円、小中生150(100)円

 

このブログでも「スイミー」「フレデリック」「シオドアとものいうきのこ」などを紹介しました。

≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

 

第二次世界大戦の時代を生き、ファシズムやマッカーシズムから攻撃されながらも己の思想と芸術を作品に込め続けたレオニさん。

その物語は哲学的で、色鮮やかなコラージュは目に楽しく、なんとも言えない可愛らしさも備えています。

 

次に、毎年イタリアの古都ボローニャで行われる絵本のコンクールでの受賞作品を集めた「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が、今年も西宮市の大谷記念美術館で開催。

 

≫「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

 

日程:2018年8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)

10時〜17時(入館は16時30分まで)

毎週金曜日は19時まで(入館は18時30分まで)

※水曜休館

入館料:一般800(600)円、高大生600(400)円、小中生400(200)円

 

去年も足を運び、簡単ですが記事を書いています。

≫2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展に行ってきました。

 

そして、芦屋市立美術博物館では、チェコの作家チャペック兄弟の特別展がすでに7月から開催中です。

 

≫「チャペック兄弟と子どもの世界」

 

日程:2018年7月1日(日)〜9月9日(日)

10時〜17時(入館は16時30分まで)

※月曜休館(祝日は開館・翌日休館)

入館料:一般800(640)円、高大生600(480)円

 

で、この三つの展示会がコラボレーションして、相互割引を行っています。

三つのいずれかの展示会のチケット半券を持って行くと、他の二つの展示会が団体割引料金(上記の入館料のカッコ内)で入館できます。

 

私も息子を連れて見に行く予定です。

3つ全て回れるかどうかは息子次第ですが……。

 

帰ってきたらまた例によってあまり実用的でない感想記事を載せますね。

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「おとなになれなかった弟たちに……」【263冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

お盆が近づくと、戦争や原爆について考えることが増えます。

そしてあれほどの悲惨と慟哭が、月日を追うごとに記号化され、その深刻さを忘れ去られていくことに、大人として、親として、責任を感じずにはいられません。

 

私たちには、次の世代にも平和への祈りや想いを正しくバトンタッチする義務があります。

その手段として、戦争を直接には知らない私たちの言葉よりも、遥かに重さと深みのある芸術作品によるほうが、よりまっすぐに子どもたちの胸に突き刺さると思います。

 

今回は「おとなになれなかった弟たちに……」を紹介します。

作・絵:米倉斉加年

出版社:偕成社

発行日:1983年11月

 

2014年に亡くなった俳優の米倉斉加年さんが、自身の悲しい戦争体験を綴った絵本です。

絵も、米倉さんが描かれています。

 

教科書でこの作品に出会った人も多いでしょう。

かくいう私もその一人です。

このお話は強烈に心に残っており、大人になっても細部まで覚えていました。

 

印象的なのは、その語り口です。

作者は小学生の頃の経験を、小学生だった当時のままの目線で、余計な感情表現を一切用いずに、淡々と独白します。

 

それがかえって、少年の哀しみの深さを際立たせています。

「一生わすれません」という最後の一文。

戦争を、弟の死を、本当に一生忘れないで心に留め続けた米倉さんだからこそ、子どもの頃に感じたことをそのまま作品に成し得たのだと思います。

ひもじいひもじい少年時代。

食べるものがない辛さを体験した者は、そのことを生涯忘れないと言います。

 

産まれたばかりの作者の弟のヒロユキにとっては、母親のお乳が出ないので、ときどき配給される一缶のミルクだけが、大切な食べ物でした。

けれども、作者は弟の大切なミルクを盗み飲みしてしまいます。

ぼくにはそれがどんなに悪いことか、よくわかっていたのです

でもぼくは飲んでしまったのです

ぼくは弟がかわいくてかわいくてしかたがなかったのですが……それなのに飲んでしまいました

 

やがて空襲が激しくなってくると、母は疎開しようと考え、親戚に相談に行きます。

しかしそこで何も言わないうちから、うちには食べ物はない、と言われます。

母はすぐさま帰ろう、と言って、後ろを向きます。

そのときの顔を、ぼくはいまでもわすれません

強い顔でした。でも悲しい悲しい顔でした。ぼくはあんなに美しい顔を見たことはありません

 

疎開先で、作者はヒロユキをおんぶして、川へ遊びに行きますが、栄養失調のためヒロユキは死んでしまいます。

息子が死んでもずっと泣かなかった母は、ヒロユキをお棺に入れるとき、少し大きくなっていることに気づいて、初めて涙を流すのでした。

 

★      ★      ★

 

俳優としての米倉さんは、それこそ何百もの映画やドラマに出演していますが、無教養な私はそちらの方面には疎く、全然知りません。

ただ、夢野久作の小説などで見る米倉さんの挿絵には、強い印象を持っていました(それが教科書で見たこのお話の作者であるとは全然気が付きませんでした)。

 

本当に多才な人物だったと思います。

 

米倉さんは、弟が死んだのは自分のせいではないかと悩み続けたのでしょう。

あの時、ミルクを盗み飲みしなければ、あるいはヒロユキは死ななかったのではないか。

 

弟の死は、幼い少年の心に、一生消えることのない罪悪感を刻み付ける出来事だったのでしょう。

 

しかし、それでは少年の作者は本当に罪を犯したと言えるのか。

彼にひもじい思いをさせ、本来背負わなくてよかったはずの罪の意識を背負わせたものはなんだったのか。

 

米倉さんは「あとがき」にこう書きます。

私の弟が死んだ太平洋戦争は、日本がはじめた戦争なのです。そして朝鮮、韓国、中国、東南アジアの国々、南方諸島の人たちをどんなに苦しめたことでしょう。そのことを私たちは忘れてはならないと思います

 

昨今では、こうした言葉は軽んじられ、侮蔑の対象にすらなるかもしれません。

様々なところで「日本は悪くなかった」と主張する人たちが増えたからです。

 

しかしそれでは、ミルクを盗み飲みした少年は悪かったと言えるのでしょうか。

けれども、米倉さんはその「罪」を引き受け、一生罪とともに生きることを自らに課します。

その上で、戦争そのものの責任をも引き受けているのです。

 

平和へ至るための道は、「被害者」の立場を超えて、背負わなくていいかもしれない「責任」を、自ら引き受ける者によってしか拓かれない。

米倉さんが残したメッセージを、私たちは次の世代に伝えることができるでしょうか。

 

次第に、それは困難な作業になっていきつつあるような予感がするのです。

 

推奨年齢:小学校中級〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

作者の知性と優しさとマルチな才能度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「おとなになれなかった弟たちに……

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【絵本の紹介】「ダットさん うみをはしる」【262冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はあの日本車ファンタジー大作の続編を紹介しましょう。

ダットさん うみをはしる」。

作・絵:こもりまこと

出版社:教育画劇

発行日:2009年6月20日

 

個人的にも息子的にも大ヒットだった「ダットさん」が、待望のシリーズ化。

 

精緻でありながらどこか懐かしさの漂う絵、そして実在の日本車が続々と登場し、横須賀をモデルにした街を舞台に、スリリングな冒険を繰り広げるという異色の自動車ファンタジーです。

 

≫絵本の紹介「ダットさん」

 

色々と語られない裏設定を想像させる前作だけに、続編でどこまでこの世界の謎が明かされるのかも注目です。

 

冒頭、なんともノスタルジックな「日本の夏」風景が描かれます。

そして新キャラクターの「シマネコはかせ」が登場します。

むかし おじいさんと いっしょに つきのトンネルを つくった」という、やっぱり謎めいた紹介。

エヌコロちゃんはスイカ屋さんになってるし。

 

さらには「ボウイ」という、奇妙なキャラクターも登場。

何者かと思っていると、ダットさんによると、前作で「つきぼしだん」のアジトにいたそうな。

 

え? そんなのいたか?」と思い、「ダットさん」を引っ張り出して確認すると、確かにページの片隅に描かれていました。

でも、この時点ではどう見ても物言わぬ人形が転がっているようにしか見えませんが……。

 

さて、今回の事件もやっぱり(目的がさっぱり謎の)「つきぼしだん」が絡んでいます。

エヌコロちゃんのスイカを盗み、「スイカばくだん」を製造しているというのです。

ダットさんたちはシマネコはかせとボウイの協力でボンベを取り付け、なんと海の底までつきぼしだんを追跡、新たな基地を突き止めます。

ベレジー」「サニトラ」といった日本車キャラクターも登場、名前を語られぬ仲間も含め、大勢で出動し、危機一髪でスイカばくだんを取り戻します。

 

★      ★      ★

 

前作の独特のテイストが失われていなかったのが嬉しい。

やっぱり謎は残りますが、かえってあれこれ想像が膨らみます。

 

シマネコはかせとダットさんのおじいさんの過去の物語を描いたエピソード0なんかも読みたいですねえ。

なかなか続編が出ないですが、今後も大いに期待しています。

 

画面に登場する自動車たち、全部わかったら相当なクルマ好きですね。

夏にぴったりの一冊です。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ボウイが謎過ぎる度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ダットさん うみをはしる

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